2014年03月14日(金)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 025
アニメーター:カヅホ

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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漫画家

カヅホ

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『まんがタイムきららキャラット』(芳文社)2008年1月号より『キルミーベイベー』でデビュー。主人公のやすなと、殺し屋のソーニャが学校を舞台に繰り広げる不思議なノリが熱狂的な支持を集める。デビュー作にして初のアニメ化を果たし、2012年1月よりスタートしたアニメも謎の魅力によって現在進行形で『キルミー』中毒が次々と増殖中。その他、Webコミック「カガクチョップ」(『FlexComixブラッド』掲載)や「コイノボる」(芳文社『まんがタイムきららカリノ』掲載)など4コマ以外の作品でも力を見せ、これまで数々の人気作家を輩出している『きらら』の俊英として注目を集めている。

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dww025_kaduho_pic1―― カヅホさんが漫画家としてデビューされるまでの経緯から伺えますか。
すごく好きな絵描きさんのWebサイトがあって、その人がオリジナル創作系同人イベントの「コミティア」に出ているというので、自分も同人誌を作ってみたいと思い参加するようになったんです。そこで本を買ってくれた編集さんから声をかけていただいたのが直接的なデビューのきっかけですね。

―― 二次創作ではなくオリジナルで同人活動を始められたんですね。
昔から二次創作で何かのキャラを描くということがあまりなくて。漫画やアニメ、ゲームは好きなんですけれど、好き過ぎて自分では描いてはいけないような気がして。だからオリジナルといっても、これが自分の絵だ! という感じの表現ではなく、ある意味、二次創作をするための練習、上手くなって自分の好きなキャラを描くための修行みたいな部分があったかもしれないです。

―― イラストそのものは、ずっと描かれていたんですか?
絵を描くのは好きでしたが、特に意識してイラストを描いていたというよりは、友達を笑わせるために描く落書きみたいな感じで。高校の頃に家でネットを使えるようになって、まだSNSもない時代なので、色々なサイトのリンクを辿って絵を見ていました。

―― 高校卒業後は美術系の専門学校に進まれたんですよね。
何かしらdww025_kaduho_pic2絵に関わる仕事ができたらいいなと思って、短大のアート・デザイン学科から阿佐ヶ谷美術専門学校にすすみました。最初は美大に編入する予定だったんですけれど、調べているうちに自分のやりたいことには専門の方があっていると感じまして。イラストで活躍する卒業生がいる所ならなんとかなりそうだと、漫画やイラストの授業が選択できる学科に入って。何なら学校のコネで適当なデザイン事務所にでも潜り込めれば……みたいな(笑)。
 
―― 本格的に漫画を描かれたのは、同人誌を始めてからですか?
最初はイラスト本だったんですけれど、イベントで知り合った人達には漫画を描いている人のほうが多くて。自分は全く経験が無かったので、漫画は敷居が高いと思っていたんですけれど、みんな気負わずに好きな漫画を描いていたので、じゃあ自分も描いてみようと。

―― その頃はアナログで漫画を描かれていたんですか?
ペン入れまでアナログで、仕上げはデジタルでした。スキャナで取り込んでグレースケールで仕上げたり、Photoshopで自作トーンを貼ってみたいなことをやっていて、雑誌連載が決まって初めて漫画用のソフトを買って、COMIC WORKSを使っていました。同人誌ならグレースケールで刷って少し黒かったりしても、自分が良ければいいんですけれど、やはり誌面だと気を使うので……。

dww025_kaduho_pic3―― ペンタブレットを使い始めたのは?
ペンタブレットは、初めて同人誌を出した時より前から持っていたんです。ネットのお絵かき掲示板に参加するのに、マウスでなくペンで描き込みたいと思って。FAVO(F-630)を買って、それをいまでもアシスタントさんの仕上げ作業用に使っています。

―― カラーを描く時はどのようなツールを使われていたんですか?
Photoshop 5とかそれくらいですね。ただ、当時使っていたPCが専門学校で上京する時に父が安く入手してきてくれた古いPowerMac G3だったので、いつも軽いPhotoshop Elementsのほうで作業していました(笑)。メモリが全然足りないので買いにいったら、もう対応メモリが置いてなくて。お店の人に「え?」みたいな顔をされました……。そのMacが本格的に壊れてしまい、買い換えた日立の一体型Windowsマシンで描いた同人誌が、デビューのきっかけになった本です。

