2014年02月05日(水)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 031
イラストレーター:Ixy

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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イラストレーター

Ixy

ixy

アニメ調のポップなイラストで知られる。2008年、『やむなく覚醒!!邪神大沼』(著・川岸殴魚/小学館ガガガ文庫)でデビュー。『ぼくこい』(森橋ビンゴ/角川スニーカー文庫)、『天使ラノベエルは働いたら負けと思っている』(伊藤ジロー・土田太郎/学研メガミ文庫)などライトノベルのイラストのほか、ムックのイラストやマスコットキャラクターのデザインなど多数。著者、イラストレーターともに作品のテーマとなったコンピューターシステム業界出身ということで話題になった異色の人気ライトノベルシリーズ『なれる!SE』(夏海公司/電撃文庫)はコミカライズ、ボイスドラマ化もされ今後の展開が期待されている。

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―― 1Ixyさんがイラストを描き始めたのはいつ頃ですか?
描き始めたのは学生時代ですが、本格的にイラストをネットで見てもらうようになったのは社会人になってからで。もともとアニメなどもあまり観ないタイプだったんですけど、プログラム系の専門学校に行くとアニメ好きな人が多くて、その影響で観るようになって感想ブログなんかも始めたんですけど、それだけだとアクセスが伸びないのでどうしたものかと。絵も載せたら人が来るのかなと思ってやってみたのがきっかけです。
―― アニメ感想ブログのネタとして描き始めたんですね。
最初はマウスを使って、Macromedia Flash5のベクターツールで描いていて。線のブレを勝手に補正してくれるんですけれど、そもそも絵を描いたこともないので全然上手くいかないんですよ。1枚に20時間くらいかけて描いてました。
―― もともとはイラストレーターではなくプログラム関係のお仕事を目指していたんですか?
プログラマーを目指したのは、大学を辞める言い訳ですね(笑)。通学中に電車でコンピューター専門学校の広告を見たら、秋入学制度があったんですよ。これなら途中から始めても同じ歳の人達に追いつけると思って。早めに辞めれば、大学に納める学費も少なくてすむので、今しかないと。事務の人には「えっ、もう辞めるの?」みたいな顔をされました。そこからプログラム構築やシステム設計を学んで、コンピューターシステム会社に入社したので、ぜんぜん絵とは関係のない感じですね。
―― 2wikipediaには、「Ixyは日本のイラストレーター、プログラマー」と書かれています(笑)
いまはもうプログラマーはやっていませんから! wikipediaに日本のプログラマーとして書いてあると、なんだかすごい人みたいで、プログラマーとしてはそんな功績もないのにどうしようかと。だれか編集しておいてくれないですかね……。
―― 絵のお仕事をされるようになったきっかけは?
会社があまり忙しくなくて、絵を描く時間が増えてすごい勢いでサイトを更新していた時期があって。深夜アニメの『らき☆すた』が流行っていた頃に、自分もブログに絵を描きまくっていたら、アクセスが集中してレンタルしていたサーバーを追い出されるくらいになって。そこらへんの影響だと思うんですが、メールで「お仕事しませんか?」と連絡をいただけるようになりました。
―― アニメ『ツインエンジェル』のEDカードは、ネットで人気の描き手をセレクトしていた感じでしたね。
『ツインエンジェル』の時は、絵を描いてこんなにもらえるのかってびっくりしましたけど、仕事にする気はなかったので、小学館からのメールを見たときは驚きましたね。『やむなく覚醒!!邪神大沼』(川岸殴魚/小学館ガガガ文庫)から仕事が繋がって、今に至るのかなと。しばらくはシステム会社と兼業でやっていたんですけれど、リーマンショックの影響で仕事が減って。ボーナスもカットされて「辞める!」と啖呵を切ってしまったんですよ。現場からは慰留されたんですけれど、しばらく絵で食いつなぎながら他の会社でプログラマーの職を探そうと思って。会社優先で、絵の仕事依頼は半分以上は断っていましたが、全部受けるようになったら会社員の頃より儲かりだしたので、ああ、こっちでいいやとイラストレーター専業になった感じです(笑)。
―― 3デビュー作の『邪神大沼』は、全8巻と長いシリーズになりましたね。
