2014年03月05日(水)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 028
イラストレーター:しろ

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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イラストレーター

しろ

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2004年にPCゲーム『シンフォニック=レイン』(工画堂スタジオ)の原画家としてデビュー。独特のやわらかい雰囲気をもったキャラクターイラストが支持され、ライトノベルやムック、イベントなど幅広いで分野活躍、テレビ番組『デジ絵の文法』(2006年/フジテレビ)では「癒しの絵師」としてメイキングを披露している。サークル『WHITE PAPER』として精力的に同人活動を行っているほか、写真、自転車、旅行など多彩な趣味の持ち主として知られており、それらを題材にした同人誌も高く評価されている。2011年より「月刊コミック アース・スター」(アース・スターエンターテイメント)で登山をテーマにした漫画『ヤマノススメ』の連載をスタート、2012年6月には自身初となる単行本の発売と同時に、同作のアニメ化企画が進行中であることが発表され話題をよんでいる。

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dww028_siro_pic1―― しろさんがイラストレーターとしてお仕事をされるようになった経緯から伺えますか。
大学で友人に勧められて絵を描くようになって、そのまま……というありがちなパターンです。もともとゲームをやる以外にこれといった趣味もなくて、特に自分で絵を描くこともなかったんですけれど、漫画研究会に誘われて。わりと真面目に活動をしているところで、そこでイラストの描き方を勉強したり、漫画を描いて批評しあったりしてたんです。そのうち「コミックマーケットというものに本を出すので、小説に挿絵を描いてくれ」みたいな感じで、ズルズルと。

―― 精力的に同人活動をされているイメージでしたが、それまではコミケのことも知らなかったんですね。
漫画研究会で初めてコミケとは何かを教わった感じですね。それまで全く知らない世界だったので、逆にそんなことも知らないで入ってきたのかとびっくりされましたよ。友人のスペースに間借りして出したイラスト本が、そこそこ評判もよかったので、そこからは自分のサークルでオリジナルの同人誌を中心に活動するようになりました。

―― 最初にお仕事として絵を描かれたのは?
大学2年生の頃に描いた『シンフォニックレイン』というPCゲームの原画です。まだ同人もそれほど表立ってやっていた時期ではないので、Webを見て声をかけていただいたのかなと。そこから9年間食いつなげていることにびっくりです。運よく最初のゲームが当たってくれたので続いたかなという。今の時代だったら厳しいかもしれません。

―― 自身のWebサイトを作ったり、ネットで他の人の絵を見たりというのも大学から?
自分にそのような知識が全く無かったので、漫画研究会でアドバイスされてWebサイトを作った感じです。他の人のサイトを見るのも、大学でネットが使い放題になってからですね。

dww028_siro_pic2―― 本格的に絵を始めてから、かなり短い期間でイラストレーターとしてお仕事をされるようになったんですね。
大学2年生の中盤あたりから仕事が忙しくなってきてバタついてきてしまって。学校で授業中に描いて、昼休み中に原画を提出に郵便局にいくとかをやってましたが、学業と仕事の両立、というのがいかに難しいか、学生がなぜ学生をしているのか、というのを嫌というほど感じさせてくれました。

―― デジタル作画を始めたのも、絵を描き始めるのと同時ですか。
最初からですね。漫画研究会に入ってすぐ「FAVOというのを買え」と言われて。何もわからずにFAVOを買って絵を描いていました。高校生の頃からやり込んでいたゲームもシミュレーションとかRPGで、普通にドット絵やポリゴンの方が親しみがあったので、デジタルで絵を描くんだというイメージがそもそも無かったですね。

―― ゲームから色々なイラストまで、お仕事の幅も広いですが、カメラや自転車、山登りなど趣味も多彩ですよね。
基本は全部カメラ繋がりで、5~6年前に、資料撮影用に奮発して、ちょうど入手しやすくなってきたNikonのD50というデジタル一眼レフカメラを買ったら、意外とハマってしまって。その繋がりで被写体を求めて旅行を始めたら、登山もいいなと。旅先で移動するのに自転車があると便利なのでそっちもという感じで。最近はそれも仕事になっているので複雑な気持ちです。

dww028_siro_pic3―― 現在は漫画『ヤマノススメ』を「月刊コミック アース・スター」(アース・スター エンターテイメント)で連載中です。
確か去年の6月ごろに描いてみないかと言われて、2ヶ月後に連載開始で。同人誌の『ヤマノススメ』を見て興味を持っていただいて、連載という運びになりました。マンガを描くのは初の体験だったので、最初は編集さんにご迷惑かけっぱなしでした。

