2014年05月12日(月)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 009
漫画家:大和田秀樹

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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漫画家

大和田秀樹

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1998年に『たのしい甲子園』(角川書店/『月刊少年エース』連載)でデビュー。高校野球からキャビンアテンダント、果ては任侠ものや政治家、歴史上の人物まで幅広い題材を扱ったギャグ漫画で人気を得ている。自身のウェブサイトで公開していた4コマ漫画が元となった『機動戦士ガンダムさん』(角川書店/『月刊ガンダムエース』連載)で描く『機動戦士ガンダム』のパロディは独特の世界観で原作ファンからも愛されている。2006年にアニメ化された『大魔法峠』(角川書店)シリーズなどコアなファンに支持される作品の他、近年は『うんP先生』(角川書店/『ケロケロエース』連載)で少年誌での連載にも挑戦している。また内閣総理大臣「小泉ジュンイチロー」が人間離れした超絶技巧の麻雀で世界の政治家と渡り合う『ムダヅモ無き改革』は新聞・ニュース等でも話題となり、その名を広く知らしめた。デジタルガジェットに精通し、早くから漫画製作にデジタルツールを採用してきた「IT系漫画家」を自称している。

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dww009_HidekiOOWADA_pic1―― 漫画家になったきっかけは何ですか?
大学の漫画研究会に入るまではペンも握ったことがなかったんですけれど、やってみたら面白かった感じですね。それで、大学祭の同人誌に載せる作品を『ヤングアニマル』(白泉社)の賞に応募したら10万円くらいもらえたんで、いけるかもと思っちゃったんですよね。それから『少年エース』(角川書店)に持ち込んだのが新人賞に回されて、しばらく林崎文博先生のアシスタントをやって、97年に描いた『たのしい甲子園』の読切が好評で、そのまま連載になりました。

―― 当時の制作環境はアナログですか?
『たのしい甲子園』は基本アナログですね。建物のパースとか、手で描くと面倒な部分を少しデジタルで。99年に出た第2巻で初めて表紙をデジタルで描いたんですけれど、面倒で。わざわざフィルムに印刷して入稿したんですよ。『警死庁24時』(角川書店)からはトーン貼りもフルデジタルですが、レーザープリンターで印刷した原稿で入稿していました。

dww009_HidekiOOWADA_pic2―― データ入稿ができるようになったのはいつ頃からですか?
2001年の『大魔法峠』(角川書店)からですね。第2巻の『超・大魔法峠』から完全データ入稿になりました。それまではなかなか出版社側の受け入れ態勢ができていなかったんですよね。

―― 「IT系漫画家」を自負されていますが、PCに初めて触れたのは?
最初はFM-7というパソコンで、それで絵を描くのが好きで。X68000が買えずにPC-9801ユーザーになって、大学の工学部でSunのワークステーションやPhotoshopに触れて「PCでこんなに出来るんだ!」と思って。postscriptで出力したデータなんかを見て、「これがいつか線画で使えるようになるはずだから、自分で買える値段になったら導入しよう」と。
それで95年頃にDOS/Vショックで安くなったDELLのPCを買ったんです。最初から漫画を描くつもりだったので、600dpiは扱えないと駄目だったんですけど、Macではメモリが高すぎて。その点、DOS/V互換機は秋葉原で安価にメモリが買えましたからね。

―― その時代だと印刷の現場はMacのみでWindowsにはDTPのノウハウみたいなものは無いですよね。
そこは自分で考えてやってました。ページ単位では作画できなくて、1コマずつプリントアウトして貼りつけたり。シリアル接続のArtpad2を買って、トーン貼りとかに使っていました。ジャンク屋でACアダプタ無しのが売っていたので、自分で電圧を測って繋げたんですけど、それでも1万円くらいしましたよ。最近のペンタブレットは本当に安くて高性能ですよね。僕が初代のIntuosをいくら出して買ったと思ってるんだ(笑)。

dww009_HidekiOOWADA_pic3―― ペン入れまで含めてフルデジタル化したのはいつ頃ですか。
『ぶっちぎりCA』(角川書店)を始めた時ですね。ちょうどSAIのβ版が出たころで、使ってみたらすごくペンに近い描き心地だったので、これならいけるんじゃないかと。使っていたGペンの品質が悪くなった時期があって、どうもペン先を作っていたベテランの職人さんが引退してしまったらしいと。これは今のうちにデジタルに移っておかないと、年をとってからでは厳しいなと思って液晶ペンタブレットのCintiq C-1500Xが出た時にすぐ購入して、試行錯誤していました。

―― アナログとデジタルでそれぞれメリット・デメリットを感じることはありますか。
やはりデジタルはアンドゥが効くというのがいいですね。ただ、上達するのはアナログだと思います。特に漫画を連載するには、やり直しをしないで描くスピード、能力みたいなものが必要なので。アンドゥは絵を描くのが遅くなりますからね。

―― 原稿製作のワークフローはどうなっていますか?
まず紙にネームを描いて、鉛筆でセリフまで入れます。その作業は実寸の原稿用紙でやらないと、文字やキャラクターの大きさのバランスに違和感が出るんですよね。それをスキャンしてSAIで下書きからペン入れまで作業します。トーン貼りと仕上げはComicStudioとPhotoshopで。アシスタントには好きな方を使うように言っているので、背景の建物なんかはパース定規が便利なComicStudioで、トーン貼りはPhotoshopでみたいな感じですね。完成した原稿は自前のサーバーにアップして、編集さんにダウンロードしてもらいます。