初めから巻数が重なる作品に関われて、恵まれていると思っています。最初は、そこそこで終わるかもと言われていて。渡された原稿も、自分はすごく楽しく読ませていただいていましたが、『邪神大沼』は、ガガガ文庫でも飛び道具的な作品でしたので、思ったより続いてびっくりしました。絵の仕事を始めてから、これまで何をするにも上手く行き過ぎている感じもありますけれど……。
―― 会社を辞められたタイミングも、萌え系のブームでムックや単発イラスト需要が増えた時期に重なりますよね。
ガガガ文庫の編集には、あまりやり過ぎないほうがいいと言われていたので、割と仕事の数は絞るようにしていました。最初からいっきに放出すると、すぐ飽きられてしまうので、長く続けるにはやり過ぎないほうがいいというアドバイスだったのかなと受け取っているんですが、単に『邪神大沼』の仕事がおろそかになるのを心配されていただけかも(笑)。
―― 『なれる!SE』のイラストは、やはりプログラマ経験があったからこそのお仕事ですか?
最初のメールが「Ixyさんプログラマーだったんですよね?」という書き出しで、ぴったりの作品があるのでやりませんかと。読んでみたら面白くて、SE経験者や社会人が読むと「あるある!」って感じなんですけど、中高生が読んでどうなのかと。主人公からして20歳超えた新社会人ですからね。著者も元システム屋なので、コマンドプロンプトの説明で2ページ使ったりとか、ふつう読者は途中で投げ出しそうなんですけれど、思ったより人気が出てくれて。ラノベの中でも異色すぎるところが逆によかったんでしょうね。
―― 4お仕事は、基本はWebサイトを通じてメールで受けられているんですか?
そうですね。継続して仕事があるのは、社会人経験のおかげで、メールの返し方とか、仕事の呼吸みたいなものが身についていたからじゃないかと思っています。ただ、一人でやっていると抑えが効かないんですよね。誘惑も多くてだらけてしまいますし。
―― 東京から離れたところでお仕事をされていますが、問題はないですか。
いまはデータでやり取りできるので、困ることはありません。東京に住むよりお金もかからずに済みますし。一人暮らしも考えたんですが、どう考えても経費が大変なので。何かあったときのために貯金はしているんですけれど、フリーは保険が利かないのでヤバいですよね。体を壊したら終わりですから。
―― すごく堅実ですね。そもそもフリーではなくゲーム会社などに所属して絵を描くという選択肢はなかったんですか?
それだと、好きなように描かせてもらえないと思って。会社員の頃も、何かと文句は言うし、上司とも喧嘩してしまうタイプだったので、向いてないのかなって。絵の仕事は、受注から納品まで全部一人でもできるから楽ですね。僕は個人事業主というスタンスで考えていますが、ただ絵を描けば終わりと思っているとどこかで失敗しますね。だから、会社員を経験せずにいきなり絵から入っていたら、こんなに安定していなかったんじゃないかと。
―― 5ラノベのお仕事だと、どのような進め方になるんですか?
最初にメールをいただいて、受ける方向で返事をすると、いきなり原稿が来ます。それを読んで、キャラクターを作成して、電話で編集と相談をして。基本はデザインは自分で起こすので、最初は『なれる!SE』の表紙の女の子なんかも、ラノベなので魔法少女っぽい感じにしたら、これは現実っぽい設定で、ピンクの髪じゃないからと言われて。だから最初のデザインとは全然違いますね。リアリティを保ちつつ、リボンとかラノベとしてのキャラ的魅力を盛り込んだ感じで。
―― 『邪神大沼』のほうはデザイン的にも弾けた感じですよね。
編集さんの後押しのおかげです(笑)。有名なベストセラー書籍のパロディになっている表紙も、本当にいいんですか? って何度も確認していました。小説の中身と一切関係ないですからね。他のラノベではできないけれど、『邪神大沼』だからいいだろう、みたいな感じで。申し訳程度に斜めにしてありますけれど、並べたらアウトですよ。ぜんぜん大丈夫じゃない(笑)。
―― どれも面白い相手と組んでお仕事ができている感じですね。
そうですね、面白そうなお仕事を選んで受けているというのもありますけれど。
―― 絵を描き始めたころからデジタル環境だったということですが、ペンタブレットを導入したのは?
Flashとマウスで描き始めて半年くらいの頃、専門学校の友人がペンタブレットとPhotoshopの存在を教えてくれて。Bambooを購入して、当時はマウスモードで描いていたので、筆圧も効かなくて線の強弱を出すにも重ねて描いて消しゴムで削ったり。今思えばおかしな話なんですが、それで2年くらい描いていたんですよ。しばらくしてIntuosを薦められて購入してからペンモードの存在に気づいて(笑)。
―― 6マウスモードでお仕事されていたんですね……。Intuosのペンモードにされていかがでしたか。
