2014年06月04日(水)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 005
イラストレーター:redjuice

初出日:2009年12月16日
インタビュー・構成:平岩真輔

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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イラストレーター

redjuice

redjuice

2007年、ウェブデザイナーとして活躍する傍らトレーディングカードやインディーズCDのジャケットイラストを手がけるようになる。ソングライターryoを中心とするクリエイターユニット「supercell」のメンバーとして手がけた『ワールドイズマイン』のPVイメージイラストが楽曲のヒットと併せて話題を呼び、 2008年夏、初音ミクを使った初のメジャーCDとしてオリコンデイリーランキング3位を獲得したlivetuneのデビューアルバム『Re:package』のジャケットを手がけたことで一躍人気イラストレーターとして注目を集めるようになる。同アルバム収録の楽曲『Last night, Good night』のPVやリミックスアルバム『Re:MIKUS』でのコラボレーションなどでlivetune、ボーカロイド双方のファンから支持されている他、そのイラストが持つ独特の雰囲気と既存の枠にとらわれない表現が、国内外を問わず高い評価を得ている、いま最も注目すべきクリエイター。

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dww005_redjuice_pic2―― redjuiceさんがイラストレーターになるまでの経緯は?
特に絵描きを目指していたわけではなくて、2001年頃に流行っていたお絵かき掲示板が面白そうだなと思って遊び始めたのが最初ですね。Painter 6を手にいれて初めてPCで本格的に描こうとしたんですけど、いまいち馴染めなくて。それから1~2年ほど仕事が忙しくて絵を描かない時期があったんですけど、2005年ごろにSAIのβ版を使いだして、初めて印刷できるような解像度の絵を描くようになりました。

―― そこから、本格的にお仕事をするようになったのは?
最初に友達の同人誌にゲスト参加してから、すぐに自分でも本を作るようになったんですね。2007年末から商業で絵を描き始めたんですけど、その頃はWeb制作が本業だったので、休日や仕事の後に同人やインディーズのCDのジャケットを描いていました。イラストレーターを仕事にする大きなきっかけは2008年にビクターエンターテインメントからリリースされたlivetuneのアルバム『Re:package』です。

―― 初音ミクを使った初のメジャーアルバムが大きな契機になるわけですね。
livetuneの楽曲が好きで、勝手に描いたイメージイラストをpixivにアップしていたので、2007年の冬コミでkzさんに挨拶に行ったんです。その時はCDも売り切れ、ご本人にも会えず残念な感じで帰ってきたんですけど、kzさんから直接連絡をくださって、アルバムのジャケットも描かせていただくことになりました。それでまとまった時間が必要になり「絵を描かせてほしい」と会社の社長に相談しました。もともと社長と二人で始めた小さな会社だったので、融通が利くというか。それで現在に至ります。

dww005_redjuice_pic3―― イラストレーターという立ち位置でお仕事をするようになるまでの経緯が、ここ数年のネットの流行と重なりますね。
ニコニコ動画やpixivの盛り上がりと同調している感じですね。一番反響があったsupercellの『ワールドイズマイン』のイラストも、ニコニコ動画とpixivの相乗効果で大勢に見てもらえるようになりました。元々、絵を仕事にするつもりはなかったので、まさかこんなことになるとは思いませんでした。インターネットさまさまですね。

―― 「supercell」としての活躍も大変注目されていますが、ユニットに参加されるようになったきっかけは?
supercellは『メルト』から始まって、三輪士郎さんやhukeさん、その他多くのサポートメンバーが集まっていったユニットです。元々知人だったメンバーに声をかけられてホイホイ参加したんですけど、後になって推薦してくれたのは三輪さんだったということを知りました。三輪さんは昔から好きな漫画家さんだったのでビックリしたと同時に嬉しかったですね。『ワールドイズマイン』のイラストを描くまでは『ブラック★ロックシューター』などのサイト制作を担当してました。
1stシングル『君の知らない物語』では初回特典でアニメ『化物語』のキャラを8人分描かせていただきましたが、キャラデザの渡辺明夫さんの絵がすごく好きなので、「俺でいいの?」という感じで。ryoさんの曲に三輪さんのジャケット、デザインがうーさーさんで裏が僕なので、全部supercellで作った1枚になりました。

dww005_redjuice_pic4―― 仕事柄、デジタルツールとは馴染みがあったと思うのですが、初めて使われたペンタブレットは?
お絵かき掲示板で描き始めた頃からintuos2を使っていました。絵を描くならマウスよりペンの方が描きやすいという自然な流れで。あまり使い勝手や精度までは気にしていなかったんですけれど、黒基調のデザインやスタイルがかっこいいので後からIntuos3も買いました。

―― 現在はどのような作画環境でお仕事をされていますか?
Core 2 QuadのWindowsマシンにメモリを8GB挿しています。Windows XPが認識できるのは3GBまでなので、残りをRAMディスクにしてPhotoshopの仮想記憶領域として使っています。僕の場合はレイヤー数も多いし、最近はA4の原稿でもA3/300dpiくらいの大きめで描いているので、8GBでも足りなくなることがあります。ツールは、βテストの頃から使い込んでいるSAIで、キャラクターの塗りと背景のベースまでを作業して、仕上げをPhotoshopでやっています。モニターはDELLの24インチワイドがメインで、サブにMITSUBISHIの17インチと液晶ペンタブレットのCintiq 21UXですね。

