2014年04月28日(月)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 012
漫画家:小島アジコ

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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漫画家

小島アジコ

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2001年、個人Webサイト『orange star comics』で独特の雰囲気がある漫画を公開しはじめ、密かな人気を得る。2006年に京都の御薗橋801商店街のマスコットキャラクターとして発表されて話題になった「801ちゃん」に衝撃を受けて描いた4コマ漫画『となりの801ちゃん』が反響を呼び、宙出版より書籍化される。『となりの801ちゃん』は「腐女子」と共にメディアでも広く知られるようになり、2008年には広澤草・瀬戸康史の主演で実写ドラマ化された他、『別冊フレンド』で少女マンガ版『となりの801ちゃん~腐女子的高校生活~』(作画:仁)が掲載されるなど、広い人気を得ている。現在は『となりの801ちゃん』(宙出版/第1~5巻)の他、『お義母さまはネコ!』(宙出版)、『ついった!‐4コマで楽しむとなりのTwitter‐』(エンターブレイン)や『SPA!』での連載など活躍の場を広げている。

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dww012_AjicoKOJIMA_pic1―― 小島さんが絵を描くことに興味をもたれたのは、いつごろですか?
中学の頃とかに、ノートの落書きとかは普通にしていたんですけど。サイトで公開しているような絵を描き始めたのは大学を卒業して勤めだす頃ですね。まだブログはない時代で、テキストサイトといってネタ文章を書いているサイトが流行っていて。それに絵をいれたら面白くなるんじゃないかと思ったのがきっかけです。1日に10件くらいだったアクセスが300件くらいになりました。

―― Webサイト『orange star comics』ですね。テキストサイトから漫画の世界に入ってきたというのは珍しいですよね。
当時はGoogleやソーシャルブックマークみたいなものも無かったので、ネット文化もすごく島宇宙でしたね。絵を描く人達とは同じ時代にいるのに、全然違うところで交わらなかったですね。

―― Webで漫画を始めたころの作風というのは『となりの801ちゃん』とは違った感じのものでしたよね。
アナーキーな(笑)。801ちゃんよりもそっちの方が先なので、たぶんベースはそこにあるんですけど。801ちゃんから知ってくれた人には「801ちゃんは毒があって面白い」と言われるけど、『orange star comics』から801ちゃんを見た人には「毒が抜けた」って言われるので……(笑)。

―― アナーキーというか、不条理というか。このテイストはどこからきているんでしょう?
たぶんに当時のテキストサイトのノリもあると思うんですけど、『快楽天』(ワニマガジン社)とかに載っていたような、とりあえず要件さえ満たしていれば後は何をやってもいいみたいなギャグ漫画があるじゃないですか。道満晴明さんとか。そういうノリかなと思うんですけど。今の流れだと、アナーキーな方の漫画は、もう本にならないので……ずっとネットの狭間を彷徨うことになると思います(笑)。

dww012_AjicoKOJIMA_pic2―― 影響を受けた漫画家さんはいますか?
藤子・F・不二雄の絵柄というか、コマの落とし方に影響を受けているかなと。小学生の頃から好きでずっと読んでいたので。『ドラえもん』とかも時々アナーキーな話がありますよね。短編だと、今は手に入らないけど『中年スーパーマン佐江内氏』とか好きですね。『ウルトラスーパーデラックスマン』とセットで(笑)。ずっと色々な漫画を読んでいるので、原体験というとわからないんですけど、そのへんだと思います。

―― 『orange star comics』を始めた頃にはもう絵柄はできてきていますね。それまでに漫画を描いたことは無かったんですか?
絵の方向的には固まってますね。高校時代にノートの落書きの延長線上で4コマを描いたりはしていましたけど、ちゃんと他人に見せるものとして描くのはサイトを始めてからですね。

―― 面白いネタを人に見せるということだと、いわゆるハガキ職人的な、イラストの投稿などはしていなかったんですか?
ハガキ職人はしていました! そういう意味では漫画のようなものを描いていた気がします。中学生のころに『月刊PCエンジン』という雑誌にネタ絵とか、ネタ葉書を投稿していました。PCエンジン派だったんですよ。
ファミコンの次にPCエンジン・コアグラフィックスIIを買って。『ファイナルファンタジーVI』が出るまでスーパーファミコンを持っていなかったので、マイナー路線で。格闘ゲームもPCエンジンに移植された『ストリートファイターIIダッシュ』くらいしかやってなくて、『月刊PCエンジン』のイラスト投稿のコーナーもあまり見ていなかったりして。なぜか文化的にすごく近くにいたのに、絵を描く人の世界と交わらないでいたんです。

dww012_AjicoKOJIMA_pic3―― 漫画やアニメが好きだという自覚はあったんですか?
ふつうにオタクでしたね。アニメ雑誌も時々だけど読んでました。都心に住んでいるオタクだと、ゲーセンにノートがあって、そこで絵描きとゲーマーと文章書きみたいな、色々な人達が交流していたそうなんですが、地方だと、不良の溜まり場だから行ってはいけないみたいに言われていて、そういった機会もなかったので……。