ぜんぜん違いましたね。ペンの使いやすさや筆圧も。『邪神大沼』の絵はマウスモードで描いていたので、時間もかかっていたし、今の絵と比べるとだいぶ質感とかも変わってるんじゃないかと。あとはペンだこが治ったとか。力の抜き方を覚えたのもありますが、Intuosにする前は、マウスモードで線を直すための作画時間が長すぎて、ペンのグリップ部分もペンだこに合わせて形が変わってましたからね……。
―― 現在の作画環境はどのような感じですか。
PCは会社を辞めるときに買ったHPの結構高いやつで、OSはWindows7の64bitです。絵の仕事に専念するなら、これくらい高いのを買えば止められないだろうって。先にPhotshopとかペンタブレットとか、高いものをいっきに買ってしまうと、描かざるを得なくなるので、絵を始める人にはお勧めです(笑)。
モニターはMITSUBISHIの24インチで、ペンタブレットは3台目でIntuos5を使ってます。ツールはCLIP PAINT STUDIO PROとPhotoshopCS5です。以前はPhotshopで線画も描いていましたが、手ぶれ補正がないので線の書き直しが多かったんです。みんなはSAIやIlluststudioを使っていると聞いて、自分も試してみて。当時、SAIはバージョンアップが止まっていたので、Illuststudioを使うことにして、そのままCLIP PAINTに。システム屋的な視点では、メーカーサポートの有無が重要なんですよね。
―― 7モノクロ原稿のときはComicstudioですか?
漫画はComicstudioですが、ラノベのモノクロはPhotshopでグレースケールですね。文庫だと原稿の規格が違うので、そのままだとトーンがつぶれちゃうんですよ。昔は色の感覚が分からないのでモノクロは苦手でした。ここで黒を使うとどんな印刷になるのか、とか。実際に作品を重ねるごとに薄くしたり濃くしたり、工夫しながら描いてます。仕事で実験するのもどうかと思いますが、モノクロは紙にも左右されるので難しいです。紙の色は真っ白ではないので、あまり黒くすると浮いてしまうからRGBで言うと#000000ではなく#202020で塗るとか。
―― 実際、お仕事の絵を見ても段々と洗練されてきている印象です。
会社を辞めて時間をかけられるようになって、クオリティーも上げられるようになったんですよ(笑)。兼業の頃は、会社の仕事があっても、原稿の締切もあって、とにかく提出しなければ、みたいなので迷惑をかけたこともあったので。「明日までにお願いします」「いま会社にいるので……」みたいな。
―― 現在の活躍に至るまでには、そんな大変な時期もあったんですね。
『なれる!SE』も7巻がでまして、ボイスドラマにもなったのでありがたい話です。電撃文庫のイベントにも呼んでいただいて、有名な人たちと一緒にサイン会とかまで。本当に駆け出しなので、未だに素人っぽい感じで。「本物の岸田メルさんだ!」とか(笑)。一緒に愛知県盛り上げていきましょうってお話をしました。
―― 8これからのお仕事で、やってみたい方向性はありますか?
漫画をやりたいと思って、挑戦していますが、いまいち締切に追われて上手くいかないです。話を作るところでつまづいているし、トーン貼りとかも迷走しながらやって。コマ割りも読み返すとヤバいなこれみたいなことになっているので。あとは変化球ですけど、油絵とかやってみたいなと。
―― いきなり油絵というアナログなところに。
特に意味はなくて、抽象画みたいなものを描きたいと思って、身分を隠してこっそり絵画教室に通っているんですけれど(笑)。引きこもって仕事の絵だけ描いていたらまずいだろうというのもあって。地元のふつうの絵画教室なので、すごくうるさい小学生とか、おじいさんおばあさんとかに混じって、同年代なんていないです。先生はちゃんと教えてくださるんですけれど。
―― 仕事でも趣味でも、絵の幅が広がっていきそうですね。
そうありたいですね。他の人達に比べて絵描きとしての年数が短いのは、本当はアドバンテージとはいえないですけれど、その分、伸びしろがあるのかなって。だまだ改良の余地がいっぱいあって、楽しいんじゃないかと思っています。
―― 最後に、Ixyさんにとってペンタブレットとはどのような存在ですか?
「仕事仲間です」と言っておけばいいですかね(笑)。「家族」だと新しい機種に変えられませんから。仕事の上では、ちゃんと調整をすれば必要に応じて最大の力を発揮して助けてくれる、エンジニア的な視点でいえば、そんな存在ですね。効率や仕事の内容を考えても、切ることはできない頼りがいのある仕事仲間です。
 
 
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