2014年04月18日(金)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 015
イラストレーター・キャラクターデザイナー:Qni

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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イラストレーター・キャラクターデザイナー

Qni

qni

専門学校在学中から雑誌イラストなどを手掛け、卒業後はグラフィッカーとしてゲーム会社に勤務。在職中に手がけた携帯用無料オンラインRPG『エルアーク』(スクウェア・エニックス)キャラクターデザインで一躍脚光を浴びる。ノトヒサヒト名義でも動画革命東京のパイロット版アニメーション『コルボッコロ』(監督:糸曽賢志)キャラクターデザイン、作画監督を担当。退社後、フリーに。イラストカットのほかMMOブラウザゲーム『キングダムサーガ』(ガマニアデジタルエンターテインメント)キャラクターデザインなど、各種コンテンツに意欲的に取り組んでいる、気鋭のクリエイター。

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―― Qniさんが今のお仕事を目指されるようになった経緯を教えてください。
dww015_Qni_pic1小さい頃から、ずっと絵を描いたりしていたので、こういう仕事をして食べて行けたらいいなと思ったのが、そもそものきっかけです。怪獣ものが好きだったので、ゴジラやガメラをよく描いてました。先生や家族、友達からも評判は上々だったので、それを燃料にして一人で黙々と描いてましたね。『ドラクエ』や『FF』シリーズも流行っていたので、ゲームのドット絵を見て、方眼紙でマス目を作ってアナログ的なドット絵を作ってみたりしてました。それでは物足りなくて、市の施設で開放されているPCにドット絵を打てるソフトがあるということで、そこにひたすら通って、16色くらいのドット絵を打ったりしてましたね。
 
―― デジタル絵との触れ合いはそこが最初なんですね。
そうですね。それからゲームのグラフィックも飛躍的に進化していって、雑誌でもCGイラストをよく見かけるようになって。調べていく内に、PCで描いてるんだ、というのが分かったので、中学の卒業祝いで自分のPCを買ってもらって、Photoshop Elementsを手に入れて。さあ初CGだぞって意気込んでインストールしたのですが、当時ペンタブレットを知らなくて、マウスしかなくて(笑)。「おかしい、全然描けない!」と。それからしばらく封印することになりました。

―― ペンタブレットとの出会いはいつ頃ですか?
高校が商業デザイン科というところで、そこでPhotoshopやIllustratorの使い方を教えてもらえるようになって、ようやくペンタブレットの存在を知って。高校2年生の時に初めてFAVO(F-401)を買いました。そこで封印していたPhotoshop Elementsを引っ張り出してきたのですが、初代で機能が充実してなくて。Photoshop 5.5を使い始めて、やっと本格的なCGイラスト生活に入った感じです。それまではひたすらアナログで描いていました。コピックだとか、ほとんどの画材を試して、アクリルや油絵もやりました。在学中に、とりあえず画材はさわれるだけさわっておこうという感じで。

dww015_Qni_pic2―― 当時、絵を描いている仲間はいなかったんですか?
その頃は、今ほどオタク界隈の文化にあんまり親しんでなかったので。高校2年の夏休みに、中学の同級生に誘われて、イベントに出展したのが初めてです。地元でも、年に数回イベントがあって。誘われて描いたジャンルが男性向けだったのですが、イベントは女性ばっかりで、男性が自分たち1サークルしかいなくて(笑)。すごく恥ずかしい思いをしましたね。そのあと自分でも同人活動をやり始めたのですが、男性向けはあきらめて、女性にも人気のありそうなゲームのキャライラストを描いてやっていたら、結構売り上げが出て。求められるのが嬉しくて、それから高校の間はどっぷりでした。

―― 当時から作業環境はデジタルですか?
線画自体は原稿用紙に付けペンで描いて、それを取り込んで。表紙のカラーやトーンはPhotoshop 5.5です。プラグインではなく、ハーフトーンのフィルターとかで。それをプリントアウトして、コピー本にしていました。

―― 高校卒業後は、上京して専門学校のキャラクターデザイン学科に入学されたんですよね。
dww015_Qni_pic3美大に行こうとも考えていましたが、「あと4年も学生やるのはいやだな」と思って。2年で何とかして絵を仕事にしようと思って、専門学校を選びました。
キャラクターデザイン学科に入ったのは、小学校の頃に『ポケットモンスター』とか『たまごっち』とかキャラクター色の強いゲームが人気で、クラス中がその話題で盛り上がっているのを見て、みんなに愛されるキャラクターを作るという仕事をやってみたいとずっと思っていたからです。できたばかりの学科だったし、飛び込んでみた感じですね。

