2014年04月21日(月)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 014
イラストレーター:月神るな

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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イラストレーター

月神るな

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同人音楽でカルト的な人気を誇り、後にメジャーデビューした音楽ユニット『少女病』のデザインを手がけ、自らもサークル「lunatic joker」として同人活動を展開。間もなくイラストレーターとして商業デビューを果たす。2007年冬に一部企画、ブックデザインまで手掛けた同人誌『萌えるヘッドホン読本』が大きな話題となり、オーディオ業界からも評価を得て、白夜書房より商業版『新・萌えるヘッドホン読本』、学研より『ヘッドフォン少女画報』が刊行され、その後のイラスト企画本ブームの先駆けとなる。2010年からは、デザインや企画プロデュースから、イラストレーターとしての活動に軸足を移し『王ディション!』(集英社SD文庫)『雑魚神様』(メガミ文庫)『お前なんぞに娘はやれん』(電撃文庫)などライトノベルのイラストを中心に活躍中。

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dww014_LunaTSUKIGAMI_pic1―― るなさんはイラストレーターの前にデザイナーとしてキャリアを始められていますよね。
自分をデザイナーだと思ったことはないです。デザインについての勉強も殆どしていませんし……。たまたま知人のゲーム会社で人手が足りなかったのでGUIや雑誌広告のデザインを手伝っていたら、それを見た『少女病』さんから仕事の話をいただいて……。

―― もともと同人活動のようなものはやられていたんですか?
上京したばかりの頃は普通の学生で、特にクリエイティブな方向で活動していたわけではありませんでした。それからしばらく経って、ミクシィのオフ会で知り合った仲間に「ちょっと手伝ってくれない?」と誘われて売り子として参加しました。初めてのオンリーイベントでしたが、そこで目にしたのは、活気ある人たちがみんな本を持って挨拶したりファン同士でお話したり、絵を通じて交流している姿でした。とてつもなく感動したのを覚えています。これをみて友達が増やせると思って(笑)自分も絵を描き始めました。
最初に作った本は当時はまっていたオンラインゲーム『スカッとゴルフ パンヤ』(Gamepot)のコピー合同誌でした。先のオンリーイベントで知り合った友達が夏コミ2日目の夜に「今から描こう」と電話をかけてきて、徹夜してガリガリとコピー本を描きました。それからは年間10冊超のペースで同人活動をしてました。今では全部で50冊ほどになります。あまり多くはないですが、同人誌やサイトを見てお仕事の話をいただくようになって、2007年から雑誌にイラストコラムを連載したり、本格的に商業の方でもイラストを描かせていただけるようになりました。

―― 以前からアニメや漫画に興味があったり、絵を描いたりはしていたんですか?
普通にジャンプ漫画などメジャーな漫画が好きです、というくらいのごく一般的な子供だったと思います。中高生の頃は勉強ばかりしていましたし、田舎ではそういう情報もなくて……。オタク的な文化が不毛の地でしたから……。デッサンなどは仕事をし始めてからやるようになった程度です。芸術的な活動といえば、幼少からずっと書道をやっていたくらいですね。これが今でもかなり大きく、いまの仕事に必要な集中力はそれを通じて養われたと言っても過言ではありません。

―― 現在も、お仕事としてイラストとデザインの両方を手がけられていますが、ご自身の目指す方向性というのはどちらにあるのでしょうか。
イラストの仕事が収入の大半なので肩書き的には「イラストレーター」なのだろうと思います。デザインに関して言えば、オタク業界にはあまり必要のないものだと思いますので率直に言ってやりたくはありません。イラストを描くほうが楽しいです。でもデザインのお仕事も来る……そのバランスが難しいです。ニーズに応えていきたいという気持ちがありますから。

―― 最初に同人でイラストを描き始めた時から、作画環境はデジタルだったんですか?
鉛筆画でしたよ。塗りはコピックでしたが、すぐにデジタルに移行しました。初めの頃は大した塗りではなかったので、マウスを使っていました。それでは物足りなくなってちょっと背伸びして型落ちintuos2を買いました。それからは歴代のIntuosをサイズ違いで買うようになりました。「新型なら性能も上がって小さくてもいいんじゃないか」と最初は小さいのを買うんですけど、描いているうちに大きいのが欲しくなって……の繰り返しです。dww014_LunaTSUKIGAMI_pic2今はIntuos4 Middleを人に譲って、最新のCintiq 21UXとIntuos4 Largeを使っています。歴代のペンタブレットがとってあれば、全部並べてみたかったんですけど。
OSは、PCに触れ始めたころからずっとWindowsでしたが、2007年頃からMacに乗り換えました。ペイントツールは、最初はPhotoshop、Painterそして2008年ごろはbootcampでSAIを使用。現在はPhotoshop CS5を使っています。CS4からのブラシストローク、画面回転機能はPhotoshopがペイントツールとして自分の中で定着するに至った重要な機能でした。IllustStudioにも期待しています。IllustStudioはインターフェースがこなれていけばすごくいいツールになると思います。デジタルで圧倒的に弱いのは軽快に使える定規機能なので、IllustStudioの定規機能は多くのイラストレーターに求められている機能であると思います。現状ではSketchbook Proで線画を描いたり、素材を作るのにはIllustratorを使ったり、絵によってはAffter Effectで効果を処理したりと色々なツールを使って描いていますが、「これだ!」というものは未だありません。今後に期待しています。

