2014年04月09日(水)

『デジ絵の文法』DVDタイアップセミナー
カリスマデジ絵師による
初めてのデジタルイラストレーション

初出日:2007年8月26日
取材日:2007年7月30日
取材場所:アミューズメントメディア総合学院東京校
構成:平岩真輔
司会:糸曽賢志
協力:ポニーキャニオン/ワコム

ニーキャニオンから発売中のDVD『デジ絵の文法』は、デジタルの筆を使って描かれるイラストレーション“デジ絵”を描く5人のデジ絵師達の制作現場に密着して、そのテクニックのすべてを収めたイラストレーター志望者必見の1枚です。
そんなデジ絵師の一人、okamaさんを迎えてイラストレーター志望者に向けた公開セミナーがアミューズメントメディア総合学院東京校で開催されました。ポニーキャニオン、ワコムの協力のもと『デジ絵の文法』DVDを上映しながらokamaさんのお話を伺ったトークイベントをダイジェストでレポートします。

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デジ絵師、okama

digie-no-bunpou_1―― まずは、okamaさんのデビューの経緯から伺えますか。
デビューは20歳か21歳だから、12年位前かな……。学生だった頃にはデビューできませんでしたね。けっこう持ち込みをしたりしていたんですけれど、全部ダメで。他の作家さんから紹介された編集部で、賞に出してみようかというお話をいただいて描いたもので、賞をとって、連載をもらって……という感じです。

―― okamaさんは、マンガ家としてデビューされてしばらくしてからデジタル作画を始められていますが、デジ絵との出会いはどのようなものでしたか。
出会いというより、そこを目指していたという状態ですね。ずっとデジタルで描きたかったんですけど、お金がなくてパソコンが買えなかったんですよ。それで、マンガを描いて、単行本を出して得た収入でやっと始めることができました。

―― デジ絵を始めるために頑張ったわけですね。やっと手にしたパソコンは相当大事にしたんじゃないですか。
そうですね、まだありますよ。ちょっと粗大ゴミに出したいとも思うんですけど(笑)。

―― 当時のパソコンだと、HDDやメモリも少なくて絵を描くには大変じゃありませんでしたか。
僕が始めた頃には、もう絵を描くには十分でした。ただ、さすがに1200dpiとか600dpiでは描けませんでしたから、もっと低い解像度でやってました。今は、マンガは1200dpiとか600dpiで描いています。それくらいないと線が綺麗じゃなくなってしまうので……人によっては2400dpiでやっていますが、それぞれですね。僕はポスターのような大きい絵を描く時でも、B4くらいのサイズで作業しています。だいたいそれくらいあれば、引き伸ばしてもそれなりに見えるので。

―― デジ絵を始めるようになってからのokamaさんの作品を見ていると、デジタルで作画するということがokamaさんにとってすごく大きなものだったんじゃないかと感じます。
デジ絵は楽しいですね。もともとゲーマーだったので、ゲーム感覚で試行錯誤できるのがいいんじゃないですかね。アナログと違ってやり直しが効くので、セーブして、違う所に派生して、それでまたセーブした所に戻って……みたいな。

下書き~下塗り

digie-no-bunpou_2―― DVDでは最初にokamaさんの使っている道具が紹介されていますが、特にシャープペンシルがクローズアップされていますね。
ドイツのステッドラーという会社のシャープペンシルの持ち手に、パイロットのドクターグリップのグリップだけを取り外してつけています。昔はティッシュで巻いていたりしたんですけど、ドクターグリップがちょうど差し替えるのに良くて。

―― 鉛筆は使われないんですか。硬いシャープペンシルだと、線を消したときに跡が残ってしまうので、アニメーターさんなどは鉛筆を使われることが多いみたいですが。
僕は子どもの頃からずっとシャープペンシルでしたね。鉛筆は削るのが面倒くさいじゃないですか。たしかに、消しゴムで線を消しても、跡が残ってしまうことはよくありますね。デジ絵の場合はパソコンに取り込んでから修正することもできますけど。

―― 下書きはコピー用紙に描かれていますが、描いた原稿はとっておかれるんですか。
全部とってありますね。捨てることはないです。押入れの下の段が全部、絵の描かれたコピー用紙で埋まってしまいました。奥のほうの段ボール箱の中なんて、虫が食ってるかもしれない(笑)。

―― マンガを描かれる時にも、デジタルで作画されているんですよね。
ええ、マンガもデジタルです。ペン入れまでは紙でやって、あとトーンはデジタルで。スクリーントーンをスキャナで取り込んで貼りこんだり、自分で作ったパターンを使ったりと色々やってますね。僕の好きな砂のグラデーションのトーンが廃版になってしまったので、それを取り込んだりしています。

―― マンガの世界でもデジタル作画が盛んになっていますが、編集部側の受け入れ態勢はどうですか。
『CLOTH ROAD』を連載している『ウルトラジャンプ』はデジタルを取り入れています。CominStudioのパッケージにも『ハヤテのごとく』の作者の畑健二郎さんが「これがなくちゃ描けない」と書いていましたし、最近はデジタル原稿でも大丈夫ですよ。

―― Photoshopの使い方は、どうやって覚えられたんですか。
ゲーム会社にいたことがあって、そこでドットを打ってました。メガドライブとか、3DOとかのソフトを作っていて……「3DO REAL」とか言っても解る人いないと思うんだけど(笑)。そこで、Photoshopを教えてもらったんです。隣の席に帝国少年がいたんで、分からないことがあったら「ちょっと教えて」って。すごく上手い。

