2014年03月07日(金)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 027
イラストレーター:竜宮ツカサ(マンボウの姉)

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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イラストレーター

竜宮ツカサ(マンボウの姉)

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実弟のタカハシヨウ(マンボウP)が2009年7月にニコニコ動画に投稿した楽曲「家の裏でマンボウが死んでる」のPVにイラストを提供したことをきっかけに、「マンボウの姉」として知られるようになり、弟をはじめとするボーカロイド、ニコニコ動画関連の様々なクリエイターとコラボ作品を発表。2012年4月にビクターのSPEEDSTAR RECORDSレーベルからメジャーデビューアルバム『My Colorful Confuse』が発売されたことをきっかけに、「家の裏でマンボウが死んでるP」を姉弟のユニット名とし、竜宮ツカサ名義での活動をスタート。表現力豊かなイラスト作品の他、姉弟でbayfmのラジオ番組を担当したり、自らマンボウPの曲「スイートフロートアパート」をカバーして発表するなど多彩な活躍を見せ、ネット世代から大きな支持を得ている注目のクリエイター。

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―― 竜宮ツカサ(マンボウの姉)さんが絵を描くようになった経緯から教えてください。
小さい頃、029_anemanbou_pic1怪獣映画が好きで、ゴジラとかガメラを描いていたのが最初だった気がします。それから人間とかも描くようになって、そのまま今に至る感じで、ずっと絵ばかり描いてました。特に平成ガメラが好きで、自分でもガメラ映画みたいに動きや勢いのある絵を描けるようになれたらいいなということで、そういう感じの絵を描くようになっていったと思います。
―― 学校などで特に絵を勉強されたりしたことは?
ないですね。中学生の頃に美術部に入っていたことはありますけれど、イラストはもっぱら趣味で描いていました。高校の時に、ダンス部の人達を見ている内に人体の動きに興味が出て、ダンスとかスポーツ、格闘技みたいなものを見ながら人体を描くということをしばらくやっていました。いいな、とか好きだな、と思ったら、それを自分の絵で描いてみたいというのが、小さい頃から今までずっと続いているんです。
―― アニメとか漫画を意識して観るようになったのはいつ頃ですか。
美術部のお友達に引きずりこまれて(笑)。その後、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』というゲームにドハマりして、そこから自分で漫画を描いたりですとか、同人誌を作って地元のイベントに出したり、ホームページを作ってイラストを載せたりするような、オタク的な道に入っていった感じですね。
029_anemanbou_pic2―― ネットを使うようになったのもその頃ですか?
『ゼルダ』関係で、好きな雑誌に投稿されてる方のホームページ観たさに家のPCでネットを始めたら自分でもやりたくなってしまったという流れですね。まだSNSとかもなかったので、個人サイトのリンク集とか辿って、「うふふふふ」とか、そんな感じでした。
―― デジタルで絵を描き始めたのもそのタイミングですか?
そうですね。雑誌を見ていて、これどうやって塗っているのだろうって。「CGだよ」って教えられて、何も知らなかったのでびっくりして。両親にせがんでFAVO(F-401)とPhotshop Elementsを買ってもらって、そのセットで頑張っていました。そこからずっとFAVOを使っていて、いまも現役なんですけれど、ツールは最近はSAIを使うようになりました。Photoshop ElementsだとCMYKにできないのが不便だったので、新しいPC環境も一式そろえたんですけど、古いほうに慣れてしまっていて。頑張って使いこなしたいなとは思っているんです……。
029_anemanbou_pic3―― 現在は「マンボウP」こと実弟のタカハシヨウさんとのユニット「家の裏でマンボウが死んでるP」として活躍されていますが、それ以前にお仕事で絵は描かれていたんですか。
