2014年03月24日(月)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 022
イラストレーター:雨色

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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イラストレーター

雨色

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pixivやTINAMIといった画像投稿サイトやボーカロイド楽曲のPVでのコラボなどを中心に活動する、ネット世代の「絵師」のひとり。注目のイラストレーターを集めた画集『絵師100人』(BNN新社)に掲載された他、漫画家のゆうきまさみがキャラクターデザインをしたインターネット社のVOCALOID3『Megpoid Sweet』のパッケージイラストのカラーリングを担当。透明感のある色彩と、厚塗り風のタッチで描く可愛らしいイラストにはファンも多い。

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dww022_Ameiro_pic1―― 雨色さんが絵を描き始められたのはいつ頃からですか?
小さい頃から、気が付けばお絵描きをしているような子でした。保育園の先生とかお姫様とか、人間を描いていたことが多かった気がしますね。描くことが楽しいという流れのまま、今に続いている感じです。

―― 漫画やアニメのようなイラストを描くようになったのは?
小学生の高学年くらいになってからです。地元ではほとんどアニメが放映されていなかったし、漫画も積極的に読む方ではなくて、そういう絵のジャンルがあることくらいしか知らなかったんですけど。クラスメートに当時から早くも同人活動をしている子がいて、その子に教えてもらって描き始めた感じです。

―― それまでは、あまりそういった絵を描かれることはなかったんですか?
友達に「これ描いてみてよ」と頼まれて描く感じでしたね。ジャンプ系の漫画をすすめられて読んだりして、よくわからないまま模写したり。友達からは他にもゲームなど、色々教わりましたね。中学生の頃には地元の小さな即売会にも連れていってもらいました。「こういう世界があるんだ」と衝撃を受けたのを憶えてますね。

―― 雨色さんにとって、特に思い入れのある作品というのはありますか?
PlayStation用ソフトの『ゼノギアス』(スクウェア)ですね。友達に「このゲームのキャラクターを描いてと言われて、ソフトを借りて始めたら、まんまとハマってしまって。初めて自力で最後までやり切ったゲームだったので、思い入れは強いですね。この絵を描いている人は誰だろうというところまで気になって調べて、それから田中久仁彦さんをリスペクトするようになりました。他には『サモンナイト』も好きで、キャラクターデザインをされていた黒星紅白さんに行き着いて。厚塗り風の絵に惹かれていたんだと思います。

―― 当時だと『FINAL FANTASY VII』が人気でしたよね。
dww022_Ameiro_pic2『FF』シリーズも借りてやっていたんですけど、全然ハマれなくて、途中で投げてたんです。弟がやっているのを横から見て「ふーん」と(笑)。こういうものなんだ、と思ったくらいですね。基本的にそういった「世間でイチオシ!」といった波には乗らないで、脇を通ってきた感じなんです。友達がみんなワイワイやっていても、流行っていると聞くと一歩引いちゃうところがあって。よく「冷めてるね」と言われます(笑)。

―― その頃は、アナログで描かれていたんですか?
カラーでは水彩とか色鉛筆、コピックあたりを使っていましたが、ほとんどは色をつけずに線画だけで、授業中にシャープペンで落書きしたものを友達に渡すくらいの感じでしたね。コピックは高価だったのでおこづかいでは揃えられなくて、数本だけ買って。アニメ塗りっぽくするんじゃなくて、水彩と変わらずに重ねて塗る感じで使っていました。ほとんど独学で、何かを参考にすることはなかったですね。

―― そのままプロの道を目指そうとはされなかったんですか?
高校を卒業するときに一度悩みました。地元にあった美術系の短大に行こうと思ってたんですけど、お金がないからと言われて諦めて。手に職をつけた方が卒業後に仕事があるかなと思って、コンピュータ系の専門学校に行きました。堅実な方を選んだ感じですね。

―― デジタルに移行されたのは、専門学校に入られてから?
そうですね。Photoshopで絵を描いている友達がいて、こういう風に描けるんだ、と。使ってみたいけどどうしよう、と思ってイラストサイトを巡っていたら、厚塗りのうまい描き手の方が「すごく軽くて使いやすい」とopenCanvasを紹介していたんですよ。自宅のPCはまだネットにつながっていなかったので、学校でフロッピーディスクにダウンロードして(笑)、持ち帰ってインストールして描いてみたら、アナログに近いタッチが出て、これはいいなと思って使い始めました。