―― 専門学校での勉強や生活はどうでしたか?
あんまり真面目な学生ではなかったですね。サボることも多くて。自分の作品づくりを優先してました。高校は専門的な学科だったんですけど、ゲームやイラストなどの業界の知識は全然なかったので、専門学校で先生たちから間接的にでもそういった話を知ることができたのが一番大きかったですね。どういうことをしていけばいいのかわかるようになったので、すごくよかったと思います。

―― 在学中に投稿や持ち込みなどは?
自分の絵がまだ仕事になるレベルになってないなと思って、していませんでした。できるだけ良いものを「自分の商品です」と言える状態にしたかったので。フリーでやっていきたいという思いも強くて、インターンにも行っていませんでしたね。
就職に切り替えたのは、在学中に『E2(えつ)』の創刊号でカラーイラストとモノクロカットを担当してからです。初めて仕事を受けてみて、「一人でやっていくには世の中の仕組みを知らなすぎる」と、フリーの難しさがわかって。会社で製作の流れをつかんで、それを糧にして後々フリーになれればいい、と。

―― ゲーム会社に入社されてからは、どんなお仕事をされていたんですか?
できたばかりのモバイル事業部にグラフィッカーとして入って、一人でアプリを丸々一本担当していました。初仕事からそれだけの分量だったので、不安になりながらやっていましたね。
絵を描くようになったのは、コンシューマ開発に移ってからです。PSP『ワイルドアームズ クロスファイア』のドット作業を終えたあたりで、「2D素材が間に合わない」と話が自分のところにもまわってきて。そこで線画のクリンナップと彩色の手伝いをやったのが、会社の中での初めてのイラスト仕事ですね。修羅場だったので、1ヶ月でクリンナップ100枚と彩色を50枚近くやりました。

―― その修羅場の中、アニメ『コルボッコロ』の作画監督もされていますよねdww015_Qni_pic4
会社とは別に個人で受けていたのですが、大変な時期が重なってしまって。完全に二足のわらじで、会社を上がったらアニメの作業をして、というような。会社も忙しい時期で、早く上がるとヒマだと思われてまた仕事振られて。人生で一番の修羅場かもしれないですね。元々キャラクターデザインだけのお話のはずが、あとから作画監督やレイアウトもやることになって。
 
―― 初めてアニメをやる人の仕事じゃないですね。
大変でしたね(笑)。自分は気になる部分を直すだけだと思っていたので、戸惑いながらやっていました。修羅場が終わったあたりでデザイン室から声がかかって、晴れて2Dの部署に入ることになりました。

dww015_Qni_pic5―― 2Dの部署に行かれてから、スクウェア・エニックスの『エルアーク』を。
『エルアーク』以前に、別件の社内コンペで自分が採用されたりと、社内での実績が結構できていたので、それで話がまわってきたという感じですね。元々依頼されていた方が、お仕事の都合で急遽できなくなったということで、会社に話がきて。気合い入れてラフを提出して、見事通りました。初めてのメインキャラクター作成で、すごくノッて描いていました。

―― キャラクターデザインのアイデアは、どういったところから?
いろいろです。作品の持っているカラーを大事にしたいと思ってるので。『エルアーク』に関しては特に、スクエニのタイトルだったらやっぱり高級感だと思い、スクエニらしさに注意してやりました。元々吉田明彦さんが好きだったので、吉田さんのデザインをじーっと観察して。このラインがスクエニっぽいなあと、取り入れたりしました。

―― ゲームのお仕事をやられて、周囲のリアクションはどうでしたか?
『エルアーク』に関しては、会員数がすごく伸びたのが嬉しかったですね。自分の絵が、とりあえずプレイするに値するって思ってもらえたのだと。イメージボードにも参加したので、そうやってひとつの世界観を作れたことも、すごくいい経験になったと思います。

