2014年04月25日(金)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 036
グラフィッカー:宮崎真一朗

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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グラフィッカー

宮崎真一朗

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フォトコラージュやデジタルマットペイントのアーティストとして、書籍のカバーイラストやWebサイト用のビジュアル、CDジャケットのデザインやアートワークと、2Dグラフィックを中心に活躍中。主な仕事に『THE FUTURE IS JAPANESE』(早川書房)『深紅の碑文』上下巻(早川書房)の表紙イラストや、「KIRIN HARD Cidre」ティザーサイト用のビジュアルの一部を担当。Regraphicsという個人名義では、セルフポートレートを元にレタッチ・コラージュを施すシリーズを展開している。

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dww036_ShinichiroMIYAZAKI_pic-shinkunohibun1―― 宮崎さんが絵を描きはじめた経緯を教えてください。
小さい頃から絵が好きで、小学校高学年から中学生くらいまでは絵画教室に通っていました。ただ、習うよりも自分の好きなように描きたいと思うようになってやめてしまい、本格的に作品制作をはじめたのは中学生になりPhotoshopに触れるようになってからです。絵の具やコピックで試していたような色の調整がPhotoshopなら簡単にできるというところに魅力を感じてのめりこみました。

―― その頃はどんな作品を描いてたんですか?
参考にしていたのは好きだったゲームです。『FINAL FANTASY』シリーズや『聖剣伝説』シリーズのパッケージアートが好きだったんです。『FINAL FANTASY VI』の魔導アーマーに乗った主人公が見つめる街という構図の絵や、『聖剣伝説2』の大樹の陰に小さいキャラクターが3人いる絵は特に思い入れがあります。そういう昔好きだったものを作ってみたいというところから作品作りをはじめたのですが、当時はペンタブレットを持っていなかったので、デジタルでドローイングをすることが難しく、その結果だんだんとグラフィック寄りの表現にシフトしていきました。

―― グラフィック寄りというとどんな作品でしょうか?
当時は『beatmania』などの音楽ゲームが好きだったのですが、プレイ中に『攻殻機動隊』の電脳世界のような映像が流れることがあって、そういうイメージを作りたいと思っていました。

dww036_ShinichiroMIYAZAKI_NOSTALFACT―― 作品はどこで発表していたんですか?
音楽ゲームを好きな方が集まるファンサイトです。音楽ゲームのファンの中には、ゲームの中で使われている映像が好きだという人がたくさんいて、そういう人たちが集まっていたサイトや掲示板に、ファンアートとして作品を投稿していました。

―― その頃にはもうグラフィッカーになりたいという気持ちはあったんでしょうか?
そうですね。ただ、身の周りのグラフィッカーの方には3Dで制作される方が多くて僕もはじめは3Dに挑戦していたのですがUIや操作の難しさから距離を置くようになってしまい、2Dで印象的な作品を作るにはどうすればいいのかと模索する中で、写真を加工してレタッチする方向にシフトしていきました。

―― レタッチで影響を受けたクリエイターはいますか?
ポーランドのアンジェイ・ドラガンというフォトグラファーです。ハイコントラストで迫力のあるポートレートを作られる方なのですが、その方が「マリリン・モンローやブルース・リーが今でも生きていたらどんな顔になっているか」というコンセプトで作ったフォトレタッチ作品にすごく衝撃を受けたんです。もともと写真で一番印象的な被写体は人間だと思っていたのですが、アンジェイ・ドラガンの作品を見たときにかつてない衝撃を受け、人物写真の可能性をあらためて実感しました。

dww036_ShinichiroMIYAZAKI_pic-shinkunohibun2―― レタッチはどうやって勉強したんでしょうか?
学生の頃は『MdN』に掲載されていたPhotoshopを使ったメイキング関連の記事を参考にしていました。またPhotoshopは海外のサイトでもチュートリアルが豊富なので、ノウハウやTipsをまとめたサイトを回ったり、YouTubeでレタッチの工程を解説する動画を探したりもしました。

―― 宮崎さんの写真作品はセルフポートレートをレタッチしたものがメインですが、なぜでしょうか?
素材に自分の写真を使おうと思ったのは、プロのモデルさんへお願いできる当てもなく、周囲の友人に頼むのも気が引けたからです(笑)。一からもの作りをするにはどうすればいいだろうと考えた結果、自分を使うしかないと思いました。モデルが自分なので、それぞれの作品ごとに自分ではない誰かに作り替える努力は必要でしたが、そこは徹底的にやることにしました。

―― 撮影環境を教えてください。
はじめはお金も機材もなかったので、ホームセンターで売っている電気スタンドを照明に使っていました。また、シャッターを押してくれる人もいないのでカメラが設置されているところに鏡を置いてどう写るかを確認したり、タイマーの写真を押したあとにまた急いでポーズを取ったりと慌ただしくやっていました(笑)。今は機材もそろってきて、リモートコマンダーなどのお陰でだいぶ楽に撮影できるようになりましたが、モデルから撮影まで全て自分ひとりで行う慌ただしい点は変わっていません。

dww036_ShinichiroMIYAZAKI_pic-sheryl―― 写真を撮る段階と写真を加工する段階ではどちらに力を入れていますか?
基本的には作品の方向性は撮影の段階で決まるので、そちらがメインです。そこから作品のコンセプトに照らして、どうしても修正しなければいけない部分をレタッチで加工していくという順番です。ただ、たとえば自分をモデルに「外国人の女性の顔を作る」、というような作品の場合は、顔の構造から骨格まで全てレタッチで修正していかなければならないのでレタッチの方がメインになります。