―― 現在の作画環境を教えていただけますか。
自作PCでCPUはCore i7-960、メモリは12GB。SSDを3個ストライピングしています。OSはWindows7の64bitですね。モニターはCintiqを入れて全部で3面です。秋葉原で新しい部品を見つけると試してみる。dww009_HidekiOOWADA_pic4LEDで青く光るファンとか、蓋を閉めたら隠れて見えないんですよ(笑)。昔はアシスタントのマシンも僕が作っていたんですけど、最近は時間がなくて完成品を買っていますが、安いですよね。漫画原稿ならCore2以上、メモリも4GBあれば性能は十分ですから。
Cintiq 21UXはスタンドをはずして、自作した机にはめ込んで使っています。髪の毛の線なんかを描くときに、肘に支点がないとだめなんで。正面のモニターにはそれぞれネットの画面や資料、過去に描いた原稿を映してます。見ないで描いていると「先月このキャラはネクタイをしていたか」とか忘れてしまうんですよね。

―― キーボード以外に何かサブデバイスは使用されていますか?
BelkinのSpeedpad n52というゲーム用コントローラーを使っています。ワコムのスマートスクロールが壊れてしまって。何度も直して、5台くらい買って、壊れたら新しいのにしていたんですけれど。スマートスクロールは新品があれば欲しいという人が多いですよ。

―― Cintiq 21UXも発売と同時に予約購入されたとのことですが、現在、所有されているペンタブレットは?
現行のCintiq 21UXが1台、旧型のCintiq 21UXが2台、Cintiq C-1500Xが1台、あとCintiq 12WXが1台あります。それとIntuosは1から3まで2~3枚ずつありますね。やっぱり階調が上がったりすると試したくなるんですよね。

dww009_HidekiOOWADA_pic5―― ペンタブレット機器に対して要望はありますか?
ハードフェルト芯の20本入りがあると嬉しいです。それと、前はCintiq 21UXの隣にCintiq 12WXを置いてレイヤーとかツール置き場にしていたんですけど、新型になって共通のペンが使えなくなってしまったので、Intuos4互換の12型が出るといいなと。
あとはもっと大きいのとか、解像度が高いのとか。受注生産でもいいからHD解像度のCintiqが欲しいです。世間的に需要があるかわかりませんが、漫画家なら100万円出しても欲しい物ですよ。漫画の原稿は600dpi、7000×6000ピクセルくらいのデータなので、一画面に表示すると、どうしても縮小されてアンチエイリアスがかかる。カラーならいいんですけれど、モノクロ線画になると細かい線が潰れちゃうんですよ。
その点でCintiq 12WXはドットピッチが細かいのが良いんです。実寸に近付くよりも、高い解像度で繊細な線が描けることの方が大切ですね。CG用途だと、どうしても色の再現性が求められるけど、漫画家からすればコントラストと解像度が一番なんですよ。

―― 最近では、電子出版など漫画をとりまく状況が色々と話題になりますが、お仕事をされる上ではいかがですか。
漫画家が集まるとお金の話しかしないですよ(笑)。10%の印税が、個人で電子出版すると70%になるなら、今の1/7売り上げればよくなる。でも実際問題、編集さんがいないと漫画を描けないですよ。dww009_HidekiOOWADA_pic6締切がないとモチベーションが続かないですから。デザインしたり宣伝したりというのも自分では出来ない。だから編集さんや営業さんが必要だと分かっていても、現金を目の前にすると心が揺らぐという状態です(笑)。
ただ、すでに漫画家として名が知れている人はいいですけど、電子出版だけだと新人が出てこられなくなる気がしますね。好きなものだけ描けばいい、同人誌的なものは作家を育てるには向いていないと思うんですよね。プロで食っていこうというなら、やはり新人のうちはダメ出しをされたりアンケートで揉まれたりしないと。出版社がなくなれば、若い人が漫画を多く描く機会もなくなってしまいますよ。

dww009_HidekiOOWADA_pic7―― 大和田さんの作品は、ギャグ漫画というベースの上で、かなり多様な内容を扱われていますが、今後取り組みたいテーマはありますか。
あまり深く考えていなくて、その連載を始める時に面白いと思ったもので枠を創って、キャラクターを作って描き始めると、なんでそれが面白かったのか思い出せない(笑)。そこまで枠を作って転がし始めれば、お話を回していくことができますからね。絵を描く作業は、もう趣味なんですよね。NHKの絵画教室とか観てますから(笑)。

―― 『大魔法峠』や『ムダヅモ無き改革』などアニメ化された作品はいかがですか。
原作者が口出して上手くいかなくなる話をたくさん聞いていたので、黙っていようと思って。脚本だけやってあとはもうお任せですよ。水嶋努監督は変なこと振ると喜ぶんですよね。「DVDのコメンタリーを裸になって撮りましょう!」とか言っても「えー、ウケるかな?」とか。やるのは嫌じゃないんだって(笑)。

―― 最後に、大和田先生にとって、ペンタブレットとはどのようなものでしょうか。
いやぁ、まさにペンです(笑)。ないと困る。かれこれもう何年もつけペンのペン先を買ってないですからね。
 
 
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