―― 最初に編集さんから連絡があったときは、どのように思われましたか。
コミティアで買った本が、編集さんがやってもらいたい事にすごく合っているというメールをいただいて、それが自分でも知っているような出版社だったので、すごく驚いて。最初は嘘なんじゃないかと思ったんですけど(笑)、即返信して芳文社まで打ち合わせに行きました。

―― 最初から4コマギャグをやってほしいということだったんですか。
その時の同人誌は4コマではなくて、自分ではギャグのつもりもなかったんですが、なぜかそういうことになっていて。なんでなんだろうと(笑)。

―― デビュー作になる『キルミーベイベー』の企画はどのように作られたんですか?
最初に、練習としていくつかプロットを出して描いてみようと言われて、その中の1本が『キルミーベイベー』で。その頃はまだ名前もなくて殺し屋が出てくるだけの話だったんですけれど、これがいいと。それでネームを描いてみたら、編集さんに「思っていたより描けているので、最後まで仕上げて完成させよう」と言われ、それがそのまま『まんがタイムきららキャラット』に掲載されることになって。

dww025_kaduho_pic4―― 練習として描いたはずの作品が、そのままデビュー作で初連載になったんですね。
最初は連載ではなく読切で、そのまま半年くらい「不定期掲載」という形で毎月載っていたんですけれど、第8話くらいでようやく「新連載!」となって。「毎月掲載されてるのに連載じゃなかったの!?」って(笑)。

―― いきなり第1話から何の説明も無しに教室に殺し屋のソーニャがいたりするのが面白いです。
描いた時は連載になるとは思わなかったから、インパクト優先で(笑)。でも、最初は今みたいなギャクではなくて、きらら作品の中に溶け込めるような日常系でいこうと思っていたんですけれど、他の作品が上手い人ばかりなので、何か変なことでもやらないと生き残れないと思って。初回のアンケートもあまり良くなかったので、どうせ消えるならせめて爪跡だけでも残してやろうと思い切ってギャグを描いたらそれが好評で。それがそのまま芸風になってしまったので、いまさら日常系には戻れないかと……。

―― やすなとソーニャの漫才度合いがだんだん上がってきていますが、ネタはどのように作られていますか。
自分が面白いと思うネタを描くよりは、『キルミーベイベー』を好きな読者なら、これを面白いと思ってくれるんじゃないかというネタを考えて描いている感じですね。よく、お笑いが好きなんですかと聞かれますが、特に何かを参考にしたりすることはなくて、本当に自分の中でボーっとネタを考える感じですね。

―― 基本は毎回、軸になるテーマがあってそれを15本の4コマで描いていく感じですよね。
連載を重ねてからはキャラクターが固まっているので、そのテーマだったら二人はどんな掛け合いをするのかを考えて、そこから面白いものを描き出していく感じですね。

―― よく言う「キャラが動きだす」というやつですか。
それもありますが、そこから面白くなる方向に、ある時は理論的に、あるときは思いつきで作っています。1話につき15本あるので、その中でパッと思いついたり、つじつま合わせのネタもいれたり。そこは合理的に考えないと繋がらないので、1本ずつのネタの出し方は結構違っているかもしれない。

dww025_kaduho_pic5―― 現在の作画環境はどうなっていますか?
いまはフルデジタルで、ネームから仕上げまで全部Cintiq 21UXでやっています。 PCはDELLスタンダードデスクトップ Inspiron 580 で、資料を映したりメール用にもう一台液晶モニターを置いてます。ツールはComicStudioですが、最近はカラーでもComicStudioを使っているんですよ。アニメ塗り的なものを求められるので、色分けだけならComicStudioでできて、そのままPSDで書き出せるので。だから簡単なキャラ絵であればComicStudioで仕上げてしまいます。

―― ペンタブレットを使う上でなにか工夫されていることはありますか?
保護フィルムを貼っているくらいですが、安いフィルムを探して貼ったらサイズが足りなくて。めんどくさがりでモノがダメになるまでは替えなかったりするので、フィルムのある範囲だけ使って描いているんですけれど、ときどきフィルムの段差に引っかかって線がずれたりするんです(笑)。ペンは、サイドスイッチを使わないのでスイッチなしのグリップにして、ハードフェルト芯を使ってます。評判を聞いて使ってみたらすごくよくてそのまま。

―― ショートカット類はどうしていますか?
Cintiqのトラックパッドに拡大縮小を割り当てて、あとは左側のキーに良く使うCtrlと保存や選択、ペンや消しゴムツールのショートカットを登録して左手だけでできるようにしています。