―― DVDの中では、Photoshopのアクションスクリプトを多用されているのが印象的ですね。
だいぶPhotoshopを覚えた頃にバージョンアップでアクション機能がでてきて。いろいろなアクションスクリプトを作っていますけど、一番使うのはやっぱり「選択範囲を拡張して塗る」やつです。最後に選択範囲を解除してくれるのもいいんですよね。

―― 映像を見ていると、選択範囲の拡張に1pxのと2pxの2種類がありましたが、取り込んだ線画の内側より拡大しないと、塗り残しがのこってしまうからですよね。
そうですね。高い解像度だと、拡張する範囲も大きくしないといけないので使い分けています。僕はひとつひとつ塗る時に広げていますけど、人によっては全部塗り終わった後に一気に広げて爽快感を味わったりしていますよ。

―― アクションスクリプトで、作業時間が短縮できるメリットはすごく大きいと思いますが、デジタルを導入したことで、できることが増えて、仕事量も多くなったりはしないですか。
デジタルだと、仕事のペースが安定するのがいいですね。納品もデジタルデータで送ることが多いので、インターネットを介して、編集さんに会わないまま仕事が終わることもあります。

―― グレースケールで作業をしているのは、データが軽くなるからということですが、カラーと比べて相当違うものなんですか。
自動選択ツールは全然違いますね。高解像度で作業していると、失敗したときのフリーズ時間が長くてイライラしますが、グレースケールなら大丈夫です。キャラのマスク(塗りわけ)は、グレースケールで作るのがいいですよ。パスを使える人はカラーでも大丈夫だと思いますけど。

彩色

―― DVDの中で、カスタムブラシをわりと多用されていますけれど、普段からよく使われるんですか。
言うほど使いませんね(笑)。一番使うのは、鉛筆っぽい線を引くカスタムブラシを作っていて、カラーを塗る時に、足りない線を補ったり、線を加えたりするときに使います。それ以外だと、DVDでも地面を塗る時に使っているインクを飛ばすようなブラシは、マンガを描く時によく使います。アナログだと、歯ブラシでバーッとやれば終わりなんですけど、デジタルでそれはできませんからね(笑)。
 
digie-no-bunpou_3
 
―― 色を塗る時に、HSBスライダーを使っているのは珍しいですよね。
あまり色指定に使う人はいないですよね。色を作るときに、明度と彩度、後は補色関係でしか考えていないんですよ。だからHSBスライダーが一番あってるんですね。

―― イラストを描く時には、全体的な色のイメージを作って描かれているんですか。イラストを見ていると、最初にイメージができていて「今回は緑でいこう」とか「ピンクでいこう」とか考えられているのかなと思うのですが。
そういうときもありますが、少ないです。色は後から後からですね。いい絵にならなくて苦しんで、次こそは考えて描こうと思いながら、うっかり忘れて……行き当たりばったりです。DVDで描いているミーナの絵は、色が決まっていたからすぐ終わったんですけど、そうでない絵は、チャンネルもとっておいたまま、いちど完成してからも「色相・彩度」で全体的な色のバランスを変えたりして、こっちのほうがいいんじゃないかとか、だいぶ動きますよ。

―― DVDでは、イラスト完成までの時間がものすごく早く見えますが、実際には何時間くらいで描かれているんですか。
下書きから、色塗りまでで、だいたい3~4時間くらいかかっていると思います。ポスターみたいなキャラクターが大勢いるようなのは、もっと時間がかかります。

―― キャラクターごとにレイヤーを分けて描いて、最後に合わせて一枚の絵にしたりするんですか。
キャラクターをそれぞれ別々に描くと、倍以上の作業で面倒くさいですよ。最初から一枚の絵として描けば、見えない部分は描かなくてもいいので、なるべく前のキャラの後ろに隠してしまいます。

仕上げ~完成

―― デジ絵完成の荘厳なBGMがいいですね(笑)。DVDでは、最後の仕上げに黄色のレイヤーをソフトライトで重ねていますが、どの絵でも行っているものなんですか。
そうですね、これだと肌の色に近いので、あまり変わらないからですね。肌の色を中心に、最終的な色の調整をしていくといった感じです。描いていると、どんどん淡い色になってしまうので、最後に乗算して、色を倍に増やすというのはよくやりますよ。

digie-no-bunpou_4―― 先ほど実演していただいた時に、この絵を描いたときは目が細い時期だったと言っていましたが。そういうのは、時期によって変わるものですか。
変わりますね。目の上の線、というかまつげのラインですが、アニメのキャラクターは元気な人が多かったから、目を見開いている感じにしようと思って、それがだんだん細くなって。イラストはあまり細くなりすぎないようにしようと気をつけています。もともと、僕は細くてやわらかい線を描くタイプですね。

―― DVDの裏話ですが、撮影では「完成!」を2回言ったとか。
「じゃあここらへんでいいですかね」と言ったんですけど、最後なんで「完成!」と言って筆を置く所をとらせてください、と言われて。 じゃあ、もう1カット撮っておきましょうかと。どちらが使われたかは覚えてないんですけど。初めて最後まで自分で見たんですけど、恥ずかしいですね(笑)。
 

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