2014年03月31日(月)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 020
イラストレーター・漫画家:ヤス

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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イラストレーター・漫画家

ヤス

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アニメ化もされた大ヒット作『とらドラ!』(竹宮ゆゆこ/電撃文庫)で、ライトノベルを代表するイラストレーターの1人として広く知られる。専門学校在学中に『月刊電撃コミックガオ!』(メディアワークス)2004年6月号『わんぎゃる~かわいいあのコはちょっとイタイ~』でデビュー。ゲーム制作会社アイデアファクトリーで数々のタイトルにキャラクターデザイナーとして関わりながら、フリーのイラストレーターとして、ライトノベルを中心に活躍。『わたしたちの田中くん』(竹宮ゆゆこ/電撃文庫)『おと×まほ』(白瀬修/GA文庫)などシリーズ多数。画集として『とらドラ・ピクチャーズ!‐ヤス画集』(アスキーメディアワークス)『ヤス イラストレーションズ』(GA文庫)がある。最近では、『さよなら絶望先生』で知られる漫画家の久米田康治の原作で、落語をテーマにしたギャグマンガ『じょしらく』を『別冊少年マガジン』(講談社)で連載しているほか、この9月には『ヤングエース」(角川書店)で新連載『ほっ健室』をスタートさせるなど漫画作品にも意欲的にとりくんでいる。

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dww020_Yasu_pic1―― ヤスさんが絵の仕事を目指すようになったきっかけは?
ゲームが好きで、ファンタジー系RPGのデザインやキャラクターに憧れて、真似して描いたのが始まりです。『タクティクスオウガ』や『ファイナルファンタジータクティクス』のちょっとダークな世界観が好きで、キャラクターデザインの吉田明彦さんから大きな影響を受けました。中学時代に不登校をしていて、ゲームをするか絵を描くかだけの生活で、もう絵でやっていくしかないんじゃないかと思い込んで、キャラクターデザイナーになろうと。高校を卒業してから、大阪のゲーム専門学校のキャラクターデザイナー養成コースに2年通いました。

―― ファンタジー系ではなく、今のような「萌え」系の絵を描くようになったのは?
ちょうど在学中に、可愛い絵を使ったゲームが増えてきて、ネットでも女の子の絵がいっぱい見られるようになって、いつの間にか自然とそういう絵を描くようになった感じです。もともと可愛いのが好きだったこともあると思います。

―― デジタルで絵を描き始めたのはいつ頃ですか?
親が新しいもの好きで、割と早い時期に自宅にネット環境があったんです。ダイアルアップ接続で画像がちょっとずつ出てくるような時代に。それで「萌えミシュラン」とか「CG定点観測」みたいなサイトで、うまい人の絵が紹介されるのを見ていました。ある時、親がスキャナを買ってきて、これでPCで絵を描けるんじゃないかと。鉛筆画を取り込んで、フリーソフトのpixiaで色を塗ったのが初めです。弟に頼まれてアニメ『まもって!守護月天』のシャオリンを描きました(笑)。

―― ペンタブレットを使い始めたのは?
dww020_Yasu_pic2高校の頃に、お絵かき掲示板に入り浸るようになって、マウスで描くのはきついなと思って、intuos2を買いました。親にはもっと安いのを買った方がいいと反対されたんですが。当時は発表の場もお絵かき掲示板とかなので、ちゃんとしたツールは、専門学校でPhotoshop 5.5を使うようになって初めて色々な機能を覚えた感じです。雑誌『Colorful PUREGIRL』(ビブロス)のCG講座を参考にして、読者コーナーに投稿したりしていましたね。

―― 卒業後はゲーム制作会社のアイデアファクトリーに就職されたんですね。
いきなり「キャラクターデザイナー」を募集している会社なんてないので、とにかく片っ端からやるしかないと、学校に来る求人票やインターネットを頼りに色々な会社に応募しました。無事就職が決まり、就職のタイミングで上京して、初めて秋葉原に来てびっくりしました。会社では、いくつかのゲームでキャラクターデザインを担当させて頂いたり、企画段階のゲームのキャラクター制作、細々としたアイコン作りやグラフィッカーのお仕事など、1年半ほどの間ですが色々やらせていただけて楽しかったですね。

dww020_Yasu_pic3―― イラストレーターとしてデビューしたのはいつ頃ですか?
実は専門学校時代にデビューはしていて、夏コミに出した同人誌を見た編集さんに声をかけられて、2年生の4月に『月刊電撃コミックガオ!』(メディアワークス)に読み切り漫画とイラストが載りました。イラストは元々目指していたお仕事なので楽しく描かせて頂いたのですが、漫画は描いたことが本当に少なかったので、いつも編集さんに怒られながら描いていた気がします……(笑)。