―― 連載1回分はどれくらいのスケジュールで作業されるんですか?
打合せから作画までだいたい半月くらいなんですけれど、最近はアニメや単行本の作業が忙しかったので、ネタ出しも含めて4~5日とかそういうペースで……自分の中で何か壁を破ったんじゃないかと(笑)。

―― アシスタントさんは使われているんですか?
仕事のペース的に「このままでは間に合わない!」というときに仕上げだけ手伝ってもらう感じで、それこそあと2時間早く完成できたら入稿に間に合うとかそういうシリアスな状況でヘルプ的に入ってもらっているので、毎回ではないですね。普通のペースだったら1人で出来てしまうかもしれないですけれど、アシさんにお願いすることで時間が短縮されて、その分、他の作品にも取り掛かることができるなら、レギュラーで使うことはあるかもしれません。緻密な作画をする人から見たら、お前こんなのでアシスタント使いやがってと言われそうですけど(笑)。

―― 『キルミーベイベー』は放送中のアニメも好評ですが、アニメ化の話を聞いたときはいかがでしたか。
打合せの時に担当さんから「今日は話があります」と言われて。実は以前にも話があって、その時もびっくりして喜んだんですけれど流れてしまったので、今回も「本当か?」って疑っていましたね(笑)。

dww025_kaduho_pic6―― 原作者として企画会議や本読みにも参加されたんですか?
かなり関わっている方だと思います。作品的にもどうアニメにするか迷っていたみたいで、できるだけ意見をして欲しいといわれて。もちろんアニメにはアニメのやり方があると思いますが、ちゃんと自分の意見も採用してもらえるので、行ってよかったなと。

―― すごく原作の空気感が大事にされていますよね。作画も音楽も豪華スタッフで驚きました。
音楽の力の入れ具合は謎ですよね。EDのキルミーダンスもちゃんと動いてますし。単行本(第1巻本体表紙)に描いたときはぜんぜんそんなつもりはなくて、むしろ踊りが繋がってないから面白いと思っていたのに(笑)。踊って動画にする人までいて、「やれるんだ!」って。

―― 「没キャラ」がちゃんと拾われていたりするのは、原作愛を感じます。
脚本案の段階では「没キャラ」メイン回もあったんですけれど、やりすぎると「没キャラ」でなくなって「採用キャラ」になってしまうので、担当さんと話した結果無しの方向に(笑)。

―― 実際、アニメ化されたものを見ていかがでしたか。
恥ずかしかったですね。アフレコの時に、もう声だけで恥ずかしかった。台詞のイメージも音響監督さんから聞かれて自分が選んだほうが実際に放送されていましたし。あぎりの台詞はアニメだと伸ばして発音しているんですけれど、影響されてネームも伸ばして書くようになってしまいました。

―― 周りの反響はいかがでしたか? 急に親戚が増えたとか。
ちょっと期待していたんですけれどありませんでした(笑)。知らない友達が増えるとか、急にモテモテになるとかはなかったですね。イベントで色々な絵描きさんがご挨拶してくれたり、仕事のコンタクトをいただけるようになったのは嬉しいですね。

―― これからお仕事でやってみたいことというのはありますか?
いまも十分によくしてもらっているので、野望というほどのものはないんですが、ウケないかもしれないけれど、ただ自分が好きで面白いと思っているようなものを描いてみたいです。

dww025_kaduho_pic7―― 商業では描けない作品は、同人でやるという考え方もありますが、カヅホさんにとっては同人はどのような位置づけなんですか。
普通に趣味として。もちろん商業ではできないこともやっているんですけれど。ドライにみえるかもしれませんが、商業の仕事は求められるものを出すことだと思って描いているからそれでフラストレーションがたまることはないので、同人は同人でまったく関係なくやっています。

―― 変わったところだと、最近、立体造形イベントのワンフェスにディーラー参加されていましたね。
昔から立体に興味があって、いつか何かを作って発表したいなというのがありまして。本当は自分の絵を立体化したフィギュアを作りたかったんですけれど、やはり難しくて……。出るだけでも一回出てみようと思って、もともと趣味で作っていた「チーズサイコロ」が好評だったのでこれを売ってみようと。隣のブースの造型師の方がすごくアイデアを褒めてくれたので、「これを売ってよかったんだ!」と。これからも出るつもりです。

―― 最後に、カヅホさんにとってペンタブレットとはどのような存在ですか。
Cintiqを使うようになって線が綺麗になったと言われたので、今では手放せないものです。他の人にも薦めたいですね。
 
 
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©Bonten/Wacom