2014年03月17日(月)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 024
イラストレーター・漫画家:TNSK

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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イラストレーター・漫画家

TNSK

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2009年よりイラストレーターとして活動をスタートし、現在はhukeによるオリジナルキャラクターが原作のゲーム『ブラック★ロックシューター THE GAME』のコミカライズを『コンプティーク』(角川書店)で、Webコミック『時ドキ荘!』を『週アスPLUS』で連載中。『季刊GELATIN』『ゆきひめ』(ワニマガジン)やライトノベル『爆熱天使Xサン』(日日日/角川スニーカー文庫)『放課後あいどる』(鴨志田一/ガガガ文庫)のイラストの他、CDジャケットや雑誌『SMART』での「ももいろクローバーZ vs 村上隆」コラボイラストなど幅広い活躍をみせる新進気鋭のクリエイター。

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dww024_TNSK_pic1―― いきなりですが、ペンネームの由来を教えてください。
関東ではあまり売っていないんですけれど、「ポンスケあまから」というお菓子が好きで。それにイニシャルの「T」を足して「タンスケ」にして「箪笥家」と書いていたのを、音の頭だけとって「TNSK(ティーエヌエスケー)」になったんです。

―― なるほど! では、TNSKさんが絵を描き始められた経緯は?
大学の油絵科で抽象画を描いていたんですけれど、同じ大学で、今もサークル仲間のイラストレーター・saitomの家で酔っ払って皆で絵を描いた時に『ヴァンパイアハンター』の絵を描いたら「上手いじゃん」と乗せられて、それで勘違いしちゃったんですね。「さぼうる」というポータルサイトからお絵かき掲示板に行って、そこで描き始めるようになったんです。投稿すると何人かは反応してくれるのが嬉しくて、見よう見まねで自分のサイトも作りだして。その頃に画像投稿サイトのpixivができて、上手い人達がランキングになっているのを見て火がついて、頑張って描くようになったんですね。

―― 元からマンガ的なイラストを目指していたわけではないんですね。
古典のゴヤとかモネ、ゴッホに憧れて、「油絵を描きつづけて死ぬ!」みたいに思っていました。大学で学んでいた芸術の世界は、文脈というか、絵に説明がなければいけないのに対して、イラストの世界は「かっこいい」「かわいい」で済む感じがあって、その単純さが逆に新鮮だったんですね。昔はアニメやマンガは普通に見る程度で、むしろ「オタクめ!」くらいに思っていたんですけど、『エウレカセブン』にハマってからアニメも観るようになりました。吉田健一さんの絵がオタク的ではなくかっこよく感じたのと、作品もロボットもので美少女じゃないから入りやすくて、自分の中にある「萌え」の気持ちを上手く誤魔化せたというか(笑)。

―― ご自身でもイラストを描かれるようになって、影響を受けた作家さんはいらっしゃいますか?
挙げていくとキリがないんですが、okamaさん、放電映像さんに始まり、宇木敦哉さんに衝撃を受けたという感じですね。宇木さんは『センコロール』のトレーラーとイラストで、背景がベタ塗りだったりするのを見てすごくスタイリッシュでかっこいいなと。

dww024_TNSK_pic2―― 初めてお仕事として絵を描かれたのは?
pixivで依頼されてイベントのフライヤーを描いたのが最初ですね。その時に依頼をくれたのが、サークル「壁の彩度」代表のyoukissです。大学を卒業してフラフラしていたんですけれど、「絵を描かなきゃいけないんだ」という謎の使命感はあって。何かに繋がるわけでは無かったんですが、必死で描きました。その頃の絵を観ると、これでやっていけるわけがないと思うんですけれど、謎の自信だけはあって。今思うとすごく怖いですね(笑)。暇はあったので、描き続けているうちに、少しずつ、『センコロール スタートブック』『pixiv年鑑』などのお仕事をいただけるようになりました。

―― 『時ドキ荘!』で漫画のお仕事もスタートされています。
レギュラーの仕事なので、これは逃したくないと思ってやったのはいいんですが、携帯コミックとはいえ、初めての漫画で全然描けなくて。最初のほうは担当さんに怒られながら描いていました。単行本も出せて、連載もWebになったのでよかったなと。

