2014年05月24日(土)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 006
アニメーター・イラストレーター:りょーちも

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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アニメーター・イラストレーター

りょーちも

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ゲーム会社勤務を経て、2004年『BECK』で原画デビュー。『創聖のアクエリオン』(2005年)『かみちゅ!』(2005年)など数々の話題作に参加する中、『ノエイン もうひとりの君へ』(2005-2006年)で見せたアクション作画でアニメファンの注目を集める。同作品の赤根和樹監督による『鉄腕バーディー DECODE』(2008年)とその続編『鉄腕バーディー DECODE:02』ではキャラクターデザイン、総作画監督として抜擢され、大きな話題を呼んだ。
大胆かつ軽快なアニメーションはもちろん、独特の描線とポップな塗りをもつイラスト作品にもファンは多い。ネットでの創作活動やデジタル技術と親和性が高い、既成概念に囚われないスタイルをもつ“新世代アニメーター”としてこれからの活躍が注目される、若手クリエイターを代表する一人。

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dww006_Ryotimo_pic1―― りょーちもさんが絵をお仕事にされるようになった経緯から伺えますか。
最初は専門学校の講義にもぐらせてもらったり、インターネットで自分のサイトやお絵描き掲示板に絵をのせたりして、チャンスをうかがっていました。早朝だけ新聞配達のアルバイトをして、あとは家にこもって絵を描いてっていう、引きこもりみたいな生活をしてたんです(笑)。そうしているうちにネットに上げたイラストを目に止めてくれる人があらわれて、ゲーム会社で仕事をはじめたんです。

―― アニメーションの世界に移るきっかけはなんだったのでしょう。
『BECK』の監督の小林治さんが、サイトに置いていたGIFアニメを見て、いきなり「動かせそうだから、原画を描いてみない?」と誘ってくださいまして。ゲームの仕事と並行してやりながらだんだん比重を移して、アニメーションに専念できる形を作りました。
じつは、1回動画で失敗しているんですよ。でも、動画と原画とではやることが全然ちがったんです。動画は1枚1枚をきれいに仕上げられる人に向いてるのに対して、感覚的に絵を動かすことに興味があった自分には原画が向いていたんでしょうね。

―― 動画から原画へという人が多い中では異色ですね。
ネットで自分の絵をアピールして認められたということで、「ウェブ系」なんて言われることもあります。90年代後半くらいから出てきた世代ですね。ちょうどネットもデジタルで絵を描くことも一般化していく最中だったので、みんな何をすればよいのか分からなくて、お互いに見よう見まねでなんにでも手を出していました。だから、この世代にはマンガもアニメもできたり、多芸な人がけっこういるんですよ。
はじめて全面的にFlashを導入した『鉄腕バーディー DECODE』の制作現場でも、新技術に抵抗がなくてセクションにこだわらない人を集められたおかげで、前例のないやりかたがうまくいきました。

―― そういった新世代アニメーターの特徴はなんでしょうか。
最初からデジタルに親しんでいるっていうのが大きいですね。たとえばずっと紙で描いていた人がペンタブレットに移るのは、鉛筆の書き味や握った感じに慣れていたりするから大変なんです。自分たちの世代は、仕事をする前からそこを乗りこえているのが強みなのかなと思います。

―― 中でもりょーちもさんは、先ほどの『バーディー』のようにFlashを使うことで注目を集めていらっしゃいますが、Flashのメリットはなんですか。
タイムラインにそって絵が描ける軽いソフトというのがまずありますね。機能の話をすると、絵をここからあそこへdww006_Ryotimo_pic2この時間で動かすというスライド指示や、動かした絵をパーツとして登録すれば、絵の中に別の動く絵を置いたりして、アニメーションを入れ子状にすることなどができるんです。そのまま原画にするにはまだ難点もあるんですが、ざっくりと全体のイメージをつかんだり、そのイメージをもとに実験したりしていくためには非常に便利なソフトです。

―― 最近ではFlashアニメ作品がテレビでオンエアされることもありますが、りょーちもさんの使い方は、一般的なFlashアニメとはちがいますよね。
Flashのモーション機能を使ってキャラクターを動かすのが本来の使いかたなんですが、自分は1枚ずつ作画するのがやはりアニメーションのスタイルだと思うので。
Flashはタイムラインで動かしながら作業ができるので、背景がスライドしてパースが変わって……っていう撮影技法にかかわるようなところまで、作画でやれるんです。実写のムービーを取りこんだ上にアニメーションをのせることもできますね。動画がアナログでも、仕上げはスキャンしたデータでデジタルペイントをするので、そこでまた活躍します。素材や動きのディテールを足したり抜けてしまったデータを修正したりということが、動画に戻さずにできるんです。

dww006_Ryotimo_pic4―― 制作現場でのデジタル作画の経験はいつからですか。
『創聖のアクエリオン』からですね。うつのみや理さんという自分にとっては神様みたいなアニメーターさんと一緒に仕事をさせていただいたんですが、そのうつのみやさんが3Dでしっかりしたレイアウトを組みたいとおっしゃって、Metasequoiaというフリーソフトを使って組みました。

