2014年03月21日(金)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 023
漫画家・イラストレーター:水あさと

dww_readimage

イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

dww023_MizuASATO_prof

漫画家・イラストレーター

水あさと

asato mizu

2007年に『正義の覆面マフラージャスティス』で第6回少年シリウス新人賞入選。同年『世界征服セキララ女学院』(講談社シリウスコミックス/1~3巻)で連載デビュー。2011年12月現在は『月刊コミック@バンチ』(新潮社)で『めいなのフクロウ』を、『月刊コミックフラッパー』(メディアファクトリー)で『デンキ街の本屋さん』をそれぞれ連載中。サークル「ミルメークオレンジ」として同人活動も行い、コミティアを中心に精力的に作品を発表し、同人で発表されるオリジナル作品でのファンも多い。

dww_title023

dww023_AsatoMIZU_pic1―― 水あさとさんが漫画家になられた経緯から伺えますか。
子どもの頃から落書きするのが好きで、ずっと誰に見せるでもなくノートに絵を描いたりしていました。漫画やアニメも好きで観ていましたが、地元の沖縄では放送も少なくて、そういう仲間もいないので、周りに隠れてこそこそと観ていました(笑)。『おじゃ魔女どれみ』にハマったのと同じ頃にインターネットを使い始めて、お絵かき掲示板で絵を描くようになりました。それが描いた絵を人に見せるということの始まりですね。

―― 同人誌みたいなものには触れていなかったんですか?
その頃は存在すら知らなかったくらいで、大学進学で東京に出てきて初めていった秋葉原の「とらのあな」で同人誌というものを知って。こんな素晴らしいものがあるのかと。それで漫画を描き始めたんです。

―― それでイベントにも参加されるようになったんですね。
お絵かき掲示板でもそうだったんですが、自分で描いたものを人に見てもらえるのはすごいなと思ったんです。当時は二次創作をやるという考えがあまりなかったので、最初はコミティアに参加しました。イラスト本だったんですけれど、完全に下手な本だったので全く売れませんでしたね(笑)。

―― 大学は美術系だったんですか?
本当は美大に行きたかったんですけれど、学費もかかるし、美大受験には高校の最初の頃から準備しないといけないのに気づいたのが遅かったので……。教育学部の図工科という、少し美術寄りの学科に進みました。

―― 上京されてからはWebと同人で絵を発表されていましたが、そこから商業で漫画を描かれるようになったのはどのようなきっかけで?
同人活動を続けているうちに、大学を辞めたんですよね。それで、とりあえずバイトをしなきゃと思ったんですけれど、やはり絵に関する仕事をやりたいなと思って、コミティアの出張編集部に原稿を持ち込んで、アシスタントの仕事を紹介してもらいました。

―― どちらの編集部だったんでしょう?
色々なところに持ちこみをして、講談社の『月刊少年シリウス』の編集部だけ返事をいただけたんです。そこから、アシスタントをしながら自分の作品を描いていって『正義の覆面マフラージャスティス』で第6回少年シリウス新人賞をいただいてデビューできました。

―― そのまますぐに『世界制服セキララ女学館』で連載をスタートされたんですか。
受賞から1年弱の準備期間を経てからでした。初連載はわからないことだらけで、やはり難しかったですけれど、描いていてすごく楽しかったです。最初は1人で描いていたんですけれど、途中から手伝いのアシスタントさんにも入ってもらって。連載をするようになって、他の編集部からも声をかけていただいたり、コミティアでスペースに来てくれた方に「読んでいます」といわれたりして、すごく嬉しかったです。

―― 漫画家として本格的にお仕事をされるようになり、初連載作品も単行本3巻まで出て、次のお仕事は。
同じ講談社の担当編集さんと新しい作品を考えていたんですけれど、それが連載に結びつかず、以前から声をかけていただいていた『ヤングジャンプ』別冊の『アオハル 0号』(集英社)で読みきりを描いたり、連載にはならなかったんですが『まんがタイムきらら』(芳文社)で描いたりしつつ、アシスタントの仕事もしていました。

―― その後、『月刊コミック@バンチ」で『めいなのフクロウ』が連載スタートします。
『セキララ』dww023_AsatoMIZU_pic3の連載直後からお話は頂いていて、その時は雑誌のイメージ的には「自分がバンチで?」と戸惑いましたね(笑)。『めいなのフクロウ』は編集の方と「可愛いものを描こう」ということで、いままでにないような動物ものを考えて、フクロウに着地しました。