―― ペンタブレットとの出会いもその頃ですか?
dww022_Ameiro_pic3openCanvasを導入した頃から存在は知っていたんですが、最初はマウスで描いていて。元々アナログで描いていたこともあって、マウスではやはり難しくて、すぐA6サイズのFAVO F-410Uを買いました。それからずっと使っていて、今でも現役です。もうかなりボロボロで、壊れたら買い換えようと思ってはいるんですけど、小さいサイズの描き方に慣れているので、導入は考え中です。
 
―― 現在はどのようなツールを使われていますか?
openCanvasをver.2まで使ってから、SAIに移行しました。Photoshopを試してみたこともあったんですけど合わなくて。慣れないとかっちりした絵しか描けないので、使うには至りませんでしたね。他にも水彩に近い塗りができるということでPainterもすすめられたんですけど、自宅のPCに入れたら重すぎてパンパンになってしまって(笑)、思うように描けなかったので、結局軽さと使いやすさでSAIに落ち着きました。

―― イラストの作画工程はフルデジタルですか?
デジタルで描き始めた頃から、フルデジタルですね。ラフからSAIで描いています。シャープペンでラフを描いて取り込んで塗る、ということもやろうとしてみたんですけど、それだとうまく描けないんですよね。たまに紙に描いたりもしていますが、デジタルはデジタル、アナログはアナログ、と分かれている感じです。SAIに向かって描きながら水彩塗りでいくか厚塗りでいくかを決めていくので、明確な描き方のスタイルはないですね。主線の処理でも、消したり消さなかったりしますから、昔の絵を指して「これどうやって描いたの?」と聞かれても答えられないです(笑)。

―― 現在はどのような作画環境ですか?
PCはDELLでメモリだけちょっと増やしてポチっただけで、詳しくはわかりません(笑)。OSはWindows Vistaで、モニターは23インチを使っています。作画環境を必死で追及するようなことはないですね。描ければいいや、というくらいです。

dww022_Ameiro_pic4―― ustreamを使って作画風景の配信もやられていますが、絵を完成させるまでの時間が短いですよね。
描くのは速いほうだと思います。飽きっぽいので、瞬発力で描いた方がいいんです(笑)。何日間かに分けて描くことはないですね。2時間くらいで集中力のピークがくるので、その時間内に完成まで持っていきます。キャラものだったら「この前髪が描きたい」とかピンポイントに描きたい部分が出てきて、あとは何も考えずに描き出しますね。その部分だけ描いて満足して、あんまり可愛くならなかった、となってしまったりするので(笑)、それを防止するためにustream配信を始めたという感じです。

―― 作品は基本的にネットで公開されていますが、きっかけは何だったんでしょう。
最初に使っていたopenCanvasの公式サイトが今で言うpixivやTINAMIのような画像投稿サイトに近いサービスをやっていたんです。アップしてあるファイルを見れば、どうやって描いているのか、途中のテクニックなどもわかるという仕様で。デジタルで描き始めたばかりの頃はそちらを利用していました。うまい人を見つけて、その方のサイトを見に行ったりするくらいで、あんまりネットサーフィン自体はしていませんでしたね。他にも友達のサイトに間借りするかたちで描いたイラストを置いてもらったりしてたんですが、自宅にネットが開通してからは、友達のサイトから独立して晴れて自分のサイトを作ることができて。イラスト検索サイトにも登録して、そこからリンクを辿っていろんなサイトを巡るようになりました。

―― その当時はどういった絵を描かれていたのですか?
間借りしていた頃は、友達の好きなジャンルに合わせて、男の子の絵ばっかり描いてました。自分のサイトを持ってから、「お絵描きさんネットワーク」に参加して。オリジナルキャラを作って交流するという企画があって、そちらに向けて描いてました。

―― 自分のサイトを持ってから、バリバリと絵を描いて更新するようになったんですか?
実はそうでもなかったんですよね。同時期に『ラグナロクオンライン』にハマってしまって(笑)、1年くらい絵をまともに描かなかったんです。ちょうど萌え文化が盛り上がり始めた頃で、周りから「そっち系の絵柄だよね」とか言われて、ヒネくれてたということもあって。自分では元々、厚塗りの地味な色合いの絵が好きだったし、いかにもCG的というか、ギャルゲー的な塗りを使いたくなかったんです。

