2014年05月09日(金)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 010
漫画家:蒼樹うめ

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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漫画家

蒼樹うめ

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同人活動の傍ら、PCゲームメーカー「ねこねこソフト」のWebサイトで4コマ漫画『諸葛謹』を発表する他、宙出版のアンソロジーコミックに参加して密かに支持されていた。2004年『まんがタイムきららキャラット』4月号にて『ひだまりスケッチ』で連載デビュー。『ひだまりスケッチ』『ひだまりスケッチ×365』『ひだまりスケッチ×☆☆☆』と3期にわたるアニメ化では、本人も「うめ先生」役で声優を担当したり、Webラジオ『ひだまりラジオ』に出演するなど多彩な活躍をみせ、話題を呼んだ。00年代後半に勃興した「萌え4コマ」を代表する漫画家のひとり。『ひだまりスケッチ』でもタッグを組んだアニメ制作スタジオシャフトと新房昭之監督、人気ゲームメーカーニトロプラスのシナリオライター虚淵玄によるアニメ『魔法少女まどか★マギカ』ではキャラクター原案を手掛けた。

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―― うめ先生が漫画家の道に進まれるようになったきっかけは何ですか。
小学生の頃、『りぼん』(集英社)に憧れて、ノートに描いた漫画を友達と見せあいっこしてました。それから『ウィングス』(新書館)のB6判のコミックスにときめくようになって。dww010_UmeAOKI_pic1『ドラゴン騎士団』(押上美猫/新書館)が書店で平積みされているのを何だろう? と手にしたのが最初なんですけど、大きいサイズの本で、絵の雰囲気も少女漫画とちょっと違うし、ファンタジーとかジャンルも広くて。月刊の『ウィングス』は買えなかったので、季刊の『サウス』(新書館)を買って、高河ゆん先生のカラーページを切りぬいて保存したりしてました。
その頃に、『COMIC BOXジュニア』(ふゅーじょんぷろだくと)で同人誌というものを知って、アニメイトに委託されている本を読んだりして、中学1年生にして晴海で開催されていたスーパーコミックシティというイベントに行ってしまって(笑)。

―― かなり早い段階で同人文化に触れていたんですね。
「こういう表現の場があるのか!」と。絵は自分でも描いていたので、同人誌を作ってみたいと思うようになり、中学3年生の頃に教習所の2階の会議室でやっているような小さなイベントに参加しました。『サムライスピリッツ斬紅郎無双剣』(SNK)のコピー同人誌を5冊作って、2冊くらい友人が買ってくれて(笑)。当時はインターネットも無かったので、マンガ専門店に置いてあるペーパーで情報を得ていました。ゲーセンノートなんかもありましたね。
それから、池袋で開催されていた大きいイベントにも参加するようになって。友人づてに、新しくPCゲームのメーカーを立ち上げるので説明書のイラストを描かないかと誘われたのが、最初のお仕事ですね。そのままサイトで4コマ漫画の連載をするようになって。大学2年生のころに、宙出版さんのアンソロジー本を見た編集さんから声をかけていただいて、『まんがタイムきららキャラット』(芳文社)2004年4月号から、『ひだまりスケッチ』を描かせていただくことになりました。

dww010_UmeAOKI_pic2―― 商業誌での連載デビューが決まった時はいかがでしたか。
驚きはしたんですが、なんとなく3回で終わると思っていたので(笑)、そんなに「高いハードルを越えた!」という感じではなかったんです。4コマ漫画家になるとは思っていなかったし、オリジナルも初めてなので「できるかな?」というのがあったり、まだ萌え4コマ漫画も少なかった頃で、『きらら』を読んで探り探りやっていました。

―― 在学中に連載をスタートされているのですが、美大に進まれたのは、最初から絵を仕事にしたいと考えていたからですか?
最初は漫画の専門学校に行こうと願書まで出したんですけれど、みんな同じように漫画を目指している環境だと自分の世界が狭まる気がしたので、1年浪人して美大のデザイン情報学部に進みました。美術予備校では、美大受験目指して頑張ってきた人達の中に何もかも初めてという状態で飛び込んだので、初めからすごく差があって精神的には厳しかったですね。