―― さらに『月刊コミックフラッパー』(一迅社)で『デンキ街の本屋さん』がスタートします。どこかで聞いたことがあるような名前の書店が舞台ですね。
(笑)。最初に編集の方が「本屋もの」をやりたいといわれて、それなら同人書店を描きたいですといって。連載当初は取材には行っていないんですが、この前「とらのあな」さんでサイン会を初めてやらせていただいて、その時に裏側も見せていただきました。『デンキ街の本屋さん』の単行本には同人誌をつけたいと思っていたのも承諾していただいて、店舗特典でB5サイズの同人誌もつけてもらえました。メロンブックスさんにも挨拶にいったら、いつでも来てくださいとありがたいお返事を頂いて。

―― その他では『コミック アース・スター』で魔法少女料理ものの読みきり『マジカルシェフ少女しずる』など、女の子主人公の作品が多いですが、内容はバラエティーに富んでいますね。
最初は少年漫画が描きたくて、デビュー作も少年漫画だったんですよね。アシスタントをしていた時にも、少年漫画いいなあと。でも連載をするときに、担当の方から「君は女の子を描いたほうがいい」といわれて。

dww023_AsatoMIZU_pic4―― すこし変わったお仕事としては『中学生のための人気作品で学ぶやさしい文章読解』(学研教育出版)という参考書の表紙を手がけています。
カラー表紙と冒頭の漫画を描きました。『めいなのフクロウ』を見てメールで打診を頂いて。中学生向けのふつうの参考書なので、書き文字も正確じゃないといけなくて、ハネの部分を指摘されたりしたのは大変でしたね(笑)。最初に台詞だけの原作をいただいて、それをネームにして、普通の漫画のお仕事とあまり変わらずにやれました。

―― お仕事と並行してオリジナルと二次創作の同人誌も続けられていますが、オリジナルの同人誌は、仕事の読みきり作品と違う部分はあるんですか?
やはり、その時に自分が描きたいものを描くというところですね。読みきりをもっと描きたいなと思っていて。商業誌ではどうしても時間がかかったり、自分の描きたいものだけでは完結しない部分もあるので。

―― コミティアに出されていたオリジナル同人誌『ファミレスの住人』はネットでも反響が大きかったですね。
オリジナルだったら何を描いてもいいというのがすごく居心地いいですね。本を見る目は結構厳しいんですけれど、ちゃんと漫画を読んで買ってくれる方が多いので、評価していただけると嬉しいですね。

―― 月刊連載を2本やりながら、読みきりや同人誌を描かれていますが、どのようなスケジュールでお仕事をされているんでしょう。
だいたい月の後半に『めいなのフクロウ』のネームを描いて、月頭くらいまでに作画を終わらせます。dww023_AsatoMIZU_pic6その後『デンキ街の本屋さん』のネームに入って、それが1週間くらいで終わるので、だいたい3週目くらいには原稿を上げます。その合間に、他の読みきりや同人誌を描いたりしますが、さすがに単行本の作業が入るときは大変ですね。ネームで1週間、作画で1週間くらいのペースだと理想的なんですけれど、最近は、なかなか時間がとれずに2日くらいでネームを描いています。

―― ネームで悩んだりは?
それほどないです。だいたい話が浮かんだらすぐなので、ファミレスで12時間ほど詰めれば。ぼんやりとしたアイデアは普段から書き留めておいて、それを上手くまとめる感じで。長いと14時間くらいですが、短いと6時間くらいで終わりますね。ネームはいっぺんに描かないと気がすまないので。作画の方が時間がかかります。

―― 原稿のワークフロー的にはどのような感じで進めるんですか?
ファミレスでA4のコピー紙に描いたネームを、スキャンしてメールで編集部に送って、OKがでたらそれをComicStudioに取り込んで、上から下描きをして、ペンを入れて。完成した原稿をデータで送ります。

―― ComicStudioはいつ頃から導入されたんですか。
最初の連載が始まってしばらくしてからです。最初はトーンだけPhotoshopにPowerToneプラグインをいれてやっていました。