―― レタッチのテクニックで工夫している点はどこですか?
そこまで特別なことはしていないと思うのですが、作品全体の色の管理にはとても気を使っています。Photoshop CCになり、Photoshop上でRAWファイルなどの写真を現像するためのCamera Rawというツールがフィルタ機能としても使えるようになったのは、すごく助かりました。このおかげで細かい色の兼ねあいも調整できるようになり、最後の仕上げの精度も上がりました。そのためPhotoshop CCからはCamera Rawフィルタで画像のヒストグラムというステータスを見ながら細かくカラコレしていくという使い方に変ってきています。

―― 本日メイキング動画で制作していただいたのはデジタルマットペイント作品ですが、作業工程はレタッチと近いところがありますね。
dww036_ShinichiroMIYAZAKI_AkibaStreetそうですね。レタッチは人物写真の加工を行うことが多く、マットペイントは主に映像作品の背景美術用の風景を描くので、素材写真の絶対数や画像の補正方法などはかなり違いますが、デジタル上で画像編集をするという点は変わらないので通じる部分は多いです。たとえば色を暗くするときはどのフィルターを立ちあげてステータスをどういじるのか、ハイライトはどのくらい強くすればいいのかといった調整のコツは同じだと思います。

―― マットペイントで影響を受けた映像作品はありますか?
ギレルモ・デル・トロ監督の映画はよく参考にしています。特に『パンズ・ラビリンス』のファンタジックな背景は自分がマットペイントをやるときの教科書のようになっています。また『アサシン クリード』というゲームでコンセプトデザインを担当されているニコラス・フェランド氏の仕事からも非常に刺激を受けています。自分の作品は2Dなのでどちらかというとアート寄りのマットペイントになりますが、映画やゲームのコンセプトアートが持っている構図の特徴や色の出し方から学ぶ点は多いです。

―― 早川書房から出た『深紅の碑文』上下巻や『THE FUTURE IS JAPANESE』の表紙イラストはマットペイント作品ですが、コンセプトはどうやって決まったのでしょうか。
dww036_ShinichiroMIYAZAKI_pic-FUTURE-IS-JAPANESE作品を読ませていただいて、原作者の方の意図や作品の世界観を表現しようと努めています。またどちらのお仕事も普段からお世話になっているデザイナーの有馬智之さんからお誘いいただいてはじまったものなので、コンセプトは有馬さんと相談して決めています。
『深紅の碑文』は海面が上昇して人間が住める場所が少なくなったという世界が舞台なので、海の中に沈んだ街の絵にしました。上巻の建物の外観は、『BioShock』というゲームに出てくる海底都市・Raptureに大きく影響を受けています。
『THE FUTURE IS JAPANESE』は「和」のイメージを基調に現代の日本の要素を取り入れるというコンセプトになっています。「手前にある伝統的な日本の風景から、奥へ行くにつれて現代風の街並になっていく」という構成を意識しました。
 
―― ペンタブレットは宮崎さんのお仕事の中でどのように活躍していますか?
一年半くらい前に「Intuos5」を購入したのですが、レタッチではまつ毛や髪の毛といった細かな部分の描きこみができるようになりましたし、マットペイントでは日差しの向きなどの細かい調節に役立っています。筆圧感知の精度もすぐれているので、指先に入れる力の加減だけで「ここのハイライトを強くしたい」「ここのシャドウを濃くしたい」といったコントロールができたり、どのくらいの力をかけたら自分の描きたい太さの線になるか想像ができたりと、人間の持っている繊細な感覚をそのまま画面に反映させてくれるという点に非常に魅力を感じています。ペンタブレットというとイラストを描くものと思われがちですが、僕のようなレタッチやコラージュ、デザインの仕事でもペンタブレットは有効に活用されています。

dww036_ShinichiroMIYAZAKI_pic-RED―― 本日「Cintiq 24HD touch」を使ってみていかがでしたか?
使っていくうちにすごさがどんどん体感できました。友人が「液晶のペンタブレットに替えると、マウスから板型のペンタブレットに替えたときと同じくらいの驚きがある」と言っていたのですが、本当にその通りだなと思いました(笑)。「Intuos5」で十分に快適だと思っていたのに、それよりもさらに快適に作業ができています。今まで以上に効率的に作品制作ができて、しかも描きこみの密度もあがったので一石二鳥ですね。

―― 宮崎さんがこれから新しく挑戦してみたい分野はありますか?
最近は再び3DCGに挑戦したいと思っています。VFXでもアニメーションでも今のCGの技術はものすごいですし、CGによる表現もとても素敵なものだと感じています。レタッチもマットペイントもそうですが、好きになったものは自分で表現してみたいという気持ちに直結することが多いです。新しく3DCGにチャレンジするのは大変なことだと思いますが、「3DCGならこれが作れたのに」と感じたものを実際に形にできるよう勉強を続けていきたいです。
 
 
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©Bonten/Wacom