2013年11月13日(水)

『陽なたのアオシグレ』 石田祐康監督インタビュー
「子供が楽しげで、爽やかな作品を」

取材日:2013年10月22日
取材場所:スタジオコロリド
取材・構成:藤津亮太

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outubeで260万回以上の再生をhinatano記録した自主制作短編アニメーション『フミコの告白』で一躍注目を集めたアニメーション作家、石田祐康。次作『rain town』も文化庁メディア芸術祭で2年連続の受賞を果たすなど注目の的であった石田が、プロデビューをする。しかもスタジオコロリドというできたばかりのスタジオで、まさかの短編での劇場デビューである。果たして石田はどのような意識で『陽なたのアオシグレ』を送り出したのか、話を聞いた。
 なお『陽なたのアオシグレ』以外の話も含めたロングバージョン「ひとつの可能性としてのアニメーション」(約10000字)は「アニメの門チャンネル」のメルマガ(11/22配布号)に掲載される。同メルマガは、http://ch.nicovideo.jp/animenomonにて会員登録(月210円:税込)すると読むことができる。

石田 祐康

Hiroyasu Ishida

『陽なたのアオシグレ』監督・脚本。2009年に発表した自主制作作品『フミコの告白』は、第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞など数々の賞を受賞。YouTube上でも公開されており現在までに260万回再生される話題作となる。2011年に卒業制作として発表した『rain town』も第15回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞を受賞し、2年連続で受賞の快挙となった。

