2014年03月12日(水)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 026
アニメーター:近岡直

dww_readimage

イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

dww026_SunaoCHIKAOKA_prof

アニメーター

近岡直

sunao chikaoka

大阪電気通信大学を卒業後、XEBECに。『天元突破グレンラガン』で作画監督デビューし、桜庭コハルの人気漫画『今日の5の2』のテレビアニメや、TAGROの『変ゼミ』単行本限定版アニメでキャラクターデザインを担当。若手実力派として、『フラクタル』『アイドルマスター』といった話題作に参加した後、山本寛監督率いるスタジオOrdet(オース)で東日本大震災チャリティーアニメ『blossom』のキャラクターデザイン、作画監督を手がけている。同人サークル「imgnation」としても活動し、健康的で可愛らしい制服少女のイラストを多数、発表している。

dww_title026

dww026_SunaoCHIKAOKA_pic1―― 近岡さんがアニメーターになられた経緯から伺えますか?
中学2年生の頃に、『美少女戦士セーラームーン』にハマって。そんなにアニメを観たりしてなかったんですが、クラスで流行っていたので、僕も観てみようと。そしたらすごく面白くて、周りが観なくなってからも自分だけは観ている感じでした。

―― マンガやイラストのような絵を描くことは好きだったんですか?
それほど描くのが好きだったという訳でもなくて、『セーラームーン』もアニメを作っている人のことは全然意識せずに観ていました。違うクラスにすごくセーラームーンを描くのが上手い人がいて、これくらい描けるといいなあと思いつつ、たまに1人で描いて満足して終わり、というくらいで。高校の頃にブームになった『新世紀エヴァンゲリオン』の落描きをしていたら、アニメ好きの友達が「そんなに絵を描くのが好きならアニメーターという職業があるよ」と教えてくれて、「何それ」と。

―― 漫画家でもイラストレーターでもなく、アニメーターだったんですね。
そういう友達だったんですよ(笑)。それで、アニメーターになるための学校とか色々調べたんですけれど、他の友達が詳しくて、それくらい描ければ別に学校にいかなくてもなれるよと。親の勧めもあったので、とりあえず大学に通いながら絵を練習してアニメーターを目指すことにしました。

―― 大学は美術系ですか?
大阪電気通信大学で工業系でした。でも、大学に入ってからはあまりアニメを観ないで、ゲーセンにばかり通っていたんですよ。当時のゲーセンにはコミュニケーションノートというのがあって、お客さん同士がいっぱいイラストを描きあっていたりしたんです。その中にすごく上手い人がいて、その人とノートを通じて仲良くなったりしたのが、すごくよかったなあと。

―― 時期的には、格闘ゲームのブームが盛り上がっている頃ですね。
カプコンのイラスト集とかが出て、それを見て春麗とか描いてました。『バーチャファイター』や『鉄拳』みたいな3D格闘ゲームのモーションキャプチャーを使ったリアルな動きよりも、カプコンやSNKのキビキビした2D格闘ゲームの動きが好きでした。小学生くらいの頃に『ストリートファイターII』が出て、グラフィックで「すごい!」と思いましたし、そういった部分で影響は大きく受けていますね。

dww026_SunaoCHIKAOKA_pic2―― その後、大学を卒業してからはどのような形でアニメ業界の門を叩かれたんですか?
インターネットで色々な募集を見て、とりあえずどこかに受からないとと思ってたくさん応募して。その中でたまたまXEBECという制作会社に採用されたんです。それまでXEBECが手がけていた『爆走兄弟レッツ&ゴー』や『機動戦艦ナデシコ』といった作品も好きだったので、XEBECで動画マンとして働き始めました。

―― アニメ制作の経験はそこからスタートするんですね。アニメの現場に飛び込んでみてどうでしたか。
辞めようと思ったこともないので、割と合っているのかなと。会社に行く時間が自由だったり、社内の人付き合いもそれほど気にしなくていいとか、僕は凄くマイペースな人間なので、そういうところがよかったのかなと思いますね(笑)。

―― XEBECでは動画マンとしてどのような作品に携わったんですか?
入った頃は『ロックマンエグゼ』とか。よく覚えているのは『陸上防衛隊まおちゃん』で、夜に遅れて入ってきたカットを皆で昼までかけてやったりして、最後に回ってくるのはだいたい大変なカットで、寝ないで朦朧としながら描いていると、ウネウネした変な線が増えてるんですよ(笑)。そのまま寝ないでコミケとか遊びに行ったりして。よくやれていたなあと思います。