―― 絵を描かれなかった1年の間に、心境の変化があったのでしょうか。
dww022_Ameiro_pic5素直になったというか、開き直ったんですね(笑)。思いきり萌えを意識したかわいい系の絵柄で描いてみようとやり始めて、徐々にキラキラしていった感じです。画像投稿サイトが盛り上がるようになって、それまでとは違って圧倒的に目にする絵の数が増えたこともあって、色んな方の絵を取り入れてみようと。最近ではもう「アリだな」と思ってますけど。画像投稿サイトのほかは、ボーカロイドの影響もありますね。

―― ボカロ(ボーカロイド)のイラストを描くようになったきっかけは何だったんですか?
同居していた友達が先にどっぷりハマってたんです。部屋でずっと初音ミクの曲が流れていて、ほぼ洗脳に近い感じで(笑)。何だこれ、と気になってボカロのSNSに入ってみたんです。そこで知り合いが増えた流れで描くようになった感じです。初期は楽曲とコラボとかもやってました。

―― 初めてのお仕事も、その頃ですね。
『VOCALOIDをたのしもう vol.2』(YAMAHA)のイラスト特集ページで取り上げていただいたのが最初ですね。もう「わたしでよければ」という感じでした。基本的に描いていれば楽しいというタイプなんですが、好きで描いているのとは違って締め切りやイラストへの注文が入ったりすることは面白いですね。そんなにたくさんお受けしてはないですし、プレッシャーも大きいので、声がかかると毎回「えっ!?」と思うんですけど。イラスト集『絵師100人 100 masters of Bishojo painting』(BNN新社)に掲載していただいたときも、わたしなんかでいいんですかと。

dww022_Ameiro_pic6―― 最近では、VOCALOID3『Megpoid』パッケージイラストの塗りを担当されました。
GUMIは好きでよく描いていたので、まさかオフィシャルのお仕事が来るとは思っていませんでした。ゆうきまさみ先生のスタッフから「塗りませんか?」とお話をいただいて、色々と制約もありましたし、本職が残業だらけの時期で納期も大変でしたが、パッケージ4種類の塗り分けはとても面白かったですね。ゆうきまさみ先生にもTwitterでフォローしていただいて。でも、なかなか話しかける勇気はないです(笑)。

―― これから、こういったお仕事がやってみたい、ということはありますか?
やはり『ゼノギアス』の影響が基本にあるので、ゲームのキャラクターデザインはやってみたいとは思いますね。あとは『キノの旅』を好きで読んでいたので、ライトノベルの表紙も。本当にできるか、と言われたら、うーん、という感じなんですけど(笑)。

―― 動画投稿サイトやボカロのムーブメントの中で絵を描かれつつ、雨色さん自身のスタンスとしてはすごくマイペースというか、ストイックな感じがします。
とにかく自分の絵が描ければいいんです。ジャンルにこだわりもないですし、二次創作もあまり長続きしないんですよね。自分が満足したらやめちゃうので。同人誌や画集も、一度作ったので、まあいいかな、と(笑)。描き終えて一度は満足したものの、古い絵を見ると粗ばかり見えてしまうので、あんまり掘り起こしたくはないんです。

dww022_Ameiro_pic7―― 自分のペースを崩したくない、というのが大きいのでしょうか?
もっと積極的に商業のお仕事をやらないのかと言われるんですけど、なかなか難しいですね。そもそも、メインにしてしまったらダメになっちゃうと思っていて。絵を描くことが嫌いになってしまいそうで、それはイヤだなと。よく「趣味は仕事にしちゃいけない」とか言いますし、専業にしてしまうと続けていける自信もないので。絵を描くことはもちろん大好きなんですが、自分の絵がそんなに需要があるとも思っていませんし、投稿や持ち込みも怖くてやったことがないんです。そこまでの自信作をまだ描いたことがないんですよね。自分が求めている完成形に到達したことがなくて。

―― 楽しく絵を描き続ける、ということがポイントなんですね。
絵を描くのは楽しいですし、見てもらうのも嬉しいし、お仕事として描くのも面白いと思っています。ただ、競争することがまず得意じゃないので、どうしても譲っちゃうんですよね。pixivでも、ランキングを気にして描くこともないですし。好きに描いていられるのが一番だと思います。

―― 絵を描き続けていく上での目標は何でしょう?
お絵描きの範疇を超えて、数日間かけて、全力を出し切った一枚絵を「ドン!」と描いてみたいですね。いつか本当に満足する絵を描いてみたいです。

―― 最後に、雨色さんにとってペンタブレットとはどういった存在ですか?
頭で描いたものを、そのままPCに出力するための「右手」ですね。描きながら考えていることを、楽しく形にしてくれるもの、みたいな感じですね。
 
 
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©Bonten/Wacom