2013年09月14日(土)

『小鳥遊六花・改~劇場版 中二病でも恋がしたい!~』
石原立也監督インタビュー「中二病を通して、新しい青春恋愛ものが描けると思った」(後編)

取材・構成:高瀬司

【前編はこちら】
 

エクスプローシヴ・スリーピング!

—— コミカルという点では、劇場版の冒頭でいきなり『中二病でも恋がしたい! Lite』が開始された点にも驚かされました。
石原 海外のアニメーション映画で、冒頭に短編がついてることがあるじゃないですか。そういうイメージで、本編の前座として『Lite』がついてたら面白いよね、ぐらいの発想でやってみました。今回の『Lite』の中では個人的に、新規に作ったエンディングのサンバが気に入っています(笑)。
—— これまでの『Lite』同様、デフォルメされた六花が踊るサンバですね。対して、本編のオープニングを六花が歌うというのは、TV版にはなかった、六花視点を打ち出した劇場版ならではの試みだったと思います。六花を中心に据えた映像も印象的でしたが、こちらの絵コンテ・演出は監督が?
02_01石原 僕が担当しています。今回のオープニングでは背中に翼の生えた六花を描きましたけど、そこでは片方の羽を小さくしてるんですよ。「片翼の天使」という、六花のような闇属性の中二病の子が好きそうなモチーフですが(笑)、個人的にあのイメージが六花の雰囲気を象徴しているような気がしています。というのも、六花のように勉強ができなかったり上手く周りに溶け込めなかったりする子どもは少なからず、「自分は社会にとって役に立つ人間なんだろうか」とか「自分は人として出来損ないなのではないだろうか」という不安を抱いているものだと思うんですね。そういう大人になり切れない中二病的な時期というのは、出来損ないの翼のイメージと重なるところがあるなあと。
—— 本編の冒頭では、これぞファンムービーとでもいうべき六花のウエディングドレス姿が披露されますが、オープニングの片翼のイメージはそことの対比としても面白かったです。ちなみに、まだ物語の詳細は明かせないとは思うのですが、本編をああいったインパクトのあるシーンからはじめられた狙いというのは?
石原 やはり劇場版ということで、出だしでは一瞬びっくりして欲しいじゃないですか(笑)。花田さんとの話し合いでも「やっぱり冒頭には派手なアクションシーンを入れたいよね」と意見が一致して。ただ、例えば六花と勇太がファンタジー世界でバトルを繰り広げるみたいな展開にしてしまっては、これ嘘だろってわかっちゃいますよね。どうせ夢オチだろと。でも勇太のナレーションなんかも重ねながら、もう少しリアルな設定から開始すれば、もっと驚いてもらえるんじゃないかなと思ったんですよ。それにあのシーンは、暗に六花の願望が入ってるというようにも読めるじゃないですか。しかもそのうえで、そのことを自嘲してしまっている態度も中二病っぽくていいなと。
—— 新規のバトルシーンではCGを大胆に用いたドラゴン同士の戦い等も迫力をもって描かれていましたが、今回の新作映像の中で監督がお気に入りのシーンというとどちらのシーンになるでしょうか。
石原 ひとつはくみんのバトル・アクション02_02ですね。くみんはもともと中二病ではないので、第1期では六花や丹生谷、凸守のように空想世界……僕は拡張世界と呼んでいますけど、そこでの中二病バトル的なシーンに参加してなかったんです。それがこの劇場版でようやく描けたのはうれしかったですね。漢字で「爆睡」と書いて「エクスプロ―シヴ・スリーピング」と読むあの必殺技を出す一連のシーンは、個人的にもすごく気に入っています(笑)。他にも、丹生谷の変身シーンも入れられましたし、凸守の登場シーンもかっこよく描けたかなと思っています。

謎の新キャラ、新章の幕開け!