―― 動画から原画にはどのようにステップアップするんですか?
僕がいた頃のXEBECでは、原画を描いて出したら原画マンになれたんですよ。それで、同期がいつのまにか原画を描いていたのでズルイなあと思って僕も出してみたら、すぐにやらせてもらえるようになりました。『ロックマン』のシリーズだったんですけれど、最初は作画監督に迷惑をかけっぱなしでしたね。この描き方はないと怒られても「そうですか?」みたいな感じで、リテイク(描き直し)にされたり。だんだん解ってきましたが、よくここまできたなあという感じはします(笑)。

dww026_SunaoCHIKAOKA_pic3―― 『天元突破グレンラガン』第3話で初の作画監督を務められて、それまでの動画、原画とお仕事の上で意識の違いはありましたか?
原画だと、自分が描いたものに作画監督の修正が入るんですけれど、作画監督は自分の絵が画面に出ることになるので、それを観てヤバイと、危機感を覚えましたね。客観的に自分の絵が見られて、もっと頑張らないとと思いながらやる感じで。ただ、原画だと自分の担当カットで完結するのが、作画監督は一話数の全体を見なければならないので、1カットずつにこだわるのではなく、このカットはキメたい、という部分を外さないようにしようと意識しました。

―― その他では、キャラクターデザインを担当されることも。
作画監督として『武装錬金』『オーバードライブ‐OverDrive‐』『ヒロイック・エイジ』をやって、2008年に『今日の5の2』のキャラデザをやりませんかという話があって。初めてなので、なんとかOKをもらうことを考えて描いてましたね。それからOAD版『変ゼミ』のデザインをやらせて頂いて。原作の絵が好きで、自分的にものびのびと描くことができて原作者のTAGROさんにも気に入ってもらえました。後のテレビ版『変ゼミ』でもそのままデザインを使っていただいてます。

―― 『フラクタル』『アイドルマスター』はA-1ピクチャーズに机を置いてのお仕事ですが、古巣のXEBECを離れたのは何か心境の変化があったのですか?
XEBECの中では、それなりに実績もできたけれど、ずっとアニメの仕事を続けていく上で、外の世界を見たときに、もしかしたら自分の実力ではヤバいんじゃないかと。もっと色々な人に会って、一緒に仕事をして、という風にやっていかないとレベルアップできない、先がないと思ったんですね。それで、勝手のわかるXEBECに落ち着いてしまわずに、他の所にいってみようと。

―― 「俺よりも強い奴を探しに行く」ですね。
まさに『ストリートファイターII』のリュウですね(笑)。『フラクタル』『アイドルマスター』は本当に上手い人ばかりで、仕事ぶりを見ても皆さん『こんなに仕事するの?』というくらい本当にずっと仕事してるんですよ。それは上手くなるな、と納得しました。会社のすぐ近くに部屋を借りてるのに、家でお風呂に入ったら会社に戻ってきて机の下で寝ていたりするんですよ(笑)。これだけやっているから、上手くなるんだと。なるほど、と思って自分も奮起しているところです。

dww026_SunaoCHIKAOKA_pic4―― アニメを離れると、同人活動では一枚絵のイラストを描かれていますが、同人活動は近岡さんにとってどういう位置づけなんですか?
同人活動は、大学の頃に友達に誘われて始めました。アニメだと集団制作なので、自分の好きなものだけ、というわけにはいかないですが、同人だと自分がこれくらいでいいと思った部分、例えば、ここの線が歪んでいるけれど逆に気持ちいいよね、という感じを大事にしてノリと勢いで描けるので、自分の本当に好きなものを描こうという感じですね。

―― アニメーションとイラストでは、描き方が変わったりしますか。
1枚の絵について言えば、イラストレーターの人と比べて時間のかけ方、手数が圧倒的に違うんです。最近、安田朗(あきまん)さんがやっているUSTREAM放送「あきまんTV」をよく観ているんですけれど、1~2週間かけて一枚絵を描かれていて。やっぱりそれだけ手が込んでいるんですね。僕の場合は、一枚絵でもだいたい2~3日で終わってしまう感じです。

―― イラストを描く上での作画環境はどのような感じですか。
SONYのVAIO type Rで、CPUはCore2Quad、OSはWindows7です。モニターの解像度は1920×1200で、ペンタブレットはIntuos3を使って、Photoshop CS5で描いています。

