2014年05月16日(金)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 008
イラストレーター・キャラクターデザイナー:岸田メル

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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イラストレーター・キャラクターデザイナー

岸田メル

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五代ゆう『パラケルススの娘』(MF文庫J)のイラストでデビュー。杉井光『神様のメモ帳』(電撃文庫)や小野上明夜『死神姫の再婚』(B’s-LOG文庫)など、男性向け・女性向けを問わず数多くのレーベルでライトノベル作品のイラストを手掛けている。ガストの人気ゲームシリーズ「アトリエシリーズ」のキャラクターデザインに抜擢され、『ロロナのアトリエ~アーランドの錬金術士~』『トトリのアトリエ~アーランドの錬金術士2~』でその名を広く知られるようになり、いま最も注目されるイラストレーターの一人となった。オリジナルアニメ『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』ではキャラクター原案を手掛け、ゲームファン、アニメファンの間で大きな話題となったほか、『季刊GELATIN』2009年ふゆ号(ワニマガジン)や『鉄道少女百景』(一迅社)の表紙イラストなど、その透明感のある色彩をもった絵柄は数あるキャラクターイラストの中でもオンリーワンの魅力を放っている。

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dww008_MelKISHIDA_pic1―― 岸田さんがイラストレーターとしてお仕事をされるようになったきっかけは?
昔から漫画やアニメのキャラクターの落書きが好きだったんです。大学でデザイン学科に進んだのですが、すぐに辞めてしまって……。2002年ごろ、ネットのお絵描き掲示板に出入りするようになって、そこで描いた絵を公開するために自分のWebサイトを作りました。2004年に雑誌『季刊エス』(飛鳥新社)から声がかかったのが、商業で絵を描いた最初です。創刊から知っている雑誌だったので「是非!」と。

―― 本格的にイラストを描き始めたときには、すでにデジタル環境だったんですね。ペンタブレットを使い始めたのはいつからですか?
3ヶ月ほどマウスで描いて、ラチがあかないとintuos2のA5サイズを購入しました。これを使えば絵が上手くなれるはず、みたいな(笑)。マウスよりも速く描けるようになって、決めたところにピタッと線が引けるのがよかったですね。ただ、当時のお絵かき掲示板ツールでは、筆圧があまり関係なかったので、本格的に使いこなすのはPainter7を導入してからですね。
それから、ワンサイズ大きいintuos2を経てIntuos3に買い換えました。Intuos4も描き味が評判だったので、使ってみたら確かにすごかった。液晶ペンタブレットも気になっていたんですけれど、Cintiq 21にIntuos4のセンサーが載るのを待っていました(笑)。

dww008_MelKISHIDA_pic2―― やはりIntuos3からIntuos4への変化は劇的でしたか?
感知する最小筆圧がすごく下がって、ペンを軽く置いただけで認識してくれるのと、ポインターの精度も高いので、絵を拡大しなくても狙ったところに線が引ける。全方向に性能が上がって、より直感的に描けるようになりました。個人的に好きなのは、ファンクションディスプレイに文字を表示できる機能です。最初は「意味あるのかな」と思ったんですけれど、これがかっこよくて(笑)。

―― 現在のマシン環境は?
CPUがCore i7(3Ghz)でメモリは12GB積んでいます。OSはWindows Vista 64bitで、速いんですけれど対応していないものが多いので、Windows7に買い替えたくて……。モニターはI・O DATAの23インチのが安かったので。

―― ワークフロー的には、下描きの段階からデジタルなんですか?
『ロロナのアトリエ』の仕事をする前までは、線画はアナログでスキャンしていましたが、ゲームの仕事は最終的にモニターに表示される絵なので、それならはじめからデジタルで描けばいいと思って、それからはデジタルです。

―― ツールはどのようなものを使っているんですか?
SAI がメインです。デジタルで線画を始めたときに、これが一番線を引きやすかったので。他のツールに移して塗るのも面倒なので、できるところまでSAIでやってみたらいい感じで、これでいいなと。最後に少しだけPhotoshopでコントラストや色味の調整をして、納品データにしています。

dww008_MelKISHIDA_pic3―― デビューしてからは、ライトノベルのイラストを多く手掛けられていますね。
2005年に『パラケルススの娘』(五代ゆう/MF文庫J)の挿絵でライトノベルデビューしました。今よりも濃いタッチの絵を描いていて、アニメっぽい雰囲気を求めていた編集さんから「頭身をさげて」「目を大きく」みたいにダメ出しをされながら仕事をする経験も初めてだったので、戸惑いや挫折もありました。
当時は演劇とイラスト仕事を並行していて、これで食べていくという覚悟もなくふらふらしていたんですが、23歳くらいの頃に、将来を考えて実家を出て独り暮らしを始めて。普通に会社勤めするのは無理だけど、演劇もお金になり難いので、消去法で一番モノになりそうなイラストレーターの仕事を頑張ろうと。

―― 現在も地元の名古屋でお仕事をされているのには理由があるんですか?
デジタル全盛の時代なので、名古屋にいても問題なく仕事ができるのが大きいですね。基本的にはメールのやりとりだけで仕事が完結するし、顔を合わせて打合せする必要があるときも、東京まで新幹線で1時間30分くらいなので。県内のちょっと遠いところに行くより早いですから。