―― コミケに出した同人誌はどのようなものだったんですか?
同人誌は漫画の方が多いイメージだったので、真似して漫画らしきものを描いていました。二次創作よりオリジナル作品に興味があって、ギャグマンガなどを描いていました。

―― すでにデビューした状態で就職というのは大変ではありませんでしたか?
会社勤めと並行して、イラストや漫画はフリーで受けていたので、会社から帰ってきて寝るまでイラスト仕事をして、3~4時間寝てまた会社に……というサイクルの生活を続けていました。常に〆切に追われていましたね。

―― その頃にはライトノベルのお仕事も。
在学中に『わたしたちの田村くん』(竹宮ゆゆこ/電撃文庫)の前身になる「うさぎホームシック」という短編が季刊『電撃hp SPECIAL 2004 AUTMUN』に掲載されたのが最初ですね。

dww020_Yasu_pic4―― イラストレーターとして、ライトノベルの仕事をするというのはやはり特別な意味がありましたか。
デビュー当時からラノベのイラストはとても魅力的なお仕事だと思っていました。書店さんの棚に絵が並ぶのは、イラストレーターとしてとても刺激にもなりますし。漫画のお仕事は単行本になるまで書店に絵が並ばないので、個人的にそこが大きな違いだと思っています。漫画のほうが圧倒的にたくさん絵を描いているんですけど(笑)。最近は漫画のお仕事が多いですが、イラストレーターとしてもまだまだお仕事をやっていきたいです。

―― ヤスさんのこれまでのお仕事の中でも『とらドラ!』(竹宮ゆゆこ/電撃文庫)は、やはり欠かせない作品ですか。
本当に重要な作品ですね。『とらドラ!』の大河の影響か、ツンデレのキャラを描いてくださいといわれることが増えました(笑)。でも、イラストレーターとしてそういうイメージを持たれると、お仕事がやりやすくなりますね。自分の創作はともかく、自由に描いてくださいといわれると悩んでしまうので。

―― 『とらドラ!』といえば大河、実乃梨、亜美という3人のヒロインですが、キャラクターはどのようにデザインされたんですか?
キャラの身長や髪型は編集さんから詳細な案があったので、正直なところ自分で「デザインした」という感覚はあまりないんです。デザインとしては、なるべく記号的なディフォルメは入れないように、アホ毛みたいなものはつけずに、普通のショートカットや、ロングヘアでちょっとクセ毛みたいな、キャラっぽくしすぎない方向で描いています。3人の中では、コミカルな表情が多くて自分の絵柄が出しやすい実乃梨が描きやすく、逆に、亜美はモデル体型で頭身が高めのキャラなので、僕の絵柄だとディフォルメが強すぎて調整しないといけなくて大変でした。

dww020_Yasu_pic5―― ちなみに、ヤスさんは『とらドラ!』ヒロインでは誰が好きですか?
今は、恋ヶ窪ゆり先生です(笑)。自分が三十路に近づくにつれ、「そうかぁ」と思うところが増えてきたので……。いいキャラしてますよね。

―― 『とらドラ!』はアニメ化、コミカライズ、ゲーム化もされて、大ヒット作になりましたが、自分の描かれたキャラクターがこれほど活躍するのは、いかがですか。
アニメは、やはりアニメの線で自分の絵そのままではないですから、「原案」として客観的に観ていました。いち視聴者として毎週楽しみでしたね。アニメの『とらドラ!』は本当にいい作品で、今度出るBD-BOXでも新作が入るというのでアニメのスタッフさんにも愛されてますね。コミカライズも、絶叫さんという素晴らしい方に関わって頂いてます。『とらドラ!』という作品に関わることができて本当に良かったと思っています。

―― 『別冊少年マガジン』(講談社)で連載中の漫画『じょしらく』は、久米田康治先生の原作つきですが、久米田先生と組むことで、何か得たものはありますか?
コマのブチ抜きを多用されるので、他の連載でもつられて描いてしまっています(笑)。本当に特徴的な作風の方なので参考になりますね。風刺を含んだ内容やキャラクターの動かし方がとても巧みで、発想力に毎回感服しています。危険なネタも大好きです(笑)。

―― 『じょしらく』はネーム原作とのことですが、原稿はどのような工程ですか?
Photoshopで大まかなレイアウトを決めて、SAIで下描きしたものをプリントアウトして、清書してから取り込んでComicStudioで仕上げます。モノクロ原稿は圧倒的にComicStudioに軍配が上がるので。モノクロ2値に拘りがあるわけではないですが、作品のお題が落語で、和服姿だったのでグレーよりもイメージが近いかなと。久米田先生自身の作品も、白と黒のコントラストが美しいので、その影響もあるかもしれません。

