2014年05月02日(金)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 011
漫画家・イラストレーター:濱元隆輔

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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漫画家・イラストレーター

濱元隆輔

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『ぷちえう゛ぁ』のキャラクターデザインで知られ、アメコミの影響を受けた独特のスタイルで描くイラストが幅広い層に支持されている。東京工芸大学在学中の2001年に『けろけろ―緑の誓い』(矢島さら/徳間デュアル文庫)の挿絵でデビュー。アンソロジー漫画を多数手がけた後、2004年『もえよん学園』(アクションコミックス)、『LR 少女探偵団』(KRコミックス/完全版はフレックスコミックス)の連載をスタートし、アニメ『UG☆アルティメットガール』(メディアワークス)のコミカライズや、『うれっこどうぶつ』(マジキュー)、『ホワイトカオス』(ACTION COMIC SEED!)の漫画作品や、イラストーリー『ねこのさかうえ』(文:小池倫太郎/フレックスコミックス)、ライトノベルのイラスト等で活躍するほか、2007年には『Compass』(Image Comics)のアーティストとしてアメコミデビューを果たしている。現在は『Webコミックゲッキン』(エモーション)で自身初の本格ストーリー漫画『ウサギ ルリカラクサ』をWeb連載中のほか、人気アニメのキャラクターを立体化するフィギュアシリーズ『R-style』(バンダイコレクターズ事業部)のデザインを担当して好評を得ている。

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―― 濱元さんが絵を仕事にしようと思われたきっかけは?
dww011_RyusukeHAMAMOTO_pic1小さい頃はピカソみたいな画家に憧れていて、漫画も、親の『コボちゃん』(植田まさし)や『ピーナッツ』(チャールズ・M・シュルツ)とか姉の『りぼん』とかを読んでいたのが、14歳の頃に、偶然、『新世紀エヴァンゲリオン』の第1話を観て衝撃を受けて。そこから漫画やアニメを意識して観るようになりました。
「こんなすごい絵の世界があるんだ」とCLAMPさんに尊敬の念を抱いたり、『ドラゴンハーフ』(富士見書房)の見田竜介さんの独特の描線や、トーンワーク、色使いに影響を受けたりして。「肌色はコピックの○番を使っている」みたいなコメントを頼りに「見田先生が使っている画材を使えば自分もこれが描ける!」と思って、少ないお小遣いから1本、2本とコピックを買っていました。ちょうど『コミッカーズ』(美術出版社)も創刊されて、プロの技術を見ることができるようになったのも大きかったです。
高専を3年で辞めてしまったのですが、大検予備校でいろんな世代の目標をもった人達と出会って、「諦めなければ夢は実現できるんだ」と、美大を目指して美術予備校にも通い始めて。デッサンも初めての経験でつらいけど、やめたら美大に行けない。ただ漫画家になりたいというところから始まって、そこで初めて美術の基礎を学びました。

―― デジタル作画に触れるようになったのは?
小学生の頃から叔父のMacを触って、キッドピクスで落書きをしたりはしてました。高専に入って、プロじゃなくてもインターネットで絵を描く人が沢山いるんだと知り、自宅でネットが使えるようになってからはテレホーダイで夜中じゅう絵描きさんのサイトを見て回りました。
それで自分でもCGを描くようになり、中古のArtpadを買って、高専にあったスキャナで線画を取りこんでフロッピーで持ち帰ったりして。最初はレイヤを分けることも知らずに一枚で塗っていたりしましたが、ネットや本で勉強して。99年頃には自分のWebサイトを作っていましたが、本格的にデジタル絵に取り組んだのは、2000年に大学に入学して上京すると同時に、iMacとFAVOを買ってからですね。3D美少女ブームにのってShadeに挑戦して諦めたりもしました(笑)。

―― その頃にはもう漫画を描かれていたんですか?
高専の頃に、かとうひろし先生という30半ばを過ぎてデビューされた漫画家のWebサイトに出会ったことが本格的に漫画家を目指す転機となって、メールや掲示板で色々なことを教わったんです。それまではどんな道具を使うのかも知らなかった。それで半年に一本ぐらいですが投稿をするようになって。東京の大学を選んだのも、編集部に持ち込みができるからだったんです。
それで毎月『月刊少年ガンガン』(当時エニックス)に持ち込んでいたんですけど、賞も最終選考どまりで結果が出ずに悩んでいた時、編集さんの助言でイラストの持ち込みを始めて。ライトノベルの編集部に毎月10点は持っていったんですが、なかなか芽が出なくて。
dww011_RyusukeHAMAMOTO_pic4大学のキャンパス移動で厚木から東京に移ったのと同時に、もっと自分の絵を知ってもらう場を作ろうとコミティアに参加し始めて、同人と持ち込みで忙しくしていたらメールでオファーをいただき、2001年春に『けろけろ―緑の誓い』(矢島さら/徳間デュアル文庫)の挿絵を描いたのが最初の商業作品です。
その後、ファミ通文庫に持ち込みしていた縁で、エンターブレインのアンソロジー漫画のお仕事をいただくようになって。ComicStudioも無い頃で、それまで漫画はアナログで描いていたんですけど、ぼちぼちデジタルを使う人が出てきていて、自分も試行錯誤しながらデジタルで漫画を描き始めました。
大学卒業後、アンソロやイラストの仕事はしているけど、プロとして代表作や定期連載があるわけでもない中途半端な状態ではダメだと。覚悟を決めて、アンソロジーの出版社に「どんなものでもいいので仕事ください」と電話しまくって、月に4本とか描いてギリギリ絵だけで生活できるという状態を続けているうちに、オリジナルのお仕事のお話をいただけて。2004年から『もえよん』(双葉社)で吉崎観音さん原案の共作『もえよん学園』の連載を、『まんがタイムきらら』(芳文社)で初めてのオリジナル連載『LR 少女探偵団』を始めることになりました。