―― 漫画やアニメやゲームといった趣味は通っているんだけど、オタク的なコミュニティには足を踏み入れずに来た感じですね。
90年代のアニメも『エヴァンゲリオン』『ウテナ』『ナデシコ』とか普通に通ってきたし、古いのも『サジタリウス』とか好きだったけど……。踏むべきものは踏んでいるけど、なんか踏み抜いてないなあと。田舎だから、一緒にそういう活動をする仲間がいなかったんですよ。
『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』公開初日に大阪の劇場に並んでいて、実はそこで801ちゃんとニアミスしている可能性もあるんです(笑)。801ちゃん(当時中学生)もそこに朝から並んでいたらしいので。そういう意味でいうと、オタク的な人達とはニアミスしながらも交わらずにきたんですけど、今の若い人達はネットがあるから交流できていいなあと。

―― 同人イベントみたいなものには参加されなかった?
社会人になって、ネットで色々やりはじめてから知り合った人に誘われてコミケにいったのが初めてなんですよ。そういうこじらせ方をしたことも作風に影響しているのかなと。今なら調べ方もわかるんですけど、中学とか高校の頃はネットも携帯もないし、全く情報がないから、同人誌の即売会といっても、それどこでやってるのっていう。

dww012_AjicoKOJIMA_pic4―― 2006年春に、御薗橋801商店街のマスコットキャラクター「801ちゃん」がきっかけになって今の奥さんをモデルに『となりの801ちゃん』を描き始めるわけですよね。
最初は、ゆるキャラとしてネットで話題になっていて。名前も「801ちゃん」でデザインも衝撃的だったので(笑)。それで漫画を描き始めたら、すぐに1日5000ヒットくらいになって。別名義でこっそりやろうと思っていたら、すぐに801ちゃん本人にも知り合いにもバレて。そのまま現在に至ります。801ちゃんにはすごく怒られましたね(笑)。

―― サイトで公開した『となりの801ちゃん』が大反響を呼んで、宙出版から書籍化されるわけですが、出版することになって作業的には何か変化はありましたか?
最初は本にすることなんて考えてなかったので、解像度を変えて手直しする必要があったくらいで、特にはありませんね。トーンの付け方は昔と今では少し変わっていて、最初は結構はみ出すように塗っていたんですけど、今はちゃんと線に収める感じで描いています。基本的に今も作業のスタイルは変わらないですね。

―― ペンタブレットを使い始めたのはいつ頃からですか?
『orange star comics』の最初の頃は、スキャナで取り込んで、マウスでトーンを貼る部分を選択して塗っていたんですけれど、しばらくして電器屋で見つけたFAVO(F-401U)を10000円くらいで買ったのが最初です。マウスで神経使いながら塗っていたのが、ペンになってシャーって描けるから楽だなと。でも、モニターも800×600と狭く、FAVOも小さいサイズだったので、細かいところを塗るには画面を大きく拡大して塗ってはズラしてを繰り返していて。大きいサイズのFAVO(CTE-640)に買い替えたときにすごく楽だなあと、進化を感じました。

―― ネットで他のイラストを公開しているサイトを見たりはしていたんですか?
当時はADSLも普及前で、回線も遅かったのであまりなかったです。だから自分の絵もできるだけ軽くすることに注意してました。白黒で描いた絵をGIFにするときに8色まで減色しても雰囲気が変わらないまま、かなり圧縮できたんですよ。色もトーンカーブで調整して寄せたりして。絵で勝負するというのは最初から諦めていたので、クオリティを上げるよりはネタとスピードでいこうと。

―― 現在の作画環境はどのようになっていますか?
少し前のDELLのPCで、CPUはCore 2 Duo(2Ghz)に2GBのメモリと500GBのHDD。モニターはDELL純正の21.6インチで、Photoshop 5.0を使っています。新しくしたいなとは思いつつ、重くなったらやだなって。ComicStudio 2.0も持っていて色々やってみたいと思っているんですけど、鉛筆で描いたのをスキャンして塗って、グレースケールで出力するならPhotoshopでいいやと。

dww012_AjicoKOJIMA_pic5―― 基本的に線画は紙に鉛筆で描かれているんですか?
紙に描いて、それをスキャンして色を付けるのにペンタブレットを使います。801ちゃんを描いているときは、普通のコピー用紙に枠線だけ印刷してあるものを使っています。鉛筆で描くだけなので、漫画専用の原稿用紙みたいな強度が必要ないんです。取り扱いが楽なので、他にも鉛筆で描いてスキャンしている人は似たようなことをしてるんじゃないかと勝手に思ってます。

