2014年05月19日(月)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 007
イラストレーター:今泉昭彦

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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イラストレーター

今泉昭彦

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2002年に第4回えんため大賞イラスト部門優秀賞を受賞。『佐藤家の選択』(貝花大介/HJ文庫)の挿絵、アンソロジーコミックの版権イラストを手がける。現在は『週刊ファミ通』クロスレビューで殿堂入りした『絶対ヒーロー改造計画』(日本一ソフトウェア)を始め、『ジグソーワールド~大激闘!ジグバトル・ヒーローズ』(同)『Go !Go! Cosmo Cops!』『コードギアス 反逆のルルーシュR2 盤上のギアス劇場』(バンダイナムコゲームス)等、ゲームのキャラクターデザインを中心に活躍している。
世界的キャラクター「ハローキティ」と人気イラストレーターのコラボレーション企画「ハローキティといっしょ!」にも起用される等、ポップなキャラクターが老若男女幅広い支持を集めている。

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dww007_TeruhikoIMAIZUMI_pic1―― 今泉さんが絵の世界に入った経緯から伺えますか。
小学生の時に『キン肉マン』や『ガンダム』の模写を始めて、絵を描く楽しさを知りました。生まれて初めて買ってもらったコミックスが『キン肉マン』第14巻で、超人ばかり描くから人間が苦手だったんですよ。中学から高校にかけては、ゲームなしには日も夜も明けぬという感じで絵からは遠ざかった時期もありました。月に2~3枚しか描かないでいたのですが、高校で友達に「描けばいいのに」と勧められたのをきっかけに、本格的に絵を再開してプロを目指すようになりました。
しばらくはアルバイトとイラストの二足のわらじを履いていました。豚肉を解体したり、スピーカーが1台しかない古い映画館で骨董品みたいな映写機を回したり。豚肉解体なんかは特に面白いネタだと思うんですけど、絵の方には全然役に立っていないですね(笑)。

―― 本格的にお仕事を始められたきっかけは何ですか。
エンターブレインの第4回えんため大賞で優秀賞をいただいたことです。と言っても、実力不足な上に当時はメジャーな賞ではなかったので、受賞がすぐ仕事にはつながらなかったんです。だから、賞を手がかりに自分の足で営業して回って、少しずつ仕事と人脈を増やしていきました。すごい画力や器用さはないので、フットワークの軽さで勝負しようと思ったんです。会って話をすると、お互いの人となりが分かって仕事も交渉もしやすいですし。

―― デビュー直後は、アンソロジーコミックのカットが多かったですね。
『Fate』が一番多かったですかね。後はライトノベルとか地元アイドルのキャラクター化とかを少しずつ。
dww007_TeruhikoIMAIZUMI_pic2並行して、同人誌やサイトではオリジナルキャラクターを押し出して、独自のデザインを見せるようにしてきました。二次創作も好きだし流行のキャラクターを描く方が目立つのですが、オリジナルの方が安定した仕事にはつながると踏んでいるんですよ。
そういう仕込みの甲斐あって、ゲームの仕事はかなり来るようになりました。小学生の時にタイムカプセルに入れた将来の夢が確か、「任天堂の社長になる」だったんです。PSPの『絶対ヒーロー改造計画』、DSの『コードギアス 反逆のルルーシュR2 盤上のギアス劇場』『ジグソーワールド~大激闘!ジグバトル・ヒーローズ』……いろいろなゲームのキャラクターデザインを出来ているので、まあまあ叶っていますよね。

―― 『Go !Go! Cosmo Cops!』もヨーロッパで発売されていますね。背景を描きこむよりキャラクターで見せる手法は、ゲームを意識しているのでしょうか。
ゲームの場合、背景なしのキャラクター一体一体で印象を残さないといけないし、絵ばかり目立ちすぎても困るじゃないですか。格闘ゲーム世代なので、カプコンやSNKの一目で分かるキャラクターデザインは憧れです。
イラストレーターの武器としても、いろいろ持ちかえるよりひとつを研ぎつづける方が、切れ味がよくなると思っています。あらゆる分野で高いクオリティが出せる人は一握りなので、器用貧乏になって埋もれてしまうのが何よりこわいんです。だから、一点突破出来る武器に注力しようと。自分の武器は、シンプルではっきりした造形と色づかいのキャラクターなんですね。えんため大賞の選評でも、それが受賞の決め手だったと言われたんですよ。すっごく上手い人たちが淡い色彩で背景に凝る中で、テーマだった美少女を大きく原色で描いたのがよかった、と。

dww007_TeruhikoIMAIZUMI_pic3―― 「ハローキティといっしょ!」も、シンプルなデザインがはまっていますね。
女の子が安心して楽しめてどこに出しても恥ずかしくない、ギリギリのラインを狙いました。「萌え」があっても、かわいいから不快ではない。嘘ファッションだけど、現実にいたとしても受け入れられる。オタクっぽいと同時に、オタク以外の人が見てもかっこいい……という。髪型も好きなツインテールにしたんですけど、ツンデレ設定にはしなくて。
オタクでない人や女の人にも通じるバランスは、いつも目指しているものでもあるんです。殺ちゃんと華ちゃんという自分の看板娘がいるのですが、その二人もそういう意識でデザインしています。殺ちゃんの場合は特に、学校ジャージを着せたりして、田舎っぽさやレトロさとかっこよさとの共存も重視しています。アニメ版『キル・ビル』のオーレン石井みたいな感じを出したいですね。