映像系の大学に通っていて、好きなイラストを活かせるお仕事に就けたらいいなって。卒業して教材のイラストを作成する会社で仕事をしていたんですが、体調を崩してしまいまして。それでしばらく仕事で絵を描くことはお休みしていたんですけれど、弟の曲にイラストを提供したことがきっかけになってお仕事もいただけるようになりました。
―― そもそも弟さんの曲にイラストを提供することになったのはどのようなきっかけで?
最初は『家の裏でマンボウが死んでる』という曲で、ある日突然、弟が「初音ミク買った」と言って部屋に入ってきまして。「初音ミクに『家の裏でマンボウが死んでる』曲を歌わせるから、なんかそういう絵を描いてよ」と雑な頼み方で。それで、忙しかったのでガーっと適当に描いちゃったんですけれど、ニコニコ動画に上げたら思いのほかイラストにも反響をいただけたのが純粋に嬉しくて。そこからマンボウが次々に曲を発表していくようになって、私も、自分の絵でもっと曲の魅力を伝えられればと、PVにイラストを描くようになりました。
―― マンボウPの楽曲の独特の世界観を表現するPVは、作品の魅力の一つですね。
そう思っていただけると嬉しいです。曲そのものが凄く面白いので、歌詞をひとつひとつ拾って「絵にしないとだめだな」という部分をチェックしていると、気づいたら大量のイラストが必要になってしまってるんです。とにかく「曲を活かしたい」という気持ちでまず歌詞を読んで、映像を頭に思い浮かべて。歌詞が普通じゃないので、かなりのムチャ振りなんですけれど、最近は逆にやりがいすら感じるようになってきました(笑)。「望むところだ!」という感じですね。
―― 歌詞の世界観は、異常なシチュエーションやありえない出来事が多いですよね。
最近029_anemanbou_pic4描いたPVのイラストで一番よくわからなかったのが、『My Colorful Confuse』という卒業式の歌で、通学路に次から次へと現れる敵を主人公が倒していくんですけど、最後の敵が「尻筋を引き締めている間だけ時を止められる系魔王」と言われて、なんだそれと思いながら矢印でお尻の筋肉を引き締めているようなのを描いたりして。
―― どの曲も物語性が高いですが、どこかおかしい。
最後に泣かせるような展開の曲もあるんですけれど、全体的におかしいですよね。一曲ごとに個性的なので、絵もひとつひとつ差別化できるようにしたくて、色が被らないようにするとか、そういう工夫はしています。
――絵柄も曲にあわせて、可愛いかったり筋肉ムキムキだったり耽美だったり。
可愛い女の子と筋肉とイケメンは、私の中の好きなモチーフ御三家ですね。好きなものを自分の絵で描きたいという目標があって、それがどんどん増えていって。欲張りなんですけれど。だからマンボウの世界観を絵にしていく作業は、すごく楽しいですね。
―― それまでは姉弟でコラボレーションをすることは無かったんですか?
全然無かったです。バンド活動をしている弟のライブを観にいったりはしてましたけど、まさか自分がこんな風に手伝うことになるとは思ってもいなかったです。その頃から弟は変だったんですけれど、029_anemanbou_pic5弟も私の絵を見る度に「あいつ変だな」と思っているらしくて。お互いに変だと思うところから始まってる感じですが、やっぱり姉弟だからか、お互いの作風がマッチするんですよね。そのせいでずっと弟と同一人物だと思われていたんですけれど、最近は私の存在をアピールして、やっと認めてもらえるようになりました(笑)。
―― PVは一曲あたりどれくらいの作業期間で作られるんですか?
だいたい3~4時間くらいで下絵を描いて、2日で色を全部塗って、3日目で仕上げます。だいぶ回数を重ねたので、そこそこ描くのが速くなりました。去年は大変で、全部で年間375枚描いていたんですけれど、動画サイズで一枚がそれほど大きくないので、あまり苦労はしてないですね。でも最近は編集までやるようになったので、作業時間は延びてます。
―― 弟さんや他の歌い手さんとのコラボ以外に、自分としてやってみたいお仕事はありますか?
キャラクターデザインをやってみたいなと思っています。動画でも、登場するキャラを考えるのが一番楽しいですね。最近、ビジュアル系アニメソングのカバーアルバムのジャケットを担当させていただいて、それが人間キャラを全くのオリジナルで依頼された初めてのお仕事だったので、嬉しかったです。これから色々な媒体でキャラクターデザインをできたらいいですね。マンボウのPVで鍛えた想像力で、小説の挿絵なんかもやってみたいです。