―― レギュラーのお仕事は大きいですね。これでやっていけるという実感があったのはいつ頃ですか?
『爆熱天使Xサン』(日日日/角川スニーカー文庫)で憧れだったライトノベルのお仕事をしたのと、ずっと読んでいた『ROBOT』(ワニマガジン)の後継誌『季刊GELATIN』に載れた時ですね。ここに載れたらすごいんだという思いがあって。そうそうたる面子に囲まれて掲載されて、これでプロとしてやっていけるかもしれないと思えたんですね。
『GELATIN』に載った後に一瞬、ふわっと落ちて「次どうしよう」と悩んだりもしたんですけれど、すぐに新しい目標ができて頑張れるようになりまた。そこからは「食べていけるかどうか」ではなくなりましたね。

―― 最近ではライトノベル『放課後あいどる』(ガガガ文庫)のイラスト、そしてdww024_TNSK_pic3『コンプティーク』(角川書店)で連載中の『ブラック★ロックシューター THE GAME』(原作:huke/イメージエポック)のコミカライズなど、多様なお仕事をされていますが、漫画とイラストでは意識は違いますか?
全く別物ですね。漫画は自己表現の部分がすごく強くて、あまりエンターテイメントできない部分があります。イラストと違って語らないといけない世界というか、考えて考えて考えるような描き方をしています。ラノベのイラストみたいな、魅力的なキャラクターに絵を付けていく作業というのは楽しいので、わりと悩まずに描けるんです。
まだ「ラノベで大活躍!」という感じではないので語れる程でもないですが、とにかく最初から「何でも描ける」ことを目指していたので、制服やファンタジー、メカに萌えとどんなオーダーにも対応できるようにしたいですね。

―― オタク的な文脈に踏み込むのが遅かったぶん、インストールしないといけない知識も多かったんじゃないですか?
そうですね。でも、どうしても自分の絵柄にはなるので、これまでの文脈を完全にトレースするのではなくて、一度、自分に落とし込んでから出す感じですね。ある程度は自分風に料理しても、オーダーを外さないものを出せるというか。イラストは、楽しい部分と仕事の部分を両立させやすいんです。ここをこうしてください、といわれて「直せません」ということがないんですが、マンガだと、自分と向き合って表現する部分が大きいので、抵抗があったりします。

―― 音楽家の高木正勝さんから名前を取ったオリジナルキャラクター「高木さん」をよく描かれていますが、音楽や芸術作品からインスピレーションを受けることは多いですか?
イラストは「落とし込む」作業だと思っていて、イラストを観てイラストを産むよりも、全く違うところからコンセプトを持ってきて、その新しい部分を見てくれる人にどうわかりやすく伝えるかというのに面白さがあるんです。イラストの世界のシンプルさに惹かれつつ、そこにバックボーンがあるとやっぱり楽しい絵になるかなと。

―― 実際のところ「萌え」もすごくハイコンテクストな世界ですからね。
そうですね。未だにギャルゲーには詳しくないので、周りで語っているところに入っていけない悔しさがあります(笑)。

dww024_TNSK_pic4―― 西島大介さんの『ひらめき☆まんが学校』や『ユリイカ』、ももいろクローバーZと村上隆さんとのコラボなど、どちらかといえばサブカル寄りのお仕事もされていますよね。
元々、サブカル的なものは好きだったので、関われるのは嬉しいですね。普通に芸術を続けていても村上隆さんとは絶対に会えていなかっただろうし、不思議なめぐり合わせですね。

―― イラストを描き始めた時からお絵かき掲示板というデジタル環境にいたわけですが、最初にペンタブレットを使われたのは?
最初はマウスで塗っていて、半年くらいでIntuos3(PTZ-431W)を買ったんですけれど、お絵かき掲示板のツールではあまりよさが分からなくてPhotoshopを購入して初めて、筆圧感知の凄さを実感して「ペンタブレットってすごい」と思いました。非純正のステンレス芯を使っていたらだんだんタブレットの板が削れてきたので、Intuos4のmediumに買い替えました。Intuos3のサイズ感覚がとれずに、Intuos4でも一部分だけ使って小さいストロークで描いていますが、手に力をいれなくでも狙った細さで綺麗な線が描けるようになりました。

―― 油絵とデジタルの作画環境を比較して感じることはありますか?
油絵を描いてはいたんですが、やり直しが効かないのが嫌で。ビビリなので塗り重ねていくうちに今より悪くなったらどうしようと手が出せなくなってしまうんです。デジタルなら冒険ができるので、自分は完全にデジタル向きですね。これがなければまず絵描きになろうと思わなかった。
僕は描きながら試行錯誤するタイプではなくて、完成まで見えてから初めて線を描くんです。そこからの作画プロセスでは失敗ができないので、デジタルでなければやっていけないなと。