―― 実際に漫画を連載してみて、いかがでしたか。
イラストと違って総合力が求められるので、全然感覚が違いますね。一枚絵だと一枚で全部の魅力が伝わるように見せなければいけないんですけど、漫画だと力を入れるカットと間のカットを作って流れを作っていかないと読むほうも疲れてしまうので、難しいなあと。それとイラストの線で描いてしまうと、漫画としてはメリハリもなくなってしまったり、イラストとの作画の違いも当初だいぶ戸惑いました。コマ運びや、めくり、視線誘導みたいな技術も編集さんに赤を入れられながら、頑張って憶えています。

―― 先日発売された単行本第1巻でアニメ化が発表され話題になりましたね。
最初は話半分で聞いてくれと言われていたんですけれど、本当にそういう話になってしまっていました(苦笑)。今はアニメ化に向けて連載も毎月2話ずつ掲載で頑張らせて頂いているところです。

―― 漫画とイラストでは、お仕事の進め方も変わっているんですか?
そうですね。今は漫画の方が作業量的に重くて、漫画の間にイラストを描くような感じになってます。マンガはネームを含めて3週間程度はかかるので、趣味の時間がほとんど取れなくなっちゃうのでまずいなあと。全然休めません。

dww028_siro_pic4―― 漫画はどのようなスケジュールでお仕事されているんですか?
取材やネームで1週間くらい、あとは2週間ほどかけてペン入れと仕上げみたいな感じでやってます。他に大きめの仕事があれば、作業を詰めていく感じで。一応、1人メインでアシスタントがいて、ヘルプでもう1人という感じです。イラストの仕事は1人でしかできないので、自分だけの責任でいいんですけど、人を使うとなると人件費もかかりますし、色々考えないといけないことも増えて、難しいなあと感じます。

―― 現在のお仕事はフルデジタルですか?
紙に線画を描いてスキャンしていた時は、消しゴムのカスが大量に出て掃除が大変だったんですけれど、液晶ペンタブレットを使うようになってからはフルデジタルで線画まで出来るようになって楽になりました。漫画も最初からフルデジタルですね。今はもうプリンタ用以外の紙がほとんど仕事場にない状態で、そもそも紙に描ける環境がないです(笑)。

―― 作画環境はどのような感じですか?
ペンタブレットはCintiq 12WX、モニターはMITSUBISHIの25.5インチで、PCは最近先代のが壊れたので急遽買ったドスパラのガレリアというPCです。もしかしたらゲームもするかもと思ってたのでそこそこのビデオカードを積んだモデルを選んだのですがぜんぜん遊んでないのでもったいないなと。

―― 液晶ペンタブレットを使い始めたのはいつ頃からですか?
FAVOのオーバーレイシートが傷んできたのと、仕事が普通に入ってくるようになったので多少贅沢してみようとIntuos3を買って、その後にCintiq 12WXですね。液晶タブレットは高嶺の花ではあったんですけれど、12WXだったら手を出せるかなと。板と比べて手で描いているところが隠れるのが気になって躊躇していたんですけど、線画が断然、楽になったので早く買っておけばよかったなあと思いました。

dww028_siro_pic5―― 今回、Cintiq 24HDを使われてみていかがですか。
大きいですね。ストロークを使って描く人にはいいんじゃないかと。私はほとんど手を動かさないので、作業環境は狭くてもいいんですが、1画面で資料も出しながら作業ができるのは便利かなあと感じます。画面が狭いといくつもウインドウを開けない関係で、どうしても2画面必要になってくるんです。

―― 普段、Cintiq 12WXを使われる上で何か工夫をされていますか?
キーボードの置き場所に悩むんですが、今はCintiq 12WXの上のほうに置いて使っています。あと、補助デバイスとしてずっとワコムのスマートスクロールを使っていて、片手で拡大と縮小、移動ができるのがすごく便利だったんですけれど廃盤になってしまって。Windows7に移行してからはShuttle pro2という動画編集用のデバイスを使っています。左利きなのでなかなか使えるデバイスの選択肢が少なくて……。

―― ツールはどのようなものを使っていますか。
最初はPhotoshop 6.0を使って塗っていましたが、途中からSAIに切り替えて。最近はIllustStudioと併用しています。今のところ、シンプルで使い勝手がいいSAIで出来るところまでやって、それ以外の部分は他のツールという感じで。CLIP PAINT STUDIOが将来的にComicStudioと統合されるというので、いずれはそちらに移行するのかなあと。漫画も最初はSAIで描いていたんですけれど、編集さんからComicStudioを使うように言われて変えてみたら使いやすく、線の出方も全然違ったので。単行本にするときに、SAIで描いていた1話は丸々描き直してます。