―― デザイン情報学部ということは、そこでデジタル制作環境に触れられたのでしょうか。
何はともあれMacを触るところからでしたね。まだPCを持っていない人も多かったので、かなり初歩から教えていただきました。私は家にPCがありまして、いつ頃からさわっていたか覚えていないんですが、初めてPCで描いたのが『To Heart』(Leaf,1997)のマルチというキャラなので、その頃ですね(笑)。
Windows95のPaint Shop Proというツールを使って、マウスで色を塗っていたんですけれど、まだペンタブレットを使ってる人が少なくて、髪の毛とかを細かく塗る時は、塗り分け部分の線をアナログで描いて、それをスキャンして選択範囲にするみたいな面倒なことをしていました。

dww010_UmeAOKI_pic3―― そもそもPCで絵を描いてみようと思われたのはなぜですか?
当時はPCゲームがすごく盛り上がっていたんです。『ピュアガール』(ジャパン・ミックス)というPCゲーム雑誌に掲載されている絵描きの方々がすごく上手くて、特に表紙のCHOCOさんのイラストはCGでしか描けない感じがして、憧れました。オリジナルのピンナップとか、ネットの素敵なイラストサイト紹介とか、CGのHowToもすごく最先端な感じがしてかっこよかったんです。表紙もマット紙でデザインもお洒落で、自分もこの雑誌みたいなイラストを描けたらと思いました。

―― 初めてペンタブレットを使われたのはいつ頃ですか?
美術予備校に通ってる頃にマウスで塗ることに耐えられなくなり、「とにかくペンタブレットがないとCGは始まらない!」と思って、初代Intuosを秋葉原の路地裏の地下にあるお店で15,000円くらいで買いまして。それで同人誌の表紙を塗ったり、ゲーム会社のイラストやWeb漫画のお仕事をしたりしていました。最初のアンソロジーのお仕事はアナログでスクリーントーンを貼っていた記憶があるんですけれど、後はほぼデジタルですね。

dww010_UmeAOKI_pic4―― 漫画原稿を描かれるときのワークフローはどうなっていますか?
文字プロットで各コマの内容まで細かく書いておいて、それを元にコピー用紙に下描きをして、そこからトレスして原稿用紙にペン入れです。最初に細かく決めてしまうので、いわゆるネームを描いて台詞のバランスをとったりしないんです。ペン入れは、しばらくシグノの0.28mmを使っていたんですが、最近またタチカワのGペンに戻しました。
仕上げは原稿をスキャンして、Photoshopのグレースケールでトーン部分を塗っていきまして、最後にグレーのレイヤだけ統合してから、フリーウェアを使ってトーン化しています。

―― カラーイラストの場合はいかがですか?
ラフからペン入れまでは漫画と同じでアナログです。ラフが粗すぎる場合は一度PCに取り込んでクリンナップしてから、印刷したものにペン入れしたりします。色塗りは、時間がある時はSAIで、あまり余裕がない時は慣れているPhotoshopを使います。お仕事だと解像度が足りないことがあって、600dpiでA4サイズの絵が描ければ、もう少しSAIを使っていきたいんですけれど……。

―― 現在の作画環境はどのような構成ですか?
OSはWindows XPで、Photoshop 5.0を使っています。CSも持っているんですけれど、やっぱり5.0が手になじんでいるので。新しい効果とかも学習しないととは思いつつ、ずっと5.0のままです。PCはCPUがCore 2 Duoで、HDDはもりもり積んでいるのですが、メモリが2GBで、Photoshopが急に落ちたりするのでそろそろ買い替えようかと……。モニターも学生の頃に買ったナナオさんのFlexscanの19インチで、パレットで画面が埋まってそろそろ限界なので24インチくらいにステップアップしたいです(笑)。

―― 愛着のある道具を使い続けるタイプですか。
愛着というか、もったいないお化けが……(笑)。壊れていなければ使うという基本精神で。スキャナも少し前までA4スキャナでB4原稿を2回に分けて取り込んでいたので、効率がわるくて。仕事に支障をきたすといけないので、最近やっとB4が取り込めるものに買い替えました(笑)。

―― ペンタブレットを使う上でこだわりとか工夫みたいなものはありますか?
いまはIntuos3を使っていますが、とくに変わったことはしてないような。ペン先も標準で、ショートカットもキーボードですね。ペンの消しゴムは使わないんですが、サイドスイッチを上下とも右クリックに設定します。サイドスイッチを右クリックにしておくと、マインスイーパーがやりやすいんです(笑)。旗を立てるのにカチカチって、マウスより早いです!

