2014年02月12日(水)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 035
CGディレクター:朝倉涼

取材日:2013年10月23日
取材場所:ワコム西新宿オフィス
取材・構成:高瀬司

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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CGディレクター

朝倉 涼

Ryo asakura

多摩美術大学美術学部情報デザイン学科情報芸術コース卒業後、神奈川工科大学非常勤研究員などを経て、現在は株式会社アカリ所属。グラフィックデザイン、映像制作、メディアアートなど、様々な案件で企画・ディレクションをこなす。主な仕事として「TBSニュースバード」番組タイトル映像、JT MEVIUS PREMIUM MENTHOLシリーズの広告用3DCGグラフィック制作など。またSeventhgraphicsという個人名義でも、商業・自主制作をまたにかけて作品を発表。フォトリアルを追求した3DCGを得意とし、中でもギターをモチーフとした作品を多数発表している。また近年は3DCGで作られたフォトリアルな空間の中に、2次元のキャラクターを融合させる実験的なシリーズも展開中。

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―― 朝倉さんがCGでイラスト制作をはじめた経緯を教えてください。
はじめてCGソフトに触れたのは中学2年生のときですね。『FINAL FANTASY Ⅶ』を見て「PlayStationってすごい!」と衝撃を受けて(笑)。それで家に父親が買ったIBMのパソコンがあったので、sy自分でも作ってみたいなとRay Dream DesignerというCGソフトを買って触るようになったんです。ただそのころは本当に遊び程度で、本格的に作品制作をはじめたのは高校3年生くらいからですね。ホームページを立ち上げてそこに3DCGで作ったイラストを掲載したり、当時はpixivのようなサービスはまだなかったのでBBSなどへ投稿したりといった活動をしていました。
―― 朝倉さんの世代で高校生の頃に3DCGに触れているというのはかなり珍しいですよね。
いまの若い子の間ではそうでもないでしょうけど、確かに僕の歳だと珍しかったですね。ただ、僕は1983年生まれなので、ちょうど中学から高校の頃に3DCGが盛り上がりはじめた世代なんですよ。目立つCGクリエイターなども出てきて、例えばTV番組『ウゴウゴルーガ』のCGを制作されていた秋元きつねさんや、株式会社ケイカの由水桂さんなどは雑誌でもよく取り上げられていて、個人的にも憧れがありましたね。
そうしているうちに漠然とですが将来は絵やCGの仕事がしたいと思うようになり、大学は一年浪人して多摩美術大学の情報デザイン学科に入りました。
―― flyerでは大学で学んだテクニックなどもあったのでしょうか。
テクニックやソフトの操作に関しては使いながら覚えた場合がほとんどですね。基本的には「コンセプトは教えるので、技術は自分たちで覚えるように」という良くも悪くも自由なスタンスだったので。この点はいまもほとんどの大学がそうだと思います。なので在学中はひたすら静止画のCGを作っていましたね。ほかに趣味の範囲ではイラストを描くこともあったんですが、そっちの方面ではすごくうまい人が周囲にもたくさんいたので、自分にしかできないものを作るならやはり3DCGだろうなと、その方向一筋でやっていました。
―― その頃にはデジタル作画の環境も整っていたと思いますが、ツールの来歴というのは?
はじめて使ったペンタブレットはワコムの「FAVO」で、高校3年生のときに買ってイラストやテクスチャを描くのに使ってました。ソフトはまだShadeとPhotoshop Elementsくらいでしたね。大学に入ってからHPのワークステーションをローンで買って、ソフトもCINEMA 4DやPhotoshopを学割で買いそろえた感じです。その後、大学3年生のときに「Intuos3」を買い、社会人になって少し余裕ができたところで「Cintiq 12WX」に買い替えました。
―― ペンタブレットを変えることで何か変化はありましたか。
買い替えるたびに、目に見えて快適になりましたね。「FAVO」から「Intuos3」になったときは筆圧感知の精度が上がったことに驚きましたし、「Cintiq 12WX」に変えたときも液晶に直に描けるということにすごく感動しました。板型のペンタブレットではペンを動かす場所とモニターとが分かれているので描くのに慣れが必要でしたけど、液晶ペンタブレットになることで紙に描くのと同じ感覚ですんなりと使えて。細いラインが描きやすくなったのも助かりましたね。プロダクト系のもの、例えばギターを作るときにはエイジング加工として細かい傷をたくさん描いたりといった作業が大量にあるので。
―― 朝倉さんの個人名義「Seventhgraphics」の作品で印象的だったもののひとつに、フォトリアルな3DCGで作られたギターのシリーズがありました。点数もかなり作ってますよね。
ギターは昔からすごく好きで、高校生の頃からいまに至るまで、ずいぶんたくさんの作品を作りましたね。ただ音楽が好きというよりはギターの形状の方に興味があって、自分でも弾くには弾くのですが、guiterそれよりも眺めてる方がもっと好きだったんですよ(笑)。元来オタク気質なもので、ギターの雑誌を読むときも、モデル情報ばかりに目がいくタイプだったんです。車やバイクのマニアに近いんでしょうね。そうしているうちに、だんだんとCGでギターをモデリングしてみたいと思うようになってきて、いまでも毎年2本ずつくらいは作り続けています。だからギターの作品を年代順に見ていくと自分の成長の様子がすぐわかる(笑)。
―― ギターシリーズの中には『けいおん!』の中野梓をモチーフとした作品がありましたが、アニメや漫画のキャラクターの表現も好きなんでしょうか。
大好きですね。昔『ナースウィッチ小麦ちゃん』の小麦ちゃんにハマって、そこから2次元のキャラクターにも興味がわいてライトノベルなども読むようになりました。『けいおん!』のあずにゃん(中野梓)は小麦ちゃんの次にドハマりしたキャラでしたね。それこそ『けいおん!』は原作漫画のころからギターを持った女の子が出てくる作品ということで注目していたんですけど、アニメ化されると聞いて観てみたら、まんまと大ファンになってしまいました(笑)。それ以降、またアニメにハマり出していて、特に京都アニメーションの描く女の子が気になっています。細かな仕草の描き方がすごいなあと。
―― puyo今後は作品にもキャラクター的な表現を取り入れていくことが多くなるんでしょうか。
 