―― その殺ちゃんが活躍している同人誌の制作はいつ頃から始めたのですか。
1999年に初めてコミケに行って「すげー!」と思ったのがきっかけです。翌年の2000年からなので、もう10年になりますね。
村田蓮爾さんとかCHOCOさんとか、文字や本自体のデザインまで通して、トータルでかっこいいものが出はじめた頃でした。当時は美少女さえ描ければよいと思っていたので、衝撃を受けました。シンプル、デザイン重視、オリジナルといった現在の自分の方向性も、そこである程度決まりましたね。

dww007_TeruhikoIMAIZUMI_pic4―― デジタル環境の導入も同時期からですか。
はい。PCなら文字打ちやデザイン等も全部やれるのが自分に合っているかなと思って。
その頃はムラなく一色で厚塗りするのが好きだったのですが、本当にレタリングが上手くないときれいに出来ないし、時間もかかるんですよね。デジタルならそれが、線さえしっかりしていれば簡単に出来る。大きな画材店が近くにないので、最初に機材を揃えれば画材を買う必要がないことも大きかったです。
たまたまMacに詳しい友達がいたから初代iMacのライムを買ったのですが、以来すっかりAppleファンです。ガジェットでもシンプルなデザインが好きなので。

―― デジタルで描きはじめた頃からペンタブレットを使っていらしたのですか。
最初はマウスだったのですが、あまりに描きづらいので、がんばって貯金してintuos2を買いました。初めてintuos2で描いた時にはそれはもう気持ちよくて、今までの苦労は何だったのかと思いましたね。

―― 現在はどんな環境で描いていらっしゃいますか。
OS9のMac G4でPhotoshopを動かしています。インターネット等はノートPCでやってMacは作画専用機にしているので、意外と軽いですよ。ペンタブレットはIntuos3です。ペンは標準ですが、紙に描くような引っかかる感じが欲しくて、マットシートを敷いています。
保守的だと言われるんですけど、Intuosは壊れにくくて安定しているので、替え時が難しいんですよね。

―― 今泉さんならではのペンタブレットの使い方はありますか。
dww007_TeruhikoIMAIZUMI_pic5ショートカットもほとんど使わず、基本的にはメニューバーから選択してPCを操作するので、トラックパッドもペンのサイドスイッチもオフにしています。活用しきっていないとも言えますし、贅沢な使い方とも言えますよね。
イラストレーターにはツールを極限まで酷使して効率を追求する方が多くて、自分は少数派なんですよ。自分の場合は、まず自らの手を酷使してツールは補助してくれればよいという感じなのだと思います。仕事として迷惑がかからない速さで満足の行くものが出来れば、描く楽しさと手に蓄積された感覚を大事にしたいんです。だから、ペンをひっくり返すと消しゴムになるのが好きですね。実際にゴシゴシやる感覚で使えるじゃないですか。

―― 新しいCintiqを使ってみた感想はいかがでしょうか。
すごく調子よく描けますねえ。初めてデジタルで描いた時と同じような、やりたかったことを実現出来た達成感があって、何か新しいことが出来そうな気分がします。エクスプレスパッドで画面を回せるのがいい! 12型なら、車があれば楽に持ち歩けますよね。今すぐ買って帰りたいくらいですが、さすがに自分も冷静です(笑)。欲を言えば、デザインがもう少し選べて、もう後何ミリか液晶面が薄ければなあと思います。

dww007_TeruhikoIMAIZUMI_pic6―― 作画工程についても教えていただけますか。
ラフ段階はアナログです。線画は紙に描くことも、ペンタブレットとPhotoshopで描くこともあります。線のクリンナップと着色はPhotoshopですね。印刷してよかった色は、登録しておいて次に生かします。

―― これからワコムに期待することはありますか。
性能はIntuosのままで、PCと一体の小さくて軽いペンタブレットが出たら、すごいだろうと思います。子供の頃に床に寝転んで絵を描いていた延長で、今でもきちんと座って描くのが苦手なんですよ。机に向かってPCを立ち上げるという準備がなくても使えると、「今だーっ」という瞬間を逃さずに描けてよいでしょうね。
それから、板とペンだけでスイッチも何も付いていない、機能を限定した廉価版があったら、若い人が手に取りやすくなるのではないかと思います。SAI等の価格の割に高機能なソフトウェアと組み合わせれば、ますます裾野が広がりますよね。

―― ご自身の今後の展望を伺えますか。
dww007_TeruhikoIMAIZUMI_pic7体調管理とオンオフの切りかえをきちんとして、息長く続けていければと思います。
希望としては、自分の色合いやキャラクターをデザインやゲームシステムに生かしてくれる人と、長く組んで仕事をしていきたいですね。他力本願かもしれないですけど、自分はそんなに多機能な人間ではないので、人と協力するのもひとつの方法だと考えています。お互いの良いところと悪いところで補い合って、長所を生かし合うことで、楽しいコラボレーション作品になると思うんです。

―― 最後に、今泉さんにとってペンタブレットとはどういう存在ですか。
最高ですね! ペンタブレットのおかげで気持ちよく絵が描けます。自由度も高いし活用範囲も広いし、どんなすごいことが出来るかとワクワクします。
 
 
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©Bonten/Wacom