―― 最近ではTwitterでもコミュニケーションをとられていますが、直接、作品の反響が返ってくることはありますか?
いい反応は単純に嬉しいし、逆にネガティブな反応も、そういう感想を持つ人達にアピールするにはどうすればいいかを考える材料になりますよね。最近だと「みんな同じ顔に見える」とか言われるので(笑)、なぜそう言われるのか考えたり。逆に同じくらいの背格好の女の子の絵でももっと多彩な表現ができるようになればいいんじゃないかと、目標につながるので、基本的にはどんな意見もありがたいです。

dww008_MelKISHIDA_pic4―― 岸田さんの絵は、男性向けにも女性向けにも偏らない雰囲気と、透明感のある色彩が特徴的だと思います。
男性向けのフィクションに親しんで育ってきたことと、「Sa・Gaシリーズ」(スクウェア・エニックス)の小林智美さんやCLAMPさんといった女性的な絵の好みとの二つが自分の中でミックスされているのかな……できるだけニュートラルな方が、色々な仕事ができるので、あまり“それっぽい”絵にしないことは意識しています。
色彩については、自分が見て綺麗だなと思う色を塗っているだけなので、全然意識していなくて。元はくすんだ色が好きなんですが、仕事を始めたときに色々な人から「もっと明るい色で」と言われて、でもピカピカにするのも嫌で、自分の中で納得いく範囲で鮮やかにする塗り方を試行錯誤して、今の形になりました。

―― 最近では、Playstation3『ロロナのアトリエ』『トトリのアトリエ』(ガスト)のキャラクターデザインで注目されていますね。
RPGの仕事はずっと憧れで、「アトリエシリーズ」もプレイしていたので、コンペで採用されてすごく嬉しかったです。でも仕事を頂けたことはスタートでしかなくて、結果を出さないとダメだし、目先の仕事を片付けることに必死で、喜んでいる暇はなかったですね。ありがたいことに、2作目のお話も頂けたので、『ロロナ』が終わってもすぐ次の作業で息つく暇もなくて……。

―― ゲームの現場は、今までのお仕事と比べてどうでしたか?
ゲームは関わっている人がすごく多くて、絵のチェックも、ライトノベルなら編集さん1人通ればいいんですけれど、ディレクター、デザインチーフ、あとシナリオライターの3者を通らないとOKが出ないんですよ。誰かがNGを出せばやり直しなので、とにかく「こんな感じですか?」という案を次々出して、これがいいというのがあれば、クリンナップしてという作業の繰り返しで。これは初めての経験でしたね。

―― 『ロロナのアトリエ』『トトリのアトリエ』ではイベントグラフィックも注目される要素ですが、ゲーム中のイラストはどのように描かれているんですか?
dww008_MelKISHIDA_pic5レイアウトを最初に決めて、背景は専門のスタッフが描いてくれます。それと僕が描いたキャラクターを合わせて加工したデータを納品する感じです。結構な点数の絵を描かないといけないんですが、他の人が塗るとやはり違う絵になってしまうので……。だから「岸田メルは『ロロナのアトリエ』の原画の人」って言われるんですけど、原画だけでなく全部描いているんです!(笑)

―― メジャーなゲームタイトルを手がけたことで、自分の中で変わった部分はありますか?
これまでと違う層の人達に絵を見てもらえるようになったのは大きいですね。単純に量をこなしたことも、多くの人と協力して作品を作ることもいい経験になりました。仕事のスパンも長かったので、その間にやらなくてはいけない他の仕事もこなしつつ、これくらい長い仕事でもできるんだという自信にはつながりました。

dww008_MelKISHIDA_pic6―― アニメ『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』のキャラクター原案も話題になりました。
『神様のメモ帳』(杉井光/電撃文庫)の挿絵を見て指名を頂いたんですが、ちょうどゲームの仕事と重なっていて、アニメ業界の人とやりとりするのも初めてで、点数的にはそんなに描いていないんです。アニメの設定画ではなく自分のタッチで、本当に原案としてキャラクターの元になるイメージを描いた感じですね。メインビジュアルは好きなように描いていいと言われたので(笑)、スケジュールの都合があえばもっと描きたかったですね。

―― サークル「迷子通信」で同人活動も行われていますね。
本格的に同人誌に取り組んだのはゲームが出た後からで、コミケに出るのも次で6回目くらいです。仕事で細かいものや同じ物を描き続けていると嫌になってくるので、同人誌は読む人のことは考えずに僕が描いていて楽しいものをやろうと。ラフ的なイラストだけど興味がある人は手にしてくれればいいかなという感じでやってます。どちらかと言えば、自分の癒しのためというか。キチンとした絵は商業の方で見て下さいと(笑)。dww008_MelKISHIDA_pic7

―― 今後やってみたいお仕事というのはありますか?
ゲームやアニメは、これからも仕事を頂けるならやりたいですし、もちろんライトノベルも。基本的には今やっていることを長く続けていけたらと思っています。あとは何でも興味があるので、全然関係のない業界の人と仕事がしてみたいですね。パンフレットのキャラクターみたいなものとか。

―― 最後に、岸田メルさんにとって、ペンタブレットとはどんな存在ですか?
最初にネットで絵を描き始めてからずっとデジタルで絵を描き続けているので、本当になくてはならないものですよね。仕事をする上で体の一部と言っても過言ではないので、無いと困りますし、ワコムさんにおんぶにだっこ状態です(笑)。
 
 
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