2013年09月13日(金)

『小鳥遊六花・改~劇場版 中二病でも恋がしたい!~』
石原立也監督インタビュー「中二病を通して、新しい青春恋愛ものが描けると思った」(前編)

取材・構成:高瀬司

春期特有の自意識の揺らぎを指す「中二病」というユニークなモチーフや、京都アニメーションならではのハイクオリティな映像と可愛らしいキャラクターたちが話題を呼んだTVアニメ『中二病でも恋がしたい!』。元中二病のダークフレイムマスターこと富樫勇太と、現役中二病の邪王真眼の使い手・小鳥遊六花を中心に、中二病を毛嫌いするモリサマーこと丹生谷森夏、ミョルニルハンマーの使い手・凸守早苗、昼寝大好き天然マイペースな先輩・五月七日くみんと個性豊かなキャラクターを交えて繰り広げられる、笑いあり涙あり異空間バトルありの学園ラブコメ作品だ。
 すでにTVシリーズ第2期の制作も決定している本作だが、それに先駆けてこの度、TVシリーズ第1期を六花視点で振り返る総集編『小鳥遊六花・改 ~劇場版 中二病でも恋がしたい!~』が、2013年9月14日よりいよいよ全国27館にて公開される。
 bonetでは劇場版の公開を記念して、『中二病でも恋がしたい!』シリーズの監督を務める石原立也氏にお話を伺った。第1期におけるコンセプトの振り返りから劇場版の気になる展開、そして待望の第2期へ向けたイントロダクションまで、シリーズ全体を読み解く秘密のコードがここに開闢する!

石原立也

Tatsuya Ishihara

アニメ監督・演出家。京都アニメーション所属。主な監督作に『涼宮ハルヒ』シリーズ、『CLANNAD』シリーズ等。『中二病でも恋がしたい!』シリーズでは、TV版に引き続き『小鳥遊六花・改~劇場版 中二病でも恋がしたい!~』でも監督を務める。

自分には超能力がある!

―― 劇場版のお話に先立ち、あらためて『中二病でも恋がしたい!』(以下『中恋』)のテーマについて伺わせてください。
石原 メインとなるモチーフはもちろん「中二病」です。ただ一口に中二病と言っても、人によって色々な捉え方がありますよね。作品の中では「形成されていく自意識と夢見がちな幼児性が混ざり合って、おかしな行動をとってしまうというアレ」という説明をしましたけど、例えば昔だったら、任侠映画に憧れた中学生が映画館から出てきたときに肩をいからせて歩くとか、01_01僕らよりも少し上の世代だと大人への反抗や反骨精神なんかも今なら中二病と呼べると思うんですね。
 ただ中二病には思春期の頃の悩みがともなうので、本気で描こうとするとどうしてもダークな部分が強く出てしまうんですよ。やろうと思えば『中恋』でもそういう方向性でやれたんですけど、そうではなく、中二病を扱いつつもコメディ重視で面白おかしくラブストーリーを描けるんじゃないか、というのが発想の原点にありました。なので『中恋』では、「自分には超能力があってそれがいつか世界を変えるんだ」といった妄想を抱いてしまうような、そういう意味での中二病を扱っています。それによって、マンガやアニメに影響された女の子と男の子による、今の時代の新しい青春恋愛ものを作れるなと思ったんです。
―― TVシリーズの前半では中二病を非常にユーモラスに描き出した他方で、後半では現実と妄想との折り合いをめぐるとても切ない物語も展開されていました。
01_02石原 『中恋』自体はギャグ作品なんですけど、子どもが大人になっていく過程で混乱し揺れ動く思春期の心の美しさも、ひっそりと描けるといいなと思ったんです。僕にも覚えがあるんですけど、中二病の時期でも超能力に対する自信には揺らぎがあると思うんですよ。「自分には超能力がある……いや、やっぱりないよな……でも本当はあるのでは!?」という感じで。六花の中二病はそういうものとして描いています。普段は超能力があるフリをしている一方で、第1話のラストシーン等では「力はある」と真剣な面持ちで言っていたりと、狭間で揺れ動いている。そこの匙加減はシリーズ構成の花田十輝さんとも何度も相談したのですが、とても悩みましたね。

羽ばたけ、片翼の天使!

―― 六花と勇太の物語は、TVシリーズの第1期でその揺らぎまで描き切り決着を見ましたが、そこから第2期、そして映画化が決定した経緯というのは。
石原 先にお話をいただいたのは第2期の方でした。劇場版に関してはその後に、うちの会社のプロデューサーから第1期と第2期の間に映画ができないかという話が出て、単なる総集編ではなく、第1期と第2期を繋ぐエピソードや劇場版ならではの新作映像も組み込んだ作品が良いのではないかと考え、決定に至りました。
―― 『小鳥遊六花・改』というタイトルもとてもユニークなものだと思いますが、こちらはどのような意味を込めてつけられたのでしょうか。
01_03石原 まず字面からして中二病を体現していますし、六花中心の話にするというのは当初から決まっていたので、その点でもぴったりだなと。ただ実はタイトル決定までには紆余曲折がありまして、小難しい外国語のタイトルから「六花ちゃん御機嫌斜め」「六花ちゃんはじめてのおつかい」といったパロディのような案まで色々出ていたんです(笑)。そういう迷走を経た末に、今のものへと落ち着いています。
―― 今回の劇場版での特徴のひとつに、TVシリーズで描かれた物語が六花の視点から再構成されている点が挙げられると思います。TV版で基調となっていた勇太視点は大きく省かれ、その結果、総集編パートでは六花の母親をめぐるエピソードがほぼ削られる形となっていました。
石原 今回の劇場版では、1クールの作品を1時間半という尺にまとめなければいけない関係上、ストーリーを網羅したうえで感動させられるような作りにするのは難しいだろうと思ったんですね。なのでTVシリーズの中でも印象的なシーンをピックアップする方向性で編集しています。特に今回は娯楽重視というか、ファンムービー的な作りに寄せているので、01_03キャラクターが可愛らしいシーンや、コミカルなパート、六花と勇太のラブストーリーといった側面を強調する形になりましたね。
 また六花視点ということで言えば、総集編パートでは映像を新たに描き下ろすことこそしていませんが、音楽は全て六花の気持ちに寄り添う形で新規に作り直しています。第1期では勇太の視点からギャグとして描いていたシーンでも、六花の視点から見ると切なかったり真剣なものだったりすることが少なくないわけですよ。もちろん全体としてはコミカルな作品にしていますが、BGMが変わることで同じシーンでも全く違って観えてくることがあると思います。
―― 劇伴による雰囲気の変化は顕著でしたね。ちなみにコミカルな側面を強調したのは、第2期のテイストに合わせてということでしょうか。
石原 そうですね。第2期はコメディ重視の作品になるので、橋渡し的な意味もあってそのようにしました。新作パートも、やや切ないシーンを入れたりもしていますが、メインはアクションやコミカルなシーンにしています。

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