―― 現在の作画環境はどのようになっていますか?
24インチのiMacでIntuos4 mediumを使っています。ツールはPhotoshop CS5です。あまりショートカットは使わずにメニューから操作しているので、よく使う拡大・縮小とかだけキーボードを使っています。わりとシンプルですね。
漫画もComicStudioで最初から最後までフルデジタルですね。下描きレイヤーも使わずに、普通にペンでネームを描いて編集さんに渡して、透明度を下げてペン入れしていきます。紙は全く使いません。

―― 2月には、初のストーリー漫画『ブラック★ロックシューター THE GAME』の単行本第1巻が出ますね。
月刊連載で、dww024_TNSK_pic5毎月辛いですね(笑)。コミカライズですが、有難いことに、本筋さえ押さえていれば、あとは自由にやらせていただいてます。新納一哉さんのネーム監修も入っているんですけれど、「面白いですね」といってもらえるので、コンシューマーゲームでは表現が難しい部分などを描いていきたいと思っています。
『ブラック★ロックシューター』という作品は本当に自由で、「B★RS」という括りの中で色々な作品が生まれて広がっているんですけれど、割とヒネった世界観で、真正面からドーンというものが無いので、分かりやすいもの、愛とか友情とか人間味溢れる感じの熱い「B★RS」を描いていきたいんです。「B★RS」は超越的というか、クールでスタイリッシュなキャラのイメージなので、ファンの人がどう感じるかは分からないですが、これがTNSKの思う「B★RS」なんだと。

―― 作画的には、すごくベタで見せる感じの描き方をされていますね。
始めるときに、あまりトーンを使わないようにしようと。色々ある『ブラック★ロックシューター』の中でも「ホワイトロックシューター」というキャラが登場するのは『THE GAME』だけなので、白と黒の対比を押していこうと思って。これからグレイというキャラクターが登場するんですけれど、彼女にはトーンを使うといった感じで。

―― そういうコンセプトがあったんですね。月刊連載のお仕事はどれくらいのスケジュールで作業されているんですか?
ネームから作画まで1週間くらいです。ネームはだいたい1日でできるので。物語の着地点が決まっていて、ページ数も決まっているので、あとはどう割り振るかという感じで、最初に大体決めているのでそんなに苦労していません。作画も自分だけですが、今度、読切り作品も描くので、さすがにアシスタントをいれるつもりです。
1枚絵の場合は、表紙やジャケットだと1日はほしいですが、普通は半日くらいですね。色々、振っていただくお陰で速さだけは伸びました。

dww024_TNSK_pic6―― かなりの作業スピードですね。
今月も、毎週の『時ドキ荘!』4コマ連載と月刊の『ブラック★ロックシューター THE GAME』、あと読切のネームとCDジャケットにキャラクター絵、それからラノベの表紙と挿絵にトレーディングカードがあって……。断らないのが悪いんだと思うんですけれど(笑)。まだ〆切は一度も破ったことがないというのを支えにやっています。周りが上手い人ばかりなので、せめてそれくらいはちゃんとしようと。それで次も頼もうと思っていただければ嬉しいです。

―― それだけ仕事をされながら、サークル「壁の彩度」での同人活動も積極的にやられていますよね。
年に4冊出しています。仕事とは違って本当に自由にできますし、本が作れる、装丁ができるのが楽しいというか。普通の書籍だとやはり内容やデザインに縛りがあるので。箔押し印刷とかが使えるのも、本になったとき凄く楽しいですね。

―― デビューから約2年、かなりのペースで色々なお仕事をされるようになっていますが、これからやってみたいことはありますか?
やはり自分がデザインしたキャラクターが動くところを見てみたいですね。アニメでもコンシューマーゲームでも。自分では動画までは手を出せなかったので、キャラクターデザインはひとつの夢です。
漫画もオリジナルを描いていきたいですね。今は『ブラック★ロックシューター』の胸を借りてやっているので、これから描ける機会を増やしていければと思います。

―― 最後に、TNSKさんにとってペンタブレットとはどのような存在ですか?
もはやIntuosこそが絵筆そのものですね。先日、GAINAXのイベントで展示するポスターを描くのに久しぶりに筆を持ったんですけど、初めてペンタブレットを使ったときのような違和感があって。普通は、いかにデジタルでアナログを再現するかを考えると思うんですけれど、アナログで描くときにいかにデジタル作画に近づけるかと考えるという、感覚的に「アナログとかマジでデジタルだわ~」みたいな謎の逆転現象が起きていますね(笑)。
 
 
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