―― どういう経緯で、プロ第一作をスタジオコロリドで制作することになったのでしょう。
石田 うちの大学(京都精華大学)の教師である杉井ギサブロー監督の『グスコーブドリの伝記』を手伝っていて、その佳境が過ぎた辺りで、スタジオコロリドさんから「うちで短編を作りませんか」とメールをいただいたのがきっかけでした。そこからいろいろと絵を描き始めたんです。その時点で既に、子供たちが楽しげにしてるような、爽やかなものをやりたいというテイスト的なものは決まっていましたね。
―― アクションでみせる『フミコの告白』(’09)に対して、次回作の『rain town』(’11)は静かな雰囲気の作品でとても対照的でした。『陽なたのアオシグレ』はまた疾走感ある内容です。
石田 飽きっぽいわけではないんですけれど、毎回同じことができる性格ではないんですよ(笑)。そもそも順番でいうと、先に『rain town』を卒業制作で作ることは決めていたんです。その前にやるんだったら、全然違うものをやろうということで『フミコの告白』を作ったんです。で、今度は静かなものをやった後だから、元気のいいものをやろうと。
―― 鳥が重要なモチーフになっていますね。
石田 鳥というモチーフの最初は、ICAF(インターカレッジ・アニメーション・フェスティバル)2011のポスターのためのイラストですね。依頼を受けまして、今回のヒロイン・時雨(シグレ)の原形になった女の子を中心とした子供たちと、大空をところ狭しと飛ぶ白鳥の群れを描いたんです。その時から、こういう楽しげなアニメーションを作れたらいいなと思っていたんですが、そこもこの作品のルーツのひとつですね。できあがったらかなりの鳥アニメになってしまいましたが(笑)。
―― アニメーションを作り始めたのはいつごろからだったんですか。
石田 高校の美術科に入って、課題で作ったのが最初でした。それまではずっと一枚絵で世界を考えたり、雰囲気を出すことが好きだったんです。それがアニメーションだと、もっと高度なことができるんですよね。手間こそかかれど、その分、コアなものになるというか。そういうところに惹かれたんでしょうね。苦労した分だけ応えてくれるなって。
―― そこにアニメーションの魅力があると。
石田 個人制作に限らず、それが映画などの商業アニメーションになれば、作画、美術とスタッフも増えて、さまざまなクリエイターがひとつの作品に無数の手数を加えていくわけで、その密度感、スケール感は、なんというか特別なものがありますね。……あとは音楽ですね、アニメーションの魅力の中で、やっぱり音楽の力っていうは無視できなくて。それもイラストやマンガにはできないところなので。僕自身は、自分で音楽を作ろうとまでは思いませんが、音楽は絵に匹敵するぐらい好きなものなんです。だから絵と音楽が統合されて出てくる感動というのは、やはり代えがたい魅力があるなと思いますね。
―― じゃあ、絵を思い付く時は、たいがい音楽が傍にある感じなんですか?
石田 ああ、そうですね。
―― 『陽なたのアオシグレ』だと、スピッツの『不思議』がクライマックスを盛り上げます。
石田 今となってはもう思い出せないのですが、曲からイメージを膨らませることが多いので、いろいろ聞いているうちに『不思議』に巡り会ったのだと思います。でも、歌詞の内容と想定していたシチュエーションがぴったりだし、もうこれしか考えられなくなって。最初はこの『不思議』の5分だけを作りたいって思っていたぐらいなんです。でも今回はそういうPV的なものではなく、15分程度の短編を作ってほしいという依頼だったので、その5分をより盛り上げるために、感情的な助走を自分なりに丁寧に描いてみようというふうに考えていきました。全体で18分の作品ですが、総カット数の半分は『不思議』の5分なんですよ(笑)。曲が使えるかどうかわからない状態だったのに、もうこれしか考えられない、ということでどんどん作業だけ進めていたんです。
―― 『陽なたのアオシグレ』でキャラクターデザイン・作画監督をした新井陽次郎さんとはpixivで知り合ったそうですね。
石田 そうなんです。もともとpixivでいい絵を描く人だなと思っていて、知り合ったんです。何度か会ったこともありました。これだけいい絵を描く人は他にいないと思って、「やりませんか」とこちらからお願いして、キャラクターや原案で協力してもらうことにしたんです。ただ当時、新井くんはスタジオジブリで仕事をしていたので、それ以上は無理かなという状況だったんですが、新井くん自身がこちらの仕事をちゃんとやりたいという意志があったので、ジブリを抜けて本格的にこちらに参加することになったんです。僕が描きたいなと思っている線を描いている人なんです、新井くんは。そういう意味で、お願いできてよかったと思っています。
―― 『陽なたのアオシグレ』で自分で描いて「うまくいったな」と感じたところはありますか?
石田 電車でシグレが去って行くのをヒナタが追いかけていって2人が並走してる時に、電車がガタンと加速していくところがありますよね。地味なところなんですけど、そのガタンって動き始めた時に、シグレがよろけて壁に当たって、キャーってなるところ。あそこのお芝居は、わりとうまく描けたんじゃないかって思ってます。
―― プロとして仕事をしていた新井さんと一緒に仕事をすることで、影響を受けたり、勉強になった部分もありましたか?
石田 やっぱり新井くんは、ジブリで仕事を丁寧にやっていたので、その丁寧さがすごく勉強になりました。自主制作ではそこまで気にしないことが多々あるので。
―― どこが違いました?
石田 きれいな線を引くという意識が違いますし、ラフを何度も描いてひとつの絵の精度をあげていくやりかたとか。動画でいうと、服のなびきとか、髪のなびきはどう描くと自然につながって見えるかとか。ただ動くだけじゃなくて、常にそのものの存在感を意識していて。一方で、僕のほうは、その分自由奔放に、気持ちのいい動きを優先して描いてきたので、時には「丁寧さもわかるけど、ここはこっちのほうが気持ちよくなるから」というのはありつつでしたが。
―― プロ第一作目を作り終えていかがでしたか。
石田 今回一番苦労したのは、内容以上に、制作的な部分でした。「この人がスタジオに入る○日には、これをアップして渡さなくては」とかそういうやりくりは大変でした。そこは反省含め、考えなくてはいけない余地はいろいろあるんですが。でも内容に関しては、本当にシンプルな内容のものを、シンプルにやりきれたなと思います。最初にやりたかったことはできたかな、と。もちろんそれは上映された作品を見たお客さんが判断することでもありますが……。ただ、あくまでそれは『陽なたのアオシグレ』という作品についてなので、これからももっと長尺だったり、複雑な作品を作るとなると、それ相応の考え方をしていなかくてはいけないなとは思います。ただしばらくは、短編を作れるのなら短編のほうがいいです。ハイリスクハイリターンな長編に比べ、短編は身軽で自由なので。
―― ありがとうございました。

『陽なたのアオシグレ』

あらすじ

内気な小学4年生、ヒナタは、クラスで人気者の女の子・シグレのことが大好きな男の子。でもシグレと話をすることも出来ないヒナタは、彼女のことを思い描きながら妄想する日々を送っていた。そんなある日、突然シグレが転校してしまうことに……。悲しみに暮れるヒナタ、クラスメイトに見送られ去っていくシグレ。「僕はシグレちゃんに想いを伝えるんだ!」決心したヒナタは走り出す。石田祐康が贈る渾身のアクションシーンが満載の、疾走感あふれる胸キュンストーリー。

http://www.shashinkan-aoshigure.com/aoshigure/

 
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