dww011_RyusukeHAMAMOTO_pic2―― 最初からデジタル作画環境で漫画の仕事をスタートしているんですね。
『もえよん学園』とほぼ同時期に『UG☆アルティメットガール』(メディアワークス)のコミカライズの仕事がスタートすることになって、ちゃんとした仕事環境を作ろうと考えて。ペンで描いたのを取り込んで、トーンを貼ってという作業をしていたら間に合わないし、B4の商業原稿をA4スキャナで分割して取り込むのも効率が悪い。それならフルデジタルで描こうと、思い切ってCintiq C-1500X(G)を買って、当時はMacだと最新のComicStudio ver.2.0が使えなかったのでWindowsマシンを導入して。そこから原稿はフルデジタルで作業するようになりました。

―― 濱元さんといえば黒を大胆に使ったイラストが印象的ですが、初期のカラーはだいぶ雰囲気が違いますね。
当時はPainterで水彩塗りで描いていたんですが、それだと月刊連載でカラーの仕事に対応できないので、Photoshopでアニメ塗りに切り替えたんです。
最初は漫画でもキャラにベタは塗ってなくて。連載でぶっつけ本番でComicStudioを使い始めたらトーンを使いすぎて、印刷されたものを見たら素人っぽくて恥ずかしく思えてきて。漫画は白と黒で表現するものだし、どこまでもトーンで中間色を表現していたら効率もわるい。それで『UG☆アルティメットガール』の途中から突然、ベタを塗るようになりました。
dww011_RyusukeHAMAMOTO_pic3『ヘルボーイ』(マイク・ミニョーラ)の影の付け方や表現が好きだったんですけど、萌えイラストでそれをやる人はいなかったし、編集さんからも「それは無い」と言われていたので、さすがにカラーではやれなかったんですが、仕事も回りだして好きなアメコミを買ったり、カートゥーン専門チャンネルを観たりできるようになると自分の中でアメコミ要素が大きくなってきて。思い切り好きなようにやろうと『ホワイトカオス』(双葉社)からはアニメ塗りのイラストでもベタを入れ始めて。
漫画も『LR』の頃はカラーでデザインした絵をモノクロに落とし込んでいたので、髪の毛にトーンを貼っていたのを、「赤はベタ、水色は白でいい」と自分の中で両極化できるようになって。モノクロ主体でデザインしたキャラクターに色を置いていく様にしました。

―― ベタによってメリハリが出て、漫画の絵として見た目のインパクトが出ますね。
でも、アニメ塗りにして、絵柄もどんどんカートゥーン的な極端な線にしたりベタを使う様になって漫画家としては個性が出てきたかもしれないけど一般受けはしなくなるんじゃないかということで、『ホワイトカオス』を描いている間は悩みっぱなしだったんです。そんな時に、バンダイさんから『ぷちえう゛ぁ』の話をいただいたので、本当にびっくりしましたね。

―― 14歳でセカンドインパクトに遭遇しただけに『新世紀エヴァンゲリオン』に関わる仕事は重いですよね。
『エヴァ』のアンソロジーに描いていたのを評価していただいて。自分の絵柄で悩んでいる真っ只中に『エヴァ』を描くとなって、「どうすればいいんだろう!」って頭がおかしくなりそうで。「濱元さんの絵で描いて下さい」と言われて思い切ってアニメの絵柄とは全然違うようなディフォルメの方法で、色使いもアニメ通りではない派手な感じで、ベタも置いて。
最初は不安だったけど、GAINAXの方も面白いと言ってくれて。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』の公開でエヴァを知らなかった若い人や女性ファンがキャラクターやグッズを気に入ってくれたおかげで、あっと言う間に『ぷちえう゛ぁ』関連の仕事が増えて、自分の絵を知ってくれる人が増えたのが嬉しかったですね。

―― 大きなお仕事をしたことで、ご自身の中で何か変化はありましたか?
自分以外の人が「濱元隆輔らしさ」ということを言うようになって、改めて自分らしさを意識するようになりました。『ぷちえう゛ぁ』のフィードバックで、以前よりも明るい、パキパキしたトーンの色使いになったり、瞳のハイライトもキラキラした感じに描くようになったり。人から意見をもらうことで絵も変わるんだなと。