―― 初めてペンタブレットを使われたのはいつ頃でしたか?
大学にあったIntuos2を使わせてもらったのが最初です。当時は『コミッカーズ』とかを読んでいたんですが、まだデジタルの記事が少なかったので、カラーインクやコピックを買ってアナログで絵を描いていて、デジタルでもThinkpadの赤いポッチをグリグリして描いていたんですよ。だから自分のペンタブレットが凄く欲しくて。卒業して東京に出てきた頃に、お古のシリアル接続のArtpad2を譲ってもらって「やったー! ペンタブレットだ!」って。Artpad2は表面が少しツルツルしているので、紙を敷いて使っていました。それから友達のFAVOなども触らせてもらいましたが、最初のIntuos2のイメージが良かったので、Intuos3に買い換えて、現在も使っています。

dww026_SunaoCHIKAOKA_pic5―― 今回、初めて液晶ペンタブレットCintiq 24HDを使われてみて、いかがですか?
画面とペンの先がダイレクトなので、やはり描きやすいです。画面と手元で線の角度がズレることがないし、慣れもありますが、普通の紙と鉛筆に近い感覚で使えますね。手を動かしたフィードバックが板のタブレットよりも直感的で、線を引いている、という感じがします。

―― アニメーターとしては、液晶ペンタブレットは仕事の道具にできると思いますか?
もちろんできます。これで仕事をしてみたいですが、アニメの場合はどこかで紙を経由しないといけないことが多くて、完全にペーパーレスになるのはまだ難しいのが現状です。コピーや移動、拡大縮小も簡単にできるし、デジタルデータならではの使いどころを考えてやれば、すごくいいだろうと思いますね。今のアニメ制作では、撮影や美術はデジタルの恩恵を大きく受けているのに、作画にはないんですよね。

―― 逆に、紙と鉛筆でなければならない理由はどこにあるのでしょうか。
全体のバランスを見ながら細部を描く、ということが核としてあります。画面上だと、拡大すれば細部を描き込めますが、全体は見えなくなって、逆に縮小すれば全体を見ることはできるけど、細部を描くのは難しくなりますからね。液晶ペンタブレットの解像度が紙に近いくらい高くなれば、もっと使えるようになると思います。紙だと自分の描いた動きをチェックするのにクイックアクションレコーダーで撮影して並べてやらないといけませんが、デジタルなら、りょーちもさんがFlashでやっているように何度もトライ&エラーを繰り返しながら作画したり、3DCGと手描き作画を合わせるのにも、タイムラインにCG素材を置いてそのまま描けるので、データにした方が便利なんですけど。これからデジタルの技術が進んでいけば、デジタルとアナログの差はなくなるんじゃないかと思います。

―― 近岡さんの最近のお仕事としては、キャラクターデザインと作画監督を手がけられている、山本寛監督のチャリティーアニメ『blossom』がTAF2012のステージで発表されましたね。
監督とは『フラクタル』の時に席が近かったので、仲良くしていただいて。チャリティーでアニメを作るんだけど、手伝ってくれないかと声をかけていただきました。デザイン的には、dww026_SunaoCHIKAOKA_pic6この作品は「自分の絵」で自分がいいと思うやり方で描くことができました。作品の趣旨としても、売れ線のデザインや萌えを狙うものではないし、山本監督は良くない時は良くないとストレートに言ってくれる人なので、ズレていれば軌道修正してもらえると思っていたので、これがいいと思うものを出して、上手くまとめられているかな、という感じですね。

―― お仕事の上で、今後の目標みたいなものはありますか?
どんな立場でも、自分のスタイルを大事にしていきたいですね。自分がいいと思えるものを、ちゃんと出していこうと。そうすれば自分の進むべき方向性も、なんとなく見えてくるというか。あとは、絵コンテや演出みたいな、お話の面白さの部分にも関わってみたいですね。でも今は、とにかくちゃんと絵を描いていきたい。大きな一枚絵も描いてみたいですね。

―― 最後に、近岡さんにとってペンタブレットはどのような存在ですか?
紙と鉛筆みたいなものですよね。絵を描くために、PCと僕を繋いでくれる、デジタルと仲良くなるためのインターフェースですね。

 
 
dww026_SunaoCHIKAOKA_complete
 

©Bonten/Wacom