―― いろいろ使われているのは、好奇心ゆえですか?
楽をしたいからです。やはり自分の中の最速で描きたいので、どれが一番効率がいいかを常に模索している状態、つまり怠けるために努力している感じです。そうしているうちにペンが増えてしまってIntuos4のペンを4本持っています。芯も標準芯、ハードフェルト芯、ストローク芯など使い分けています。エラストマー芯も好きでした。個人的にはCintiq 21UXではハードフェルト、Intuos4だとノーマル芯が一番描きやすいと思います。

―― ショートカットはキーボードですか? サブデバイスも試していますか?
ショートカットはCintiq 21UXのファンクションキーに登録して使っています。ファンクションキーが旧型Cintiq 21UXの8個から16個に増えて、自分が使うショートカットをほとんどカバーできる様になりました。16個全てのファンクションキーを使っています。

―― イラストのワークフローはどのような感じですか?
dww014_LunaTSUKIGAMI_pic3方法の一つですが、まずはデジタルでラフ、そしてプリントアウトしたものをシャープペンでクリンナップしてからそれをスキャンします。クリンナップには0.3mmの2Hのシャープペンを使っています。絵によりますが『サイクルクリップ』(三才ブックス)に掲載されたイラストはこの手順です。最初にレイアウトを決めてラフを描いて、それを手前の自転車、キャラクター、背景に分けて、描きやすい大きさでプリントアウトしてからクリンナップしています。アナログ作業を通すと、デジタルだけで作画するより線に密度が出るんですね。その線画をレイヤーごとに取り込んで、サイズを合わせて合成しています。アナログ画材の持つ線の密度、擦れ具合といった情報量は魅力的です。それがデジタルで出せるようになれば、デジタルイラストは革新的に変わると思います。

―― カラーはすべてデジタルで塗るんですか?
画材はデジタルに限らず、作品によってはコピックも使っています。決まったやり方というのは作っていないんです。じっくりと時間をかけて塗る方法と、スピードペイントと大まかに2通りの描き方をしています。スピードペイントの場合は大体やり方を決めて時間内完成を目指します。プロは時間配分が一番大変なので、かけられる時間によって方法を変えていくというスタンスで大量生産をしなければなりません。1時間で1枚なんて時は、一発線でキュキュキュと描きますが、時間のかけられる絵は、絵の密度を上げる方向で、影にも斜線をいれたりして、それがあるのと無いのではやっぱり全然味が違います。イラストにじっくり取り組める時間を確保するのも大切です。

―― 描き方などで影響を受けた作家さんはいますか?
色々な作家さんの影響を受けています。パーツの描き方や仕事のスタンス、使用ソフトやPC、処理の仕方や色使い……色々な人の集合体というか、色々な人の技をどんどん取り入れていって、自分の中で一番いい方法を見つけていきたいです。

―― るなさんの今後の展望を教えていただけますか? 商業以外にも「lunatic joker」として同人活動も続けられるのですか?
同人誌も商業誌も「人に楽しんでいただきたい」気持ちは変わりません。現在は、よりターゲットが広い商業での活動を中心に据えています。
ハードルは高いですが、最終的にはイラストレーターの意識を変えていきたいんです。イラストじゃ食べられないよとか、夢がないことをよく言われるじゃないですか。人に夢を与えるためには、自分が夢でありつづけること。今後は自分がイラストレーターとして、背中を見せていけたらいいなと思います。

―― イラストレーターとして食べていけることを自分で証明していきたい?
いまの日本の出版事情の中で苦しむだけでなく、海外にスケールアウトすることも可能性のひとつですよね。deviantARTという海外のイラスト投稿サイトでも「kawaii!!」とかコメントしてくれたり、何千と「お気に入り」をいただけたりします。日本では難しいですけど、もしかしたらdww014_LunaTSUKIGAMI_pic4海外にパトロンもいるかもしれませんね。それで「お金をあげるから好きに描いてよ!」という言葉のもと、心の余裕がある中で素敵な絵を描けるのが理想ですね。
今の世の中暗い話が多いですけれど、全然そんなことは無いと思います。未来は明るいですよ! これだけ世の中には才能を持っている人たちがいて、そんな才能たちが潰れるわけがないですから。そのうち新しいやり方は出てくる。いずれ出てくるなら、それを待たないで切り開いていこう、と思って動いています。絵を描いている人でないとわからないこともありますから、イラストレーター自身がやらなければならない部分が必ずあります。まずは自分の持ち分をこなして、イラストレーターとしての足場をちゃんと作っていくことが重要だと思います。

―― 最後に、るなさんにとってペンタブレットとはどのような存在ですか。
液晶ペンタブレットは現状ではベストな選択肢です。画面の解像度は紙には追い付いていませんし、まだまだペンタブレット単体で全ての作業を済ませられるかといえば難しいとは思いますが、今ではデジタルも普及し、便利になっているので使わない理由がありません。あともう少しで完全な「なくてはならないもの」になれるのではないでしょうか。
 
 
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©Bonten/Wacom