―― 単行本で通して読むと、線のテイストが違ったりする回がありますね。
連載しながらComicStudioにも慣れていく感じだったので。試行錯誤しながらお勉強させていただいている感じです。はやく作風として絵として落ち着くと良いのですが。

dww028_siro_pic6―― 仕事的にはこれから漫画が中心になるのでしょうか。
漫画がすごく重くて他が入れられないという感じですね。イラストと比べると、労力がかからない代わりに単価は高くないですが、枚数が多く毎月一定量の仕事が入ってくるので生活的に安定するのがありがたいです。元々、自分でこれだと思って飛び込んだ世界というわけでもないので、様子を見つつ評判のいい方に進んでいこうというのはあります。イラストレーションは消費されるものなので、見る人の好みは意識しないといけない。そう考えると「俺についてこい!」とは言いにくいです。芸術家だったらいいんですけど、そういう生き方では食べていくのは難しいし、私自身も絵で自己表現を前面に押し出す、ということにはあまり興味がないので。

―― かなりユーザーの目を意識されて描かれているんですね。
「萌え」といっても、ギャルゲー的なイラストから入っていないので、テイスト的に「萌え」の王道とは違う感じですが、それがチャームポイントでもあると思うので維持していきたいです。色選びとかが独特なのかと思うんですけれど、センス依存な描き方をしているのでちょっと技術面がおざなりになりがちなのが良くないかなぁと思っています。パレットもその場の感覚で塗ってしまって、がっちりとは作らないタイプなので、1枚1枚ちがったりするんですよね。

―― 最近のカラーは、初期の作品にくらべるとタッチが強くでていますよね。
ずっと同じだと飽きられてしまうので、意識的に変えてきています。特に研究をしているわけではないですが、作画環境もかなり変わっているので、そのへんの影響も受けているんじゃないかなと。

―― 液晶ペンタブレットを導入して変わった部分というのはありますか?
線が引きやすくなった点ですね。塗りについては、SAIにしたことのほうが影響は大きいかもしれませんね。ツールももっと研究したいんですけれど、忙しくて時間がとれない。ずっと絵のことだけやっているとメンタル的にもくるので、少しでも外に出たくて……。絵を仕事にしつつ、その合間に趣味で描いている人もいますけど、すごいなあと。

dww028_siro_pic7―― 元々、アウトドア派だったんですか?
インドアの極みのような生活をしていたんですが、絵が趣味ではなく仕事になったので、その代わりに外に出て何かしようみたいな感じで。家が仕事場なので、そこから出たいんですよね。それこそ以前は同じ部屋で、目が覚めたら目の前がもう仕事場で……という生活だったので。あとは不摂生になりがちな職業なので、やっぱり運動しなきゃダメだなと。

―― 仕事を離れて「これがやりたい!」ということはありますか?
3~4日まとまった時間をとって、自転車でツーリングとかに行きたいです。今年に入ってからほとんど旅行にもいけてないので。どこに行こうとか考える余裕がなくて。取材も今のところ日帰りしかないので。大体、アクセスのいいところには山がないですからね(笑)。

―― 同人活動のほうは、いかがですか?
同人は構成とかも自分のやりたいようにできますし、そこからお仕事に繋がることも多いので、やりたいんですが、商業でも描いているとだんだんネタが無くなってきて。夏コミも受かっているので、なんとかしてネタを探して仕事の合間にできるだけ進めようかなと思うんですけど、やりたいことを見つけるのが大変で……。

―― しろさんの作品を読んで山に興味を持つ人もいそうですね。
カメラを始めたという話はよく言っていただけます。『ヤマノススメ』の内容も、初心者向けなやさしい低い山から初めていて、入門書的ではあるのでそうなってくれればと思っています。私は旅行で最南端と最北端に行ったので次は最高地点かな、と初めて登ったのが富士山だったので、取材で低い山に初めて登ったら新鮮でした。山小屋にはよく登山系の漫画が置いてあるので、そこの隅っこのほうにでもちょこっと『ヤマノススメ』が置いてあったら嬉しいなあと。登山漫画というとクライミングやヒマラヤ登山などを扱ったハードなものが多く、実際山をやっている方にはどう映るのか気になります。

―― 最後に、しろさんにとってペンタブレットとはどのような存在ですか。
スタートからあったものなので、当然すぎて感慨もわかないんですけれど(笑)。そもそもペンタブレットが無ければデジタルで絵を描こうとならなかったと思うので、絵描きになっていなかったかもしれないですね。生活必需品ということで、なければ生きていけません。

 
 
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©Bonten/Wacom