―― やはりイラストと漫画では、考えることが違いますか。
イラストだと、ワンシーンを作ることに注力すればいいので前後を考えなくてもいいんです。漫画だとそういうわけにいかないですね。逆にワンシーンを描くことに時間をかけられない。そのため、イラストに比べるとワンシーンのハードルを下げて描いているところがあります。頭の中ではほとんど別物という認識ですね。連載だと、〆切までに時間的にどこまでやれるかというところで作業配分を決めるので、ひとつひとつ描き込んでいくというよりは、優先順位を決めてコマを埋めていく感じですね。

―― 現在の作画環境はどうなっていますか。
CPUはCore i7 2600、メモリ16GBを搭載したPCにWindows7 Professional(64bit版)を入れて、Cintiq 21UXと色を確認するためのモニターとしてEIZO FlexScan S2432Wをつないでいて、ツールはSAIとPhotoshop 5.5、ComicStudioです。dww020_Yasu_pic6サブデバイスでロジクールのゲームコントローラーにショートカットを割り当てて使っています。描いて消してという通常の作業はこれで事足りますね。Cintiqを使い始めたのは割と最近で、『じょしらく』の連載を始めてからです。就職してから会社でIntuos3を使うようになって、自宅でもintuos2が故障したのを口実にIntuos3に買い換えて使っていたんですが、Cintiqを使っている知人から、液晶ペンタブレットは線を書くのが圧倒的に楽で、漫画を描くのに効率的だと聞いて。『じょしらく』はネーム原作が出来上がってくるタイミングがまちまちなので、少しでも原稿作業をスピードアップできるなら、すがれる藁にはすがってみようという気持ちで購入しました(笑)。

―― 今回、新しいCintiq 24HDを使ってみた感想はいかがですか。
ぜんぜん違和感なく使えたし、とにかく画面がワイドで視野が広くっていいなと思いました。今は色の確認用にCintiqの他にワイドモニターを置いているんですが、これなら一台でデュアルモニター的に参考資料を表示させながら描くこともできそうだなと。それに、画面の熱もファンの音も全然気にならないですね。

dww020_Yasu_pic7―― 現在のお仕事はどのようなペースで作業されているんですか?
『別冊少年マガジン』の『じょしらく』の連載と、『ヤングエース』10月号から新連載が始まった『ほっ健室』の作業があって、その合間を縫ってイラストや単発の仕事をこなしている感じです。『じょしらく』はネームを考える必要がないぶん、決まった作画作業以外の時間は自由に使えるから連載といってもそこまで苦しくはないですね。最近だと集英社スーパーダッシュ文庫で『迷い猫オーバーラン!』第10巻のイラストを描きました。毎回キャラクターデザインが変わるという、なかなか刺激のある仕事でした!

―― 今後、お仕事でこういうことがやりたいという方向性はありますか?
しばらくは漫画に集中していく感じですが、イラストのお仕事も並行して続けていきたいと思っています。色々な仕事がやれるといいですね。変わった企画があれば面白いなと思います。5月に秋葉原で開催された『絵師100人展』のような、いつもと違うアプローチの仕事は描いていて刺激がありました。展覧会としてもインパクトがあったんじゃないかと。

―― イラストレーターを目指すきっかけになったファンタジー物のデザインを手がけたりは?
絵を描きだした出発点がゲームなので、ファンタジーを描くときには半端なものを描くわけにいかないという気持ちはありますね。現代ものだと、制服とか、ファッションとか既存のものを元に自分なりに描く感じなので、dww020_Yasu_pic8デザインというよりアレンジに近いお仕事だと思っています。ファンタジー衣装は振れ幅が非常に大きいので、特別な思い入れというか、憧れのようなものを持っている気がします。
出版作品以外のキャラクターデザインもいつかできるといいなとは思うんですが、連載を持っていると一ヶ月のなかで使える時間は限られるので、ちょっと頑張らないと大変ですね(笑)。忙しくてもうまくやっている人はいるので、やり方次第だとは思っています。同人もしばらく休んでいるので、そろそろ何かやりたいなと申し込んだんですが、なかなかスケジュール取れなくて大変です(汗)。プライベートの時間もとらないと、疲れが溜まってしまいますし……オフはひたすら寝ています(笑)。

―― 最後になりますが、ヤスさんにとってペンタブレットとはどのような存在ですか?
ペンタブレットとかけまして……って大喜利ですか(笑)。仕事のパートナーであり、恋人でもあり。デジタルで絵を描き始めてからずっと使っているものなので、仕事道具というよりは手足みたいなものですね。
 
 
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©Bonten/Wacom