―― アシスタントをされていた現場はアナログ原稿ですよね。自分の仕事場でデジタルを導入した理由はあるんですか?
その時期に、すごく描くのに慎重になっていて、紙に描いた下書きをPCに取り込んで修正して、それを原稿用紙に水色で印刷してからその上にペン入れしていたんですよ。そこまでするなら最初から下描きもPCでやったほうがいいんじゃないかと。あとは、やはりトーンを貼るのが大変なので。それ以降はフルデジタルです。

dww023_AsatoMIZU_pic5―― PCはどのようなものを使われていますか。
最近、Core i7の速いWindows7搭載PCを買ったんですけれど、トラブル続きで仕事のないタイミングで修理に出そうかと……(笑)。RAMは8GB積んでいて、モニターはDELLの24インチとNECの21インチを使っていて、24インチのほうに資料を映しながら21インチで作業をしています。ペンタブレットはA4サイズの初代intuos i-900を使っています。

―― 初めてペンタブレットを使われたのは、お絵かき掲示板の頃ですか?
最初はマウスで描いていたんですけれど、掲示板の人達がみんなペンタブレットを使っているというので、色々調べたら、ちょうどintuosが出始めの頃で。それで思い切って買いました。最初はB5サイズのi-600を買ったんですけれど、自分が使っているのをみた父親が便利そうだなと言ってi-900を買ったんですよ。そしたら持ち運びにくいから交換してくれといわれて、それ以来ずっと初代intuos i-900を使い続けています。

―― お父さんは絵を描かれる方なんですか?
絵を描くのが好きで、仕事で図面を引いたりすることもあるので。それで父親のPCにPhotoshopなんかも入っていたので、最初はそれを使ったり、intuosについてきたPainter ClassicとマイナーですがMicrographics(現Corel )のPicture Publisherというツールを使って描いていました。
その後、大学の研究室でPainterを使うようになって、軽く塗る時はPhotoshopで、がっつり塗るときはPainterという感じで使い分けていました。SAIが出てからはカラーはSAIを使うようになっています。大学ではアクリルや油彩、水彩もやっていたんですけれど、どうしても手間がかかるし、量を描くと大変なので、やはりデジタルがいいなと。

―― カラーを描くときもラフは紙に描かれるんですか?
そうですね。紙の上でイメージを整えて、PCで下描きから。あとは完成までSAIで、色調補正やグラデーションの処理にPhotoshopを使ったりします。カラーバランスをよく使うので、色をいじるのはPhotoshopの方が便利ですね。

―― ペンタブレットを使う上で、サブデバイスを使ったり、何か特別な工夫はありますか。
ショートカットはキーボードです。intuosの表面には摩擦を高めるためにコピー用紙を置いて使っています。芯はフェルト芯を使っていて、鉛筆に近い描き味になりますね。ペンの摩擦は強くしつつ、手は滑りやすくするという。使っているうちに芯も紙もツルツルになってくるので、それが換え時ですね。あとは、初代intuosのペンは細いので輪ゴムを巻いて持ちやすくしています。

―― これから先、やってみたいお仕事などあれば教えてください。
ライトノベルの挿絵とかですね。漫画だとずっとモノクロ原稿を描き続けるので、カラーをやってモノクロも描いてというのが。あと、他の人が描いた物語を自分なりに解釈して絵を描いてみたいなあと。キャラクターデザインもやってみたいです。

―― キャラクターデザインは作品の世界観に寄る部分が多いですからね。
いま描いている漫画が現代ものなので、ファンタジー要素があるデザインもしてみたいなと。ファンタジーの話がなかなか思いつかなくて、同人誌でも描けないので。

―― 現代ものが多くなるのは何故なんですか。
時間がないからです(笑)。dww023_AsatoMIZU_pic2制服キャラが多いのも、デザインするのが楽だからなんです。私服だとけっこう大変なんですけれど、制服なら、普通の制服に少し崩した感じの要素を入れるだけでも様になるので。一応、連載では時間をとってキャラクターデザインをしているんですけれど、読みきりや同人誌で、その都度ゼロからデザインするとすごく手間がかかってしまいますから。

―― 趣味と実益を兼ねた制服(笑)。ある意味で二次創作は普段描けないものを描く発散の場かもしれないですね。
ファンタジー的な作品も、頭の中では構想しているのでいつか描いてみたいです。

―― 最後に、水あさとさんにとってペンタブレットとはどのような存在でしょうか。
絵を描く上で無くてはならないものですかね。ずっと一緒に絵を描いてきたので。もう10年以上同じものを使い続けていますから。
 
 
dww023_AsatoMIZU_complete
 

©Bonten/Wacom