2013年12月28日(土)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 034
漫画家・イラストレーター:Tiv

取材日:2013年8月28日
取材場所:ワコム西新宿オフィス
取材・構成:高瀬司

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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イラストレーター、漫画家

Tiv

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韓国出身で2010年からは日本に在住。韓国の女子高生の日常を描いた『アンニョン!』(双葉社)で漫画家デビュー。以降もオリジナル長編漫画『ぼくラはミンナ生きテイル!』(一迅社)や竹岡葉月が原案を担当する『政宗くんのリベンジ』(一迅社)をはじめ、アニメ化もされたライトノベルのコミカライズ『神様のメモ帳』(杉井光・岸田メル/アスキー・メディアワークス)や再び杉井光と組んだ『こもりクインテット!』(杉井光/アスキー・メディアワークス)、日常四コマ漫画『すくーる!すくーぷ?』(集英社)等、精力的に活動を続ける。イラストレーターとしても、『昼も夜も、両手に悪女』(鳥村居子/小学館)『あおはるっ!』(内田俊/メディアファクトリー)等のイラストを担当する他、児童書である『予知夢がくる!』シリーズ(東多江子/講談社)のイラストも手がける等、幅広い活動を展開している。

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tiv01_bokuraha―― Tivさんのご出身は韓国ですが、そのイラストは日本のポップカルチャーの流れに乗ったものですよね。日本に来られる以前から現在のような作風で描かれていたのでしょうか。
そうですね。日本のイラストレーターの方々の作品にはよく触れていました。当時の韓国では、どちらかというと西洋風のキャラクターデザイン、リアリスティックな色彩やデッサンを重視したイラストの方がメジャーだったと思うんですけど、私は日本的なかわいらしいデフォルメの女の子や非現実的な色彩のイラストに惹かれることの方が多くて。中でもokama先生や黒星紅白先生、D.K先生からはすごく影響を受けました。

―― アニメや漫画はいかがですか。
アニメも漫画も大好きでした。その結果、大学でも日本語を専攻したくらいです(笑)。ただ当時の韓国では、あまりたくさんは日本の最新アニメを観ることができなくて、漫画も絵柄よりはストーリー重視で青年漫画系が好きになっていったので、絵に関する影響という点ではイラスト作品から直接受けたものの方が大きかったですね。ネットの普及もあって、イラストなら日本の作品でもたくさん見られるようになっていったので、好みの作家を見付けたり参考にしたりということもやりやすかったんです。あと、子どもの頃からよく真似をして描いていたのは絵本ですね。白泉社さんから出ている『月刊MOE』という絵本雑誌をよく読んでいて、中でも池田アキコさんの『ダヤン』シリーズの絵がすごく好きでした。

―― ということはTivさんにとってのイラストの原点は絵本?
そうなのかもしれません。絵本に出てくるような動物キャラが大好きで、日本のもの以外にも、ディズニーの絵本やグリム童話もたくさん読みました。でもその頃はただ何気なく描いていただけで、きちんと絵について考えはじめたのは、オンラインゲームの会社に入ってtiv02_hirumoイラストのお仕事をいただくようになってからのことですね。大学生のときにウェブデザイン関連のバイトをしていて、その中で簡単なイラストも描くようになった流れから、専門的な勉強をしたこともないままゲーム会社で原画の仕事をはじめまして。韓国でイラストレーターというと、ゲーム会社での仕事が一番多いんですね。なので交流していたイラストレーターも同じくゲーム業界の方が多くて、仕事をしていく中で色々なことを相談できたり教わることができたりしたんです。

―― そこから日本で漫画家として活動をはじめられた経緯というのは。
2000年くらいから韓国のオンラインゲームが日本に紹介されはじめて、その関係で日本からもイラストのお仕事をいただくようになったんですよ。そのときはじめて「日本で自分の作品を見てもらえる」ということを意識するようになって。その頃にはちょうどイラストだけでなく漫画も描きたいという想いが強くなっていて、それなら漫画もイラストと同じく一番影響を受けた日本で作品を発表してみたいなと、日本の出版社へ持ち込みをしました。