―― 連載デビュー作の『ひだまりスケッチ』は、アニメ化もされました。
最初にTBSから編集部に連絡があったと聞いた時は「実際に決まるまではまだいっぱい山があるはずだから、私に伝えてからダメになったらがっかりするのに! この編集さんはすぐに言っちゃうなんて!!」dww010_UmeAOKI_pic5と思って、あまり喜ばないようにしてました。半年くらいして、TBSとアニプレックスの方がいらして、シャフトさんでアニメ化したいというお話もそこで初めて伺いました。
色々な現場があると思いますけど、アニメの現場では私は素人なので、どれくらい自分が関わるかは現場のスタッフさんによって変わるんだろうと思っていまして。早い段階で、積極的になんでも言ってくださいといって頂いて、私としても嬉しかったので、うるさいくらいに関わらせていただいたんです。アニメのスタッフさんは、みんな親切で懐の深い方々です。

―― アニメ化されたことでご自身のお仕事に対する影響みたいなものはありましたか?
声がついたことがすごく大きくて、自分で台詞を書いていても声で聞こえるようになりました。声優さんがすごくよくて、他には考えられないばっちりなキャストで(笑)。吉野家先生は、アニメの元気さに引っ張られて漫画も少し影響をうけた気がします。アニメの絵も可愛かったので、原作をもっと可愛く描かないとって思いましたし。物理的なものとしては、アニメ第1期の頃は、関わり方も慣れていなかったので見事に原作のページ数が減るという影響がありましたね(笑)。

―― これまでにない反響も帰ってくるようになったのでは?
アニメを見て、名前を知ってくださった人がすごく多くなりまして。父が単身赴任先で飲み屋にいったら、近くに座っていた親子が『ひだまりスケッチ』を見ているという話をしてたから、ちょっと色紙を描いてもらえないかと言われたりとか(笑)。そういう、私の見えないところで知ってくださってる方がいるんだなというのが不思議な感じで嬉しかったです。

―― 第1期~第3期のテレビシリーズ終了後にも特別編が作られたり、イベント『ひだまつり』が開催されたりと楽しみも多いですね。
本当にありがたいことです。この10月末にも『ひだまりスケッチ×☆☆☆』の特別編DVDとBlu-rayが出るので、ジャケットとブックレットで1枚ずつ描き下ろしをやらせていただきました。キャストの声優さん達も、いまだに仲良くしてくださっているので、そういうのも嬉しいですね。

dww010_UmeAOKI_pic6―― 梅酒『うめ物語』のラベルを手掛けられたことも話題になりました。
コみケッとスペシャル5in水戸というイベントに合わせて、町おこしのために何かつくろうということで、コミケット準備委員会の方がお話を進めてくださって。酒造さんが、私の描いた絵を入れる前提でお酒のほうも作ってくださったので、色もすごく可愛くて。飲み口も軽くて美味しいんです。女性にもおすすめです。

―― これからやってみたいお仕事や、挑戦したいことはありますか?
毎月、バタバタと仕事してしまっているところがあるので、どこかで勉強をする時間がほしいと思いますね。それこそCGの描き方とか、時間がないと色々試してみることができなくて、最短でできる作業でやってしまうので、新しいPhotoshopの機能を使ってみるとか、新しい機材に変えるのもそうです。

―― 漫画で描いてみたいテーマやジャンルはありますか。
色々あります。ファンタジックな物語とか、『ひだまりスケッチ』はあまり男性が出てこないので、少女漫画的な恋愛ものも描いてみたいですし、旅行記とかも描いてみたいですね。バトルものもやってみたいですが、そのへんは技術がないので修行しないと無理だと思いますけど。

―― 同人サークル「apricot+」でイベントにも参加されていますが、同人活動はどういった位置づけですか?
dww010_UmeAOKI_pic7同人誌は、息抜きでもありつつ、商業ではやれないようなことを試させてもらえる場所でもあるので、本当にその時やりたいことだったり、やってみたいことを純粋にやれますね。どうしても時間に追われて、絵をはめ込んで本を作ってしまうことが多いので、もうすこしデザインをやりたいなと思っています。ただ、その根本としてはしっかり絵が描けないといけないので、本末転倒にならない程度に、新しいことにチャレンジしたいです。
あとは、もうすこし社交的になりたいです(笑)。最近は引きこもってばかりで、お誘いいただいてもなかなか予定も合わないことが多いので……。それこそ同人誌即売会に参加すると色々な作家さんと知り合えるので、イベント会場だけにならない程度には(笑)。

―― やはり連載中はまとまった時間をとるのは難しいですか。
割り切りが下手なので、「漫画のネタが出ないから気分転換にちょっと出かけよう」とかができないんです。後で締切が近づいて切羽詰まった時に「あの時に出かけていなければ」と思ってしまうのが嫌で。どちらが効率悪いかは、結果論なので解らないんですけれど。Twitterとかも、見られるときは見られるんですけれど、忙しい時は本当に何日もタイムラインを追えなかったりするので、そうすると急に付き合いが悪くなったと思われるのが怖い気がして。暇な時だけやりますというのも都合がいい気がして、あまり積極的に絡めずにいます(笑)。

―― 最後に、うめ先生にとって、ペンタブレットとはどのようなものでしょうか。
ないと困るものです。いまペンタブレットがなくなっちゃったら、どうしていいか(笑)。
 
 
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©Bonten/Wacom