―― うつのみやさんのようなベテランアニメーターでも、新しい技術を積極的に取り入れているんですね。
セクションにとらわれたりする固定観念をこわしてくれたのは『ノエイン~もうひとりの君へ』で指導してくださった松本憲生さんだし、『ノエイン』や『バーディー』の赤根和樹監督もそうですが、いろんな方が新しいことを取り入れて実験しているんです。

―― デジタル作画とは切っても切れないペンタブレットですが、いつごろからお使いですか。
20代前半に、サイトの絵を描くために初代intuousのA4サイズのものを買ったのが最初です。「マウスじゃ描きにくい、みんなどうしているんだろう?」「ペンタブレットっていうのがあるらしいぞ」という感じです。飼っていたウサギにケーブルをかみ切られて、ハンダで修理したなんてこともありました(笑)。

dww006_Ryotimo_pic3―― 現在はどういった作画環境で描いていらっしゃいますか。
ペンタブレットはCintiq 21UXを使っています。PCはそれを動かすために近所の商店街で買った、CPUが1Ghz強のものでメモリは4GB積んでいます。ソフトはPhotoshopとFlash MX、イラストにはSAIを使ってます。メモリをドライブに変換するツールで仮想ドライブを作ってPhotoshopを立ちあげていて、これが非常にはやくて助かっています。

―― カラーイラストのほうの制作手順はどうなっているのでしょうか。紙で下描きをされたりはするんですか。
最初からデジタルでやっちゃいますね。線画をSAIで、色塗りをPhotoshopでやることが多いです。まずSAIでレイヤーを作ってうすく下描きして、別レイヤーでペン入れをして、その線画をPhotoshopに移して色を塗って、最後に下描きの線を消してできあがりです。Photoshopでも線画は描けるんですが、SAIは鉛筆ツールなどの線がとてもきれいなんですね。ちなみに、線をきっちりつなげることにはあまりこだわりません。それに引っぱられて形が変わることがあるようなので。

―― りょーちもさんならではのペンタブレットの使いかたや工夫はありますか。
アニメーションを描くときは、ライトボックスのように使いますね。Flashで組んだレイアウトの上に原画用紙をのせてトレースすると、画面を動かしながら紙を変えるだけで次々に描けて、非常に楽なんですよ。いちいち印刷していると大変ですから。あと、自分はまちがってふれてしまうことが多いので、本体横のショートカット機能はオフにして、ショートカットは全てキーボードに割りふっています。

―― ほかにもメリットや要望があったら、教えていただけますか。
ツールによってはキャンバスの回転機能がありますけど、Cintiq本体も台座の上に寝かせて回転させられるので、紙と同じ感覚で回しながら描きやすい角度で描けるのがありがたいですね。要望はトレースのために、表面をうすくてたわまないものにしてほしいということですかね。

―― 今後のお仕事の予定や、やってみたいことを伺えますか。
アニメーターがコンピュータ・プログラミングをやったり、3Dの専門家に原画を描いてもらったり、異分野の方々が出会うことで新しい表現が生まれると思うんです。自分がFlashを持ちこんだのにもdww006_Ryotimo_pic5そういう意図があったし、いまのアニメーションとほかの分野の才能ををつなぐハブになりたいですね。そうして、デジタルツールに振りまわされずに使いこなして、アニメーションが本来もっているおもしろさを表現するのがこれからの課題だと思います。
直近に出る仕事としては、ワニマガジンさんから出版予定の自転車と女の子をテーマにしたイラスト集『自転車少女解放区』に1枚描いています。「つまちゃん」という自分のサイトの看板娘を描いたんですが、そうやって業種や分野に関係なく自分のキャラクターを出していくことに、いまは興味があります。たとえば『ガンダム』は物語や設定が変わっても『ガンダム』で通じるじゃないですか。そういう安定感というか共有されている感じをキャラクターにも出せる方法を探しています。具体的にどうすればよいかはまだ明確ではないんですけど。

―― 最後に、りょーちもさんにとってペンタブレットとはどんな存在ですか。
絵を描きはじめたころからずっと使っているので、普段はとくに意識しないくらいになじんでいます。とても便利で自由に使える道具なので、どんどんおもしろい活用法を考えていきたいですね。
 
 
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©Bonten/Wacom