―― デビュー作の『アンニョン!』は、韓国の女子高を舞台にした日常ものという他に類を見ないコンセプトの作品でしたね。
その設定は『COMIC SEED!』の担当編集の方からご提案いただきました。学園ものを描くにしても、私は日本で学校に通った経験がないので「それならいっそ、自分がよく知ってる素材で描きましょう」とアドバイスをいただき、自分の体験等も活かしてあります。

tiv04_masamune―― Tivさんはその後も『ぼくラはミンナ生きテイル!』のようなオリジナルから『神様のメモ帳』のようなコミカライズ、さらに『政宗くんのリベンジ』や『こもりクインテット!』といった原作付きの共作と様々なスタイルの漫画作品を発表されています。同時並行で連載されるものも多い中、描き分けで気を付けられている点というのは。
コミカライズの際は元のキャラクターデザインがあるので、『神様のメモ帳』なら岸田メルさんの絵の特徴を活かしながら自分の作風を出すことに苦労しましたね。またもちろん物語内容によっても描き分けはしています。例えばオリジナル作品の『ぼくラはミンナ生きテイル!』はかわいらしいキャラクターがメインのお話なのでデフォルメを意識したり、ストーリーが重厚な『神様のメモ帳』ではベタを多めに使い頭身も自分の普段の絵柄よりも高くしました。

―― 漫画の他にイラストのお仕事も目立ちますが、同じ絵を描くお仕事とはいえ求められる能力や意識にも違いがあるのでは。
かなりありますね。同じ感覚で描くと、どうしてもどこかおかしくなってしまうんです。というのもイラストは基本的に一枚で完結するものですけど、漫画にはアニメの動画のような繋ぎのためのコマや絵がたくさん入るんですね。なのでイラストと同じ密度で漫画を描いてしまうと、演出的にもメリハリがなくなって平坦な感じになってしまうんですよ。

―― 漫画やライトノベルの表紙イラストに関しても、同様に純粋なイラストとの違いを感じられますか。
同じカラーイラストではありますけど、やはり描き方は変えていますね。本屋に並んだときに読者と出会う一番大事なきっかけというのが表紙じゃないですか。なので「これはこういうタイプの作品です」ということが絵から伝わらなければいけない。私自身もまだ模索段階ですし、もちろん一枚の絵として綺麗であることは共通しているんですけど、そこで活きる良さというのは、イラストとしての良さとはまた違うものなんだろうなと感じています。

tiv03_yochimu―― Tivさんのお仕事の中でも異色なものとして、児童書である「青い鳥文庫」での表紙・挿絵イラストがあります。こちらはまた特殊なアプローチが求められたのではないでしょうか。
「ご両親が自分の子どものために買いたくなるように」という点を意識して、漫画やライトノベルでは習慣的に出してしまう色気のようなものはだいぶ抑えましたね。その分、クリアで鮮やかな色彩を使っています。また編集の方にも言われたことなのですが、子どもは大人からするとバレバレな展開、例えばキャラの正体等も気付かないまま読み進めてしまうらしいんですよ。なので普段は挿絵でネタバレしないようぼかして描くところを、児童書では逆に、なるべくわかりやすく見せてしまうようにしています。なので表紙も作品に登場する要素をなるべく詰め込んであります。

―― Tivさんの作品を追っていくと、そのような作風の広がりや洗練に驚かされることが多いのですが、絵の勉強というと現在ではどのようなことをされているのでしょうか。
自分の絵にはいつも満足できないから色々と試行錯誤しているだけで、勉強というほどのことをしているつもりはなく……むしろ勉強という意識では描かないようにしていますね。tiv08_soredemoそのことでプレッシャーを感じてしまうと逆効果ですし、絵には気持ちが現れてしまうものなので、「遊び」だと思って楽しくやるようにしています。その中で最近よくやっていることというと、外に出かけて写真を撮ることでしょうか。カメラの設定を変えながら写真を撮ったり、さらにそれをPhotoshopでいじって光の使い方等を見たりするのが面白くて。そういうことが配色や表現の参考にもなるんですよ。やっぱり絵を描くにはよく観察することが大事なんです。なので仕組みの難しいもの、例えば身体の表現や服・小物のデザインなんかに関しては、ちょっと時間が余ったときに集めていた資料を眺めるようにしています。

―― また大きく研ぎ澄まされた点として、塗りの変化も挙げられるかと思います。こちらはデジタル環境による影響も大きかったのではないかと思いますが、デジタルで作画をはじめられたのはいつ頃からになるのでしょう。イラストレーターとしての出発点もオンラインゲームとのことでしたtiv07_hadsukiが。
実は仕事をはじめるずっと前、小学生の頃にはもう触れていました。当時はまだPhotoshop2.5が最新で……レイヤー機能もなかった頃です(笑)。ワコムのペンタブレットを使いはじめたのも2000年頃からで、FAVOにはじまり、Intuos、Intuos2、Intuos3といった板型のペンタブレットから液晶ペンタブレットまで、新しい機種が出るたびにほぼ毎回買い換えていきました。なので今使っているのもCintiq 24HD touchですし、(2013年)9月発売のCintiq Companionも、予約だけで売り切れ状態だったのでまだ買えていないのですが、販売の再開を待っています(笑)。