―― 最近のお仕事としては、『ウサギ ルリカラクサ』(『Webコミックゲッキン』)がありますが、これまでの作品とは違うイメージの漫画ですね。
『ぷちえう゛ぁ』で認知されたことで、濱元はギャグ漫画でSDキャラの人だという印象が強くなったんですね。このままだとギャグ漫画しか描かせてもらえなくなると思って。dww011_RyusukeHAMAMOTO_pic5「ストーリーをやりたい」と言うとほとんど渋い顔をされたんですけど、ゲッキンさんは「むしろそれでやりましょう!」と言ってくれて。実績を残すためにもやるしかないと頑張っているんですけど、大変ですね。爆破オチで終われない(笑)。
毎回ちゃんと「引き」を作ったり、まじめにキャラクターを描かないと駄目なんだということを、連載が決まってネームを描き始めてから気がついて、びっくりしましたね。描ける描けると思っていたら全然描けない。それであわてて、色々な漫画を読んで勉強しました。
その頃はアメコミ9割で、ほとんど普通の漫画を知らずにいて。自分の中にある普通のストーリー漫画の感覚は姉が読んでいた少女漫画だったので、『ウサギ ルリカラクサ』も意図的に絵柄やコマ割りを少女漫画っぽくしています。キャラクターに感情移入して過去の辛い気持を思い出して苦しくなったり、ストーリー漫画はすごく大変だということを現在進行形で体験していますが、今はギャグ以外の自分という面を見せることが必要だと思うので。

―― お話を伺っていると、とても戦略的にお仕事をされてきている印象です。
色々な自分の可能性を取捨選択した結果、今があるので、それを守っていければいいかなと思っています。
『ぷちえう゛ぁ』で作画だけを担当しているのも、『LR』や『うれっこどうぶつ』のギャグで描いたら作品が崩壊すると判断して(笑)。売れるために「自分は絵に徹しますからネームはお願いします」と。絵も他の漫画と違って、レイやアスカの髪の色にトーンを貼っているんですよね。
フィギュアやグッズが出て、『エヴァ』というタイトルに支えられながら多くの人と関わってやる仕事なので、dww011_RyusukeHAMAMOTO_pic6あくまで自分はキャラクターデザインとして正しく『ぷちえう゛ぁ』の世界観を発信する役割の一つであればいいんです。
その流れで『R-Style』(バンダイ)というフィギュアの仕事をやらせてもらっているんですけど、それは色々な作品のキャラクターを自分の絵でフィギュア化するシリーズで。原作サイドが納得してくれる造形や、立体化した時の見栄えを意識してデザインしていて。そういう他人を意識しながらする仕事と、『ウサギ ルリカラクサ』のように自分がいま表現したいことを追求する仕事を、それぞれやれているのはとても幸せですね。

―― 現在の作画環境について教えていただけますか?
Mac Proの8コアモデルにCintiq 21UX(DTK-2100)を繋いで、ComicStudio EXとPhotoshop CS4をメインで使っています。今はネームからすべてComicStudioなので、ほぼペーパーレスです。ペンはノーマルを使っています。以前はサブデバイスにワコムのスマートスクロールを使っていたんですけれど生産中止になってしまったのでBelkinのN52teというゲームデバイスを使っていますが、右利き用なのでパームレストにタオルを挟んだりして工夫して使っています。スマートスクロールは絵を描く人のために特化されていて、作画ツールとの親和性も高かったので、復活してくれたら大歓喜ですよ(笑)。

―― 今後やってみたいお仕事の方向性とかはありますか?
海外に持ち込みをしたいですね。実は2007年に一度『Compass』(C.B.Cebluski,Akihide Yanagi,Ryusuke Hamamoto/Image Comics)という作品でアメコミデビューしているんですけど、コミュニケーションやスケジュールの問題でなかなか上手く進まなかったんです。dww011_RyusukeHAMAMOTO_pic7日本で描いている作品が海外の人にも届けばいいんですけど、今はなかなか難しくて。言葉や文化の壁、人種、宗教、歴史の違いはあるんですけど、いつかは海外で活躍して、アメコミやカートゥーンに触れることで自分が成長してきたことのお返しをできればと。
以前から海外向けに作っているblogやTwitterで交流する中で、力を貸すよと言ってくれる人もいて。来年、自分の作品を気にいってくれた4th Dimention Entertainmentという出版社から『LR 少女探偵団』の英語版が出版される予定です。完全版は分厚いので、2冊に分けて海外向けにカバーも描き下ろしにして、ベストな形で届けたいと思っています。
直近では、『月刊ComicREX』1月号(一迅社)で『quip』という作品を描いていますので、読んでいただけると嬉しいです。
 
―― 最後に、濱元さんにとってペンタブレットとはどのような存在ですか?
鉛筆や絵筆、コピックと同じ画材の延長にあるものだと思っているので、一年の中で最も長く触っている画材かな。世に濱元隆輔の名前で出ている単行本は全てCintiqで描いているので、もう、これ無しでやれといわれても、描けないですね。
 
 
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©Bonten/Wacom