かわいい女の子が描きたいという気持ちは常に持っています。ただキャラクターイラストでは自分よりはるかにうまい人がたくさんいますし、3DCGでキャラをモデリングするのもゲーム制作方面でがんばっている人が多い。なので、そことは違う自分なりのやり方というのを模索中ですね。それで最近取り組んでいるのが、フォトリアルな3DCGと、手描き風タッチのアナログ感を融合させたシリーズで、今回メイキング動画で描いたものもそのひとつです。
―― 非常に珍しいタイプの作品だと思いますが、どういうアイデアから生まれたのでしょうか。
ネットではよく、2次元キャラが画面から出てきてくれないとかいうネタがあるじゃないですか。そういうジレンマを逆手に取った作品ができないかなと思ったんですよ。そこを原点に、2次元と3次元の歩み寄りをどうしたら表現できるかと考えた結果、3次元空間の中に2次元キャラを配置するという発想が生まれました。
―― テクニカルな面でのこだわりというと?
3DCG畑の人間なので、背景空間の空気感とか質感にはかなりこだわりましたね。2次元のキャラクターが配置されているけれど、周りの空間はリアルな3DCGとして「触れそう」とか「実際にありそう」「写真みたい」と言われるような世界を作りたいんです。
―― これまでのフォトリアルな表現の追求にも繋がる考え方ですね。
個人的に、CGのもともとの原動力は「まるで本物みたいだ!」というところにあったと思うんですね。だからCG作品を作るのであれば、そこの部分は突き詰めていたいんですよ。korgただそうしていると、「リアルな絵がいいのなら写真を撮れば済むのでは」という考えも頭をよぎる(笑)。だから、3DCGの空間を2次元のキャラクターと融合させようというコンセプトは、その問題を乗り越えるにはどうしたらいいかと考えた結果でもあったんです。それによって現実のスタジオで写真を撮るだけでは実現できない、3DCGならではの世界を作れるのではないかなと。
―― はじめにフォトリアルという土台があって、そのうえで、この技術をどう活かせば自分独自の作風を打ち立てられるのか、という発想へ向かったわけですね。
そうですね。以前2次元のイラストが描かれた一枚の紙それ自体に立体感を与えてみるということを試してみたところ、これまで見たことがない独特のタッチの絵面が生まれたことも決め手になりました。そういう2次元キャラと3次元空間の組み合わせは、ひと昔前まではきれいにならないと言われていたんですね。でも最近はredjuiceさんなどを代表に、違和感なく融合させるクリエイターも出てきて。redjuiceさんはグラフィック寄りのCGですが、僕はもう少しリアリスティックなCGでその方向性を開拓していきたいと思っています。
―― ところで、ペンタブレットユーザの間でも、3DCG作品の制作工程にはあまりなじみのない方がほとんどかと思います。中でも朝倉さんの作品はかなり独特な手法で成り立っていると思うのですが、今回収録したメイキング動画を具体例に、あらためて言葉でも補足してもらっていいですか。制作はどういったソフトでどういう手順で進むのでしょうか。
まずはCINEMA 4Dというソフトでのモデリングからはじまります。そこでざっくりとした映像を作りながらシーンの構成を決めていくんです。具体的には、カメラアングルをどうするか、dww035_RyoAsakura_pic6カメラをどう動かすか、アニメーションをどうするか、どこからライトが当たったらきれいかといった様々な演出を考える作業で、最も時間のかかるパートのひとつですね。
次にこの作品では、3D空間の中に鉛筆で描かれたキャラクターが乗った紙のオブジェクトを入れるので、そのキャラクターイラストをPhotoshopで描きます。自分で鉛筆っぽい質感が出るブラシを作っていて、ここではそれを使用しています。