―― すごいヘビーユーザーぶりですね(笑)。では参考までに、機能やオプションに関するご要望等があれば伺いたいのですが。
そうですね……ショートカットにはキーボードを使っているんですけど、Cintiq 24HD touchのサイズではその置き場に悩むことがありますね。本体の下に入れようとするとどうしても全体の位置が高くなってしまいますし、液晶画面の左上辺りに置こうとすると間違ってタッチホイールに触れてしまうことがあるので。オプションでもいいのでキーボード置き場があるともっと便利かもしれません。

―― デジタル作画の際に使用されているソフトというのは。
イラストはPhotoshop、漫画はComicStudioがメインです。ただ気まぐれなので、時々思い立ったように、その日の気分でSAIやCLIP STUDIOを使うこともあります(笑)。それにどのソフトも一長一短があって、メインで使っているPhotoshopもドローイングに最適化されているわけではないので、機能的に物足りなさを感じる部分があるんです。例えばブラシカスタマイズ機能はCLIP STUDIOの方が充実していると思いますし、キャンバスの反転機能もないですからね。またComicStudioと比べても、Photoshopでは二値の線が不安定になってしまって。なので漫画を描くにはそこを柔らかく表現してくれるComicStudioの方が描きやすかったです。

―― お話を伺っていると、もはや創作活動とデジタル環境は切り離せないご様子ですね。
今ではもうデジタルでなければ漫画もイラストも絶対に無理ですね。『アンニョン!』の頃はまだ線画はアナログでやっていて、デジタルはトーンと仕上げだけでしたけど、tiv06_rainそれ以降は完全にフルデジタルです。やっぱり作業時間が全然違うんですよ。アナログでは線を描く度にペンにインクを付ける必要がありますし、インクがなくなったら瓶を洗って拭いて、ペン先が減ってきたら交換して、しかも使いはじめはペンを慣らさないと使えないじゃないですか。そういうところがすごく面倒臭くて(笑)。でもデジタルならそれらの工程を全部省略できてしまうんですよね。
もちろんアナログならではの線の質感というのはあるんですけど、今はデジタルでもペン先や設定をカスタマイズすることによってほとんど自分の思うがままにコントロールできるようになってますし。そのうえ湿度等によってコンディションが変わってしまうアナログと違って、いつも同じコンディションで描けるところが私にはすごく合っていました。

―― 操作性と安定性がデジタルの強みということですね。表現の面でもデジタル特有の効果はありますか。
tiv05_komori今回のイラストでも手動で簡易的にやりましたけど、輪郭線に幅を作って、そこに虹のように様々な色を入れるという表現はデジタルだからこそできたものですね。キラキラした感じを出したくて最近よく加えている効果で、普段はカスタマイズしたブラシを使ってもっと細かく色付けをしています。やはりデジタルは仕上げに強いです。漫画でも例えば、普通アナログでは既存のトーンを使うことになりますけど、デジタルならトーンや効果自体を自作したりフィルターで加工したりすることができて、やはり表現の幅が広がりますね。

―― 韓国から日本に来るところからはじまり、お話を伺った中だけでも様々なことにチャレンジされてきたことが伺えるTivさんですが、今後さらに新しくはじめてみたいことはありますか。
たくさんありますよ。すぐ思いつくだけでも、3Dや動画編集にはすごく興味があります。アニメも大好きなので、難しいとは思いますけど、最近のソフトや技術を勉強して自主制作でアニメを作ってみたいですね。

―― 最後に恒例の質問となりますが、Tivさんにとってペンタブレットとはどのような存在でしょうか。
手の延長です。私にとってのペンタブレットは、もうアナログ以上に身近な存在になっています。描こうと思ったときにすぐ描けることはすごく大事で、ペンタブレットなら画材等を準備しなくても、電源さえ入れればなんでも描けてしまう。その意味では、13.3インチのCintiq Companionなら今度は場所すら選ばずに描けるようになるので、手元に届く日が今からすごく楽しみですね。

 
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©Bonten/Wacom

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