―― 原稿は、どれくらいの解像度で作業されていますか?
元々、Webだけでやっていた頃はスキャンする段階で600×450ピクセルみたいな軽いデータでしたが、今はだいたい原寸で、600dpi、4000×7000ピクセルくらいのサイズになります。ただ、レイヤも線画と、その上にトーン用のレイヤの2枚くらいなので、作業的にはそんなに重くないですね。

―― カラーイラストを描く時も基本的には同じですか?
カラーを描くときは、少し線の方を綺麗にしないといけないので、トレス台を使って、粗く描いた線の上からクリンナップして、それを取り込んでから塗っています。

―― ペンタブレットを使う上で、なにか工夫をされていたりはしますか?
Amazonの段ボール箱を加工してペンタブレットを置く台を自作しています。それをモニターの前に置いて描く。モニターとペンタブレットが離れていると、微妙に感覚がズレてきちゃうので。この台を使うと、モニターとペンタブレットが近づくので、視覚的にも手先の延長線上になってやりやすいんです。描いている最中はキーボードを使わないので、横に置いておいて。他には、FAVOの表面に紙を貼ったりしていたことがあります。テープの跡が残ってるんですけど(笑)。

dww012_AjicoKOJIMA_pic6―― 普段はFAVOを使われているということで、Cintiq 21UXを触られてみていかがですか。
すごい、文明が一気に進化した気がします。描きやすいですね。普段から液晶ペンタブレットを使っている人に比べると全然使えてないけど、初めてのペンタブレットでこんなに描けなかったです。Cintiqは、筆みたいなシュワっと出る感じの線を出しやすい気がしますね。
 
―― 最近では、801ちゃん以外でも『お義母さまはネコ!』や『ついった!‐4コマで楽しむとなりのTwitter‐』などお仕事も増えていますね。
801ちゃんを始めた頃、ちょうど体調を崩していて上手く波に乗り切れずに今に至っているので、これからぼちぼちやっていきたいところですね。お仕事だとやはりプレッシャーがあるのと、ちゃんと絵を描いてきた人に比べるとやっぱりヘボいので、弱ったなあということはあったりしますね。絵の勉強とかを全くしていないので……。
作業的にも、話を作る作業は効率化できないので。ネタを思いついたり降りてくるのを待たないといけないし。テンションが下がっているときに描いたネームを清書してみると、面白くなかったりするんですよ。そういうところで、まだプロになりきれていないのかなと。

―― ネタは常にストックしているんですか?
思いついたらメモしたり、無理やりひねり出すこともありますけれど。いま、『SPA!』の「週刊チキーダ!」というページで漫画を描かせていただいていて。それは時事ネタとかニュースを見たときに、ふと思いつくことが多いですね。あとは、ネタに詰まった時によく見るのが、「世界の豆知識500」みたいなハウツー本とかです。人の典型的行動とかって、ちょっと軸をズラすだけでネタになるので。自分では、キャラクターが弱いのが弱点かな、と。801ちゃんの場合は実物がいますからね。なんというか、歪みのないタイプの人間なので(笑)。

dww012_AjicoKOJIMA_pic7―― 『となりの801ちゃん』の単行本では、ブログで描いたもの以外にどれくらいの作業が発生するんですか?
今は8割くらいが描き下ろしですが、描き下ろした内の半分くらいはボツになるんです。実際に描いた後に編集さんが並びを見て決めたりするので、実際使えないネタが発生して、次の巻に回したりお蔵入りしたりするみたいな感じですね。でも、80本全部ダラっと載せるよりは厳選した本数の方が面白くなっているので。ネタ先行で、描いたものを組み合わせて本になっていくという、連載ありきとは違う作り方ですね。

―― 今は『801ちゃん』がお仕事のメインですが、他にやってみたいもの、野望みたいなものはありますか?
『orange star comics』で描いているようなものが単行本にならないかなあ……と。あとは、やっぱりカラーイラストなんかを綺麗に描けるようになりたいですね。趣味でアニメとか作ってみたいというのもあります。液晶ペンタブレットだとすごくやりやすそうですよね。
課題としては、一枚絵は未だにどうしていいかわからないですね。自分の絵はペンでハッキリ描いた絵と比べると弱いので、雑誌とかに一緒の誌面で載ると浮いちゃうんですよ。悪目立ちしないようになんとかしたいんですけど、絵としてはある程度認知されていますから、それを直すと逆に売りがなくなってしまうことにもなるので……。単行本第5巻でも、徐々にですが、比較的パッキリさせながらぼんやりさせるというギリギリのラインを探しつつ描いています。

―― 最後に、小島アジコさんにとってペンタブレットとはどのような存在ですか?
長い間、ペンタブレットを使っていますけれど、自分はペンタブレットのことをよく知らなかったなあと。芯の種類とか、ボタンの機能とかをワコムさんに伺って、お爺ちゃんが携帯電話と紙の電話帳を持っていて、「それ登録できるんだよ!」って教えられた感じですよ(笑)。
 
 
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