その後、そのデータをもう一度CINEMA 4Dに持っていってテクスチャで紙の質感を出したオブジェクトに張りこんで、そこにさらに質感やライティングをどんどん加えていきます。
―― 紙というモチーフは株式会社アカリで朝倉さんが手がけていた「TBSニュースバード」のdww035_RyoAsakura_pic7タイトル映像でも扱っていましたね。
紙の質感が好きなんですよね。「TBSニュースバード」は日本列島のニュースがメインの番組だということもあって、日本っぽさを出すために和紙とそれで作った折鶴をモチーフにしました。今回の作品で紙飛行機をモチーフにしたのも、そのコンセプトを引き継いだ結果ですね。
―― 紙のテクスチャへのこだわりも感じます。
そこはがんばりが伝わるところなのでいつもひと手間かけています。また特にフォトリアルな3DCGではライティングがすごく重要で、質感を出すのが難しいところもライティングがうまくいくだけでそれっぽく見えたりするものなんですよ。逆にライティングが下手だと、素人が撮った写真みたいになってしまいそれだけで違和感が出てしまう。今回の作品も風船なんかはほぼライティングだけで質感を出しています。
それでそこまでひと通り済んだら一回レンダリングして、もう一回Photoshopに持っていって細かい加筆をしたあと、最後にAfter Effectsで調整を加えて完成です。3DCGはソフトの機能だけだとそれっぽくならなくて、After Effectsで最終調整しないといけないんですよ。After Effectsって動画専用ツールな印象がありますけど、ここにしかない機能やプラグインも多くて、例えば光のフレアを入れるとか、映画っぽい質感にするとか、あとは深度情報・奥行き情報を使ってピントのボケを生むプラグインとかもあって、使うか使わないかで絵のリアルさに大きく差が出ますね。
―― eqこの作業の中でペンタブレットが活きるところは?
CINEMA 4DとPhotoshopの操作では欠かせませんね。テクスチャの調整はすべてそうですし、またAfter Effectsを操作するときも、メインモニターには編集画面だけを映して、「Cintiq 12WX」の側にツールボックスやタイムラインを表示させることでデュアルディスプレイ環境を組んで作業することもあります。
―― 今回の収録で「Cintiq 24HD touch」を使ってみてどうでしたか。
今日はじめて「Cintiq 24HD touch」を使ったんですが、画面の広さに驚きましたね。サイズが大きい方が細かい作業は圧倒的にやりやすかったです。それに腕を大きく動かせるので肩が凝らない(笑)。いつもは20分に一回ストレッチをしているくらいなので。もちろん「Cintiq 12WX」はコンパクトなので持ち歩けるという利点もあるんですけど、いまはもうペンタブレットは創作に欠かせない相棒ですから、「Cintiq 24HD touch」も買って使い分けができたら最高ですね。
―― それでは最後に朝倉さんのこれからの目標などお聞かせください。
いま僕のようなフォトリアル路線のクリエイターは本当に少ないんですけど、逆にだからこそまだまだ可能性の眠っている分野だと思うんですね。キャラクターとの融合はその第一歩のつもりです。それにその点では、ほかのキャラクター系のイラストレーターの方とのコラボレーションなどもできるんじゃないかと思うんですよ。なので、これからは一緒に活動できる相棒をもっと増やしていきたいですね。
 
 
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©Bonten/Wacom

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