—— 劇場版のラストでは、第2期へとブリッジする新設定や新キャラクターが登場します。総集編の冒頭では、六花が電車の外からドアの開くタイミングで手をかざす他方で、劇場版ラストでは、新キャラが電車の中からドアの開くタイミングで手をかざす。綺麗な対応関係が印象づけられていたと思います。
石原 そこでは六花と対になる、いかにもライバルキャラっぽい感じを出したかったんです。
—— エンドロールにも記載されていましたが、担当声優さんも京都アニメーションの系譜として納得のいくキャスティングのようですね。
02_03石原 キャスティングに関しては、第2期のキーとなるキャラクターということで色々と悩みました。ただ、新キャラをやっていただくのは、やっぱり現場の空気をわかってらっしゃる方、そこへ馴染んでいただける方にお願いしたいと思ったんですね。なので今回の依頼では、第1期でも生徒役として参加していただいていたことも決め手となりました。
—— 第2期の構想について、現時点で明かせることというと他にもありますでしょうか。劇場版ラストでは、六花と勇太をめぐる衝撃の展開も用意されていましたが。
石原 花田さんからの提案もあって、やはり設定にも新鮮味が欲しいということでああいう形にしました。衝撃的ではありますけど、これでまた少し違った雰囲気で話がはじめられるんじゃないかと思っています。02_04ただそのせいではじめは、樟葉や夢葉、十花たちの出番が減ってしまってショックを受けるファンの方がいるのではと心配したのですが、あらためて確認してみると第1期のときにそんなにたくさん出ていたわけではないので、登場頻度としてはそう大きく変わらないかなという気がしています。
 物語に関しては以前からお伝えしていたように、六花と勇太のラブストーリーがメインで、コメディ色の強いものになります。凸守や丹生谷、くみんといった、第1期からのキャラクターを掘り下げるエピソードも用意していますので、楽しみにしていてください。
—— 劇場版を経ることで、演出や作画の面で変化されることなどはあるのでしょうか? 第1期をはじめて観た際は、髪の毛のグラデーションの処理もひとつの達成を見た気がしましたし、主線に色が入ることで画面の印象も極めて独特で。
石原 そこに気づいていただけたならありがたいですね。色つきのアウトラインは、女の子のアップのときに柔らかい印象を与えられるかなと思ってやってみました。ただ、単純に変えるだけではダメで、例えば黒い制服の中ではアウトラインが浮いてしまったりするので、細かく色調の調整をやる必要があったりと、やはり独特な難しさはありましたね。とはいえ、第2期から大きくテイストを変えるということはないと思います。
—— 最後にこれから劇場版を観る方へ向けて一言お願いします。
石原 僕はこれまで原作のあるアニメを多くやらせていただいてきましたけど、この『中恋』は虎虎さんによる原作ライトノベルがあるとはいえ、オリジナルキャラクターを出したり結末への辿り着き方を変えたりと、僕にとってはほぼはじめてのオリジナルに近い感覚で作った作品になります。もちろんこれまで手がけてきた作品も全て愛していますが、できることなら第3期、劇場版2作目と続編を作っていけたらいいなと思うくらいに、また違った愛着のあるアニメなんですね。
 なので今回の『小鳥遊六花・改 ~劇場版 中二病でも恋がしたい!~』も、バトルシーンをはじめ作画も頑張りましたし、音響も5.1chのサウンドシステムを活かせるよう新たに調整し直したりと、思い入れたっぷりに作っています。劇場に足を運んでいただく価値や観ごたえはあるんじゃないかなと思いますので、是非とも劇場でご覧いただけるとありがたいです。

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『小鳥遊六花・改 ~劇場版 中二病でも恋がしたい!~』

作品概要

スタッフ

原作:虎虎(KAエスマ文庫/京都アニメーション)

キャラクター原案:逢坂望美

監督:石原立也

脚本:花田十輝

キャラクターデザイン・総作画監督:池田和美

美術監督:篠原睦雄

色彩設計:竹田明代

設定:髙橋博行

撮影監督:山本 倫

音響監督:鶴岡陽太

音楽:虹音

OPテーマ:小鳥遊六花(CV:内田真礼)

EDテーマ:Black Raison d’être(小鳥遊六花・丹生谷森夏・五月七日くみん・ 凸守早苗)

アニメーション制作:京都アニメーション

製作:中二病でも製作委員会

配給:松竹

キャスト

小鳥遊六花:内田真礼

富樫勇太:福山潤

丹生谷森夏:赤﨑千夏

五月七日くみん:浅倉杏美

凸守早苗:上坂すみれ

一色 誠:保志総一朗

小鳥遊十花:仙台エリ

九十九七瀬:井上喜久子

勇太の母:天野由梨

富樫樟葉:福原香織

富樫夢葉:設楽麻美

作品紹介

2012年10月~12月に放送されたTVアニメ『中二病でも恋がしたい!』
第2期制作発表もされ、今回2013年9月14日より全国27館で劇場版公開が決定!!
六花目線での、第1期の総集編に加え新作映像も収録予定!

あらすじ

結社でしばしの休息を取っていた私は凸守とくみんに促され、邪王真眼とダークフレイムマスターの邂逅の歴史を語る事になった。
いいだろう。私の代わりに最終決戦の地へと赴いているダークフレイムマスターが帰ってくるまでの間、絆の物語を語るのも悪くない…。
だが、これは新たなる戦いのプロローグでもあった…。

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