―― それから会社を離れて、フリーになられたわけですが。
『エルアーク』を開発するにあたって、ゲームを一本作る上でのフローを体験することができて、同時に会社の中でのポジションも上がってきたので、仕事全体の流れが把握できるようになり。今だったら自分一人でもできるのではないかという思いが強くなってきたときに『キングダムサーガ』のキャラクターデザインの話がきて、それを機にフリーになりました。
裸一つで、全部自分で責任を負わなければいけなくなったのでプレッシャーは大きいですけど、その分やりがいを感じてます。

dww015_Qni_pic6―― フリーのキャラクターデザイナーという目標に向かって迷わず進んで来た感じですね。
「迷う」っていう行為が苦手なので。できるだけ前もって決めておいて、そういった目標を目指して日々をどう過ごしていくかという感じなので。いろいろ犠牲にしてきた部分も多いと思います。

―― 今の作画環境について教えてください。
PCはBTOでカスタマイズしたものをWindows XPで使っています。そこまで大きな絵を描く必要もないので、メモリは3GBしか積んでないです。モニタはNECのMultiSyncの24インチ。ペンタブレットは、FAVOのあとにIntuos3を購入して、今も使っています。ツールは、一時期はPainterに流れたりしましたが、最終的にPhotoshopオンリーになりましたね。会社でPhotoshopメインだったので、活用法を探るうちに、アナログっぽい描き方ができると気づいて。あと、使用頻度はあまり高くないですけどAdobe製品はほとんど揃ってたりします。

―― ペンタブレット以外の入力デバイスは使われていますか?
ショートカットはキーボードオンリーですね。会社と自宅で環境に差ができるといやだな、と。慣れているのでとりあえずキーボードのままで。もし液晶ペンタブレットを購入したら、スペース的な問題も出てくるかもしれないし、その時は何か導入しようと思っています。

―― ペンは、どの芯を使われていますか?
デフォルトのままですね。一応各種試してみましたが、FAVO時代の感覚に慣れていたので、じゃあデフォルトのままでいいかなと。芯は6年使ってこの間初めて替えました。元々すごく筆圧が低いので、摩擦がかからなくて全然削れなくて。筆圧の設定も、わずかな力加減で濃淡が出来るようになっています。

―― 今のワークフローは全てデジタルでの作業ですか?
ラフからPhotoshopで作業してます。鉛筆線が好きなのもあって、昔は線画をアナログで描いていることが多かったのですが、スキャナーで取り込み線を調整する工程がロスに感じて、「だったらデジタルで全部やっちゃえば」と。効率重視で。

―― Qniさんのイラストにはアナログの風合いというか、手描き感がすごくあります。
dww015_Qni_pic7デジタルの利便性をフルに生かして描くとCGっぽくなって、感じるイメージが似通っちゃうので。「他の人と違う絵づくりにしていかないと埋もれちゃうな」と。Photoshop CSになり以前のバージョンよりカスタマイズできるようになったので調整していったら、限りなく鉛筆線に近い状態を作れたので、「意外といけるな」と。フルデジタルのイメージを線画から受けないようにがんばりました。

―― 作業効率を上げる工夫や、努力していることはありますか?
とりあえずミスをなくすことは気をつけています。「エラーの数だけトライが増える」という考え方でやっているので。アクションも、作業工程で必要なものをだいたい一揃え作ってます。会社に資料とかテクスチャとかのライブラリがあったので、いいなあと思って。ブラシのカスタマイズも会社で見て、「ああこういうことができるんだ」と自分なりに覚えてやってきた感じです。

―― これからお仕事で、こういう方向性のものをやりたい、ということはありますか?
児童書や子供向けのキャラクターデザインなど、もっと低年齢層に向けた仕事をしてみたいと思っています。あとは、3Dを使った映像もやってみたいですね。これから先、表現の幅も増えてくるだろうし、とりあえずできるようになっておきたいなと思います。
元々、単純に絵が描ければどこでもいいや、という思いが強かったのですが。でも結局この業界を目指したのは、周りの人たちが喜んでくれたというところからだったりするんですよね。名画を小学生に見せても「いい絵だ」と喜んでくれることは少ないし、そこまでの関心を示さないじゃないですか。だから、わかってくれる人の絶対数が多いところでやりたいなという思いが強くて。これからも、できるだけ自分に近しい人に向けて、親しみのあるものを作りたいなと思っています。

―― 最後に、Qniさんにとってペンタブレットとはどんな存在ですか?
最近だと、ベッドで横になっている時間より、ペンタブを触っている時間の方が多いくらいなので。もう完全に体の一部みたいなものですね。
 
 
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©Bonten/Wacom