―― 液晶ペンタブレットを導入されたのは、いつ頃ですか。
2008年末頃に、ニコニコ動画でマンガ家の浜田よしかづさんがCintiqでComicStudioやSAIの描画過程を解説している動画を見たんですね。もうこれは買わないとだめだと思って、その日のうちにビックカメラに行きました(笑)。

―― Cintiqを導入したことで変わったことはありますか?
dww005_redjuice_pic1最初はIntuos3と使い分けていたんですが、「マッピング画面切り替え」で普通にペンタブレットとして使えることがわかったので、いまはCintiq 21UXだけで作業してます。作業エリアが大きいのと、画面に直接描けるというのが一番のメリットですよね。手先と画面の間にワンクッション入らないので、見たままストロークの終点を狙って線が引けるというのが強みですね。

―― 自分ならではの使い方や工夫みたいなものはありますか?
Cintiq 21UXの上の方にキーボードを置いて使っているので、作業中に腕が触れて反応してしまわないようにトラックパッドを無効にして、代わりにGriffin Technology社のPower Mateというコントローラーを繋いでいます。
あと、実はCintiqの表面のフィルムを剥がしてしまって(笑)。グレア対策だと思うんですけど、マット処理をしていることで色の再現性も変わってくるし、ガラス面の方が硬度が高いので傷がつきにくくていいんですよね。剥がすとツルツルになるので反射は気になるんですけど、個人的にガラスのままの方が好みなのでそのまま使っています。

―― 作画工程についても教えていただけますか。
最初のラフは紙の上でやることが多くて、それを練り上げていく段階からCintiqを使っています。デジタルの方が移動や拡大縮小、やり直しができたり、紙よりも消しゴムを気軽にかけることができるので、紙に描いたレイアウトや構図をスキャンして、その上からどんどん描き込んでいきます。
SAIで色を塗る段階まではCintiqの画面上で、Photoshopで合成や仕上げをする段階では、24インチのメインモニターで色味を見ながら作業しています。

dww005_redjuice_pic5―― redjuiceさんの絵は、メカ的な要素や背景などに見られる硬質なマテリアルが特徴的ですよね。
Avid XSI(現Autodesk Softimage)でレンダリングした3DCGにPhotoshopでペイントしてみたんですけど、何も描かないほうが綺麗だという発見があって、その質感が自分でも気に入ったし反響もよかったので、よく使っている手法です。実際は3Dをそのまま使っている絵はあまりなくて、レンダリングした素材をバラして、テクスチャとしてコラージュして立体物のように見せたりしています。

―― キャラクターからは日本のアニメやマンガの影響を受けた海外のクリエイターのような無国籍なテイストも感じるのですが、特に影響を受けたクリエイターはいますか?
好きな物がコロコロ変わるので、何がルーツかと言われるとよくわからないですね。海外、特に台湾や韓国などのアジア圏のアーティストには注目しています。本業がWEBデザインなので、海外のデザイナーからの影響も少なからずあると思います。あまり古い物に漬からないで、その時々に自分が表現したいものをアウトプットしているからこそ、注目していただけているのかなと感じています。

―― 海外のdeviantARTでも作品を発表されていますよね。
国内ばかりをみているとどうしてもその中で埋もれてしまうので、独創性を出すためにも他の皆がやっていないような海外の方に目を向けてミクスチャーしていければという考えは持っています。混合率を工夫して、海外のクリエイターのエッセンスは意識的に取り入れてますね。

dww005_redjuice_pic6―― 今後の活動についても伺えますか。
10月に発売された京極夏彦さんの『ルー=ガルー 忌避すべき狼』(講談社ノベルス)の表紙を描かせていただいたのと、12月10日発売のSFマガジン創刊50周年記念アートブック『Sync Future』(早川書房)での野尻砲介さんとのコラボレーションイラストが最近出た仕事ですが、他にもいろいろ引き合いはいただいていて、おかげさまでスケジュールは埋まっている感じです。
自分のスタイルを固定せずに変わっていけるというのは、効率は悪いですけど強みだと思うんですね。プロとしてはお客さんのオーダーに合わせることは必要なんですけれど、合わせすぎると自分の理想としているクリエイティブからは離れていってしまうしモチベーション低下にも繋がるので、自分の主張を通すことができないと弱いなとも感じています。そのためにも、説得力のある絵作りができるように日々研究しています。

―― その点では、現在のように、自分が面白いと思える人と組んでゼロからものを作っていくユニット的な動きは合っているということでしょうか。
音楽とのコラボレーションはすごく面白くて、聴きながら作業しているといろいろインスピレーションが沸いてくるんですよね。一人で絵を描いていると、どうしても自分の中にこもってしまうんですけど、他のアーティストとのコラボレーションは、お互いが満足しあう必要がある。僕の掲げているコンセプトの一つに「見る人を満足させてやろう、その上でびっくりさせてやろう」というのがあるので、意外性のある要素を絵に取り入れる、ということはいつも考えています。

―― 最後に、redjuiceさんにとってワコムのペンタブレットとはどのような存在ですか?
体の一部……って言うとかっこいいですよね(笑)。いまの時代のニーズにあったデジタル絵描きにとってはなくてはならないものです。
 
 
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©Bonten/Wacom

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