―― YAMAHAのVOCALOID、VY2のイメージキャラクター「66(ロロ)」も人気です。
新しいボカロ029_anemanbou_pic6を作る「みんなのボカロ計画」というコンテストで優秀賞をいただいたキャラクターなんですが、今はYAMAHAのVY2というキャラクター設定のないボーカロイドのイメージのひとつとして描かせていただいてます。すごく愛着があるキャラなので、皆さんが絵を描いてくださったり、マンボウの曲の登場人物としても好きだといわれるのはすごく嬉しいですね。
―― ニコニコ動画のようなCGMの盛り上がりやボカロブームで、竜宮ツカサさんの環境も大きく変わったんですね。
昔はネットで皆さんの作品をみて「この人凄いな」と思うだけだったんです。でも思い切って自分も参加してみて、今は一緒に皆で盛り上げようよって思えます。本当に想像できないくらい多くの人に見てもらえるようになったので、ひとつひとつの作品にも気を使うようになって、クオリティも上がってきたと思うんですよ。それまでは自分が好きなだけで描いていたのが、今は面白いと思っていただきたいという意識に変わってきました。動画のコメントで、仕込んでおいたネタにツッコまれたりすると、「ふふふ気づいたか!」という感じで、してやったりですね(笑)。
―― 創作する上で影響を受けたり憧れている作家さんはいらっしゃいますか?
一番は手塚治虫先生ですね。大学の頃に『ブラック・ジャック』を読んで、衝撃をうけたんです。それから、私もこんな風に見ただけで「あの人だ」とわかってもらえるような絵を描きたいと思って、目標にしています。「これで終わりでいいの?」と心に引っかかったり、人間の価値観が通用しないところで完結する置いてけぼり感みたいな、そんな不思議なお話作りの部分でも影響を受けています。
029_anemanbou_pic7―― マンボウPの楽曲も、ちょっとSF風だったり理不尽な展開があったりしますが、原点は同じなんでしょうか。
違いますね。実はマンボウとは趣味は全然合わないんですよ。弟は女子大生の好きそうな少女漫画とか、『とらドラ!』とか『ハチミツとクローバー』みたいな作品が大好きなんですけれど、私はバトルものが大好きで、殴りあいのない少女漫画にはあまり興味がわかないんです(笑)。あの乙女チックな趣味から、なんであんな変な歌詞がでてくるのか、姉ながら毎回驚きます。ナニそれって。
―― マンボウPのメジャーデビューアルバム『My Colorful Confuse』(ビクター)のジャケットも不思議なイラストですが、どのようなイメージで描かれたんですか?
マンボウから「赤と黄色と青の原色の中で混乱してる人」という、また雑な発注がありまして。何かキャラクターがいたほうがいいかなとデザインして、それを中心にまとめた感じですね。ホネホネツインテールちゃんっていうんですけれど、私が1人で呼び続けてるだけで全然浸透しないですね。CDはこんなに豪華にしていただけて嬉しかったです。店舗特典のトークCDも改めて聴くとひどい内容ですよね。でも変に期待されるより本性がバレてる方がやりやすいのでよかったです(笑)。
―― 弟さんの「雑な」オーダーを絵としてイメージするにあたって、何か発想の方法みたいなものはあるんですか。
本当にフィーリングで、その場の勢いとしか言えないんです。説明しづらいんですが、歌詞を見れば「ああ、ここを表現したいんだな」という部分がわかってきたりしますね。『クワガタをチョップしたらタイムスリップした』の下絵は1時間くらいで出来てしまったんですよ。曲自体の完成度も高かったので、あっという間にイメージできて。「出来たよ!」ってドヤ顔で見せてびっくりさせた思い出があります。『My Colorful Confuse』の「自力反重力!」の部分は、私が「ここは座禅しかない!」って描き始めていたところに、弟から「座禅でお願いします」と言われたので、びっくりして。さすが姉弟だねっていう話をしてました。
―― 絵を描くときの作業工程はどのような感じですか?
まず029_anemanbou_pic8シャープペンシルで紙にラフを描いて、イメージが固まったらスキャンしてSAIで全体にサッと色をつけてから、ペンツールでペン入れをします。SAIは速く描けるところがいいですね。ペンツールだと、線を引いたあとに調整ができるので。最近はPVの仕事などで急ぎの作業が多いので、そういう時にはパッと直せる機能がすごくありがたいんです。
―― 現在の作業環境を教えてください。
古いwindows PCにFAVOを繋いでSAIとPhotoshop Elementsを使っています。もう虫の息なんですが、なんとか頑張って動いてもらっている感じです。あとはもう一台、新しいMacを併用しています。ネットに上げるのはSAIで描いたそのままですけど、印刷物の場合はMacのPhotoshopにもっていってCMYKのデータを作って納品します。A4サイズでもう苦しいんですけれど、大きいデータになるときはペン入れまでなんとかSAIで頑張って、色塗りはMacでとか、そんな感じです。
―― 今回、初めて「液晶ペンタブレットCintiq 24HDを使って描いてみた」感想はいかがでしたか?
本当に手描きと変わらないというのが、第一印象です。これまで紙にラフを描いて、スキャンしてなぞってと手間がかかってましたけど、Cintiqがあれば、PVの制作工程をもう1日短くできると思います。こんなに滑らかな書き味だとは思ってなかったのでびっくりです。液晶ペンタブレットだと、狙ったところにきちんと線を引けるので、後から修正する必要が全然なかったので……本気で購入を検討しています(笑)。
029_anemanbou_pic9―― これまでペンタブレットを使っていて、こうなるといいな、みたいな要望があれば教えてください。
実は、それもCintiqで叶ってしまったんです。画面に描けることと、後からペンツールで修正せずにイッキに描けたらというのが叶ってしまって、私、すごくびっくりしてます。目からウロコがボロボロで、新時代の幕開けを感じてます。
―― 最後に、竜宮ツカサさんにとってペンタブレットとはどのようなものでしょうか。
改めて、10年以上も使っているので、何だかもう家族みたいだなと。本当にペンタブレットが無いと私は何も出来ないので、重要な存在ですね。立派なマンボウファミリーの一員です(笑)。
 
 
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