2014年06月07日(土)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 004
イラストレーター:加藤アカツキ

dww_readimage

イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

dww004_AkatsukiKATOH_prof

イラストレーター

加藤アカツキ

akatsuki katoh

大学在学中より専門学校でイラストを学び、2005年、神永学『心霊探偵八雲』(文芸社)シリーズの表紙イラストでデビュー。卒業後はフリーのイラストレーターとして『ぼくらの七日間戦争』など宗田理の人気小説『ぼくら』シリーズ(ポプラ社)のイラストを手がけたほか、ポプラ社ノベルズ・エクスプレスや角川つばさ文庫などジュブナイル小説のイラストで活躍する一方で、同人誌『少女サイクル』など趣味の自転車をコンセプトとした作品を精力的に発表し、自転車好きのクリエイターたちからも注目を集めている。現在はイラストレーターとしての仕事のほか、母校のアミューズメントメディア総合学院で自らのノウハウを元に後進の育成にあたったり、ワニマガジンより刊行予定のムック『少女自転車解放区(仮)』に企画段階から大きく関わるなど、単なるイラストレーターには留まらない活躍を見せている。

dww_title004

dww004_AkatsukiKATOH_pic4―― 加藤さんがイラストレーターとしてお仕事を始めたきっかけはどういったものですか?
大学と専門学校にダブルスクールで通っていたんですが、専門学校で文芸社さんのコンペに参加したところ気に入っていただいて、神永学さんの小説『心霊探偵八雲』の表紙イラストのお仕事をいただくようになりました。それから在学中にもお仕事をしつつ、3年ほど前に卒業してからはフリーランスとしてやっています。

―― イラスト自体は専門学校に入る前から描かれていたんですか。
美術の授業でやるようなアナログでの絵はあまり好きではなかったんですけど、大学の友人にPCを触らせてもらったら思っていたよりも描けたので「これはちょっと面白いかな」と思って、自分でもPCやペンタブレットを買って描き始めました。それで、描いていたら案外行けるんじゃないかと勘違いして(笑)、この道に進むことにしました。

―― デジタルイラストをきっかけに、プロのイラストレーターを目指すまでに至るわけですね。
線画で落書きをすることは好きだったんですけれど、とにかくアナログ画材で色を塗るということが嫌いだったんです。絵具だと思った通りの色を作れなかったり、やり直しがきかないじゃないですか。性格的にも、アクリルでピタッと塗るような絵が描きたかったのに、学校では水彩絵具しか使えなくて。それでアナログの絵にすごい苦手意識を持ってしまったんですね。

―― 専門学校ではどれくらいデジタルでのイラストを学ぶものなんですか?
dww004_AkatsukiKATOH_pic2自分が入学した頃はまだ授業全体の3割くらいで、「アナログでちゃんと描けないとデジタルでもだめだよ」ということを先生に言われて「いやいや俺は描けちゃうよ」みたいに思っていましたね。入学して間もない頃、クラスメイトの実力もお互い知らない頃にアナログで描いた絵を貼り出されて「違う、俺の実力はこんなもんじゃないんだ」と(笑)。夏頃にPhotoshopを触り始めて、線画を取り込んでゴミをとって……というオーソドックスな手法からデジタルの授業に入りました。
いまは母校の講師として教える側ですが、7割くらいはデジタルになっていますね。18~19歳くらいの子たちは絵具を使っていないです。物心がついた頃にはインターネットがある世代なので、最初からデジタルで描いていますよね。その一方ではネットも含めてすべて携帯で済ませることもできるのでPCを持っていないという子たちもいるんですけど。

―― 生まれながらのデジタル世代を見ていて、なにか違う部分は感じますか?
僕はアナログの理論的な部分は勉強したので、そこまでいかないんですけど、「色を混ぜる」という感覚がないんですね。この色とこの色を混ぜるとどういう色になるのかという感覚がなくて、Photoshopのパレットからジャストの色を選んでくるという感覚で塗っている子が多いです。その辺は少し可能性を狭めてしまっている気はしますね。

dww004_AkatsukiKATOH_pic1―― 加藤さんが最初に手にしたデジタルツール環境はどのようなものでしたか。
最初に手にしたのはWindows版のPainter 6ですね。当時はどのツールを買っていいか分からなくて、アカデミック版が30,000円ぐらいで手ごろだったので、とりあえずPainterを買ってみようと思って。ペンタブレットはオレンジ色のFAVO(初代)を購入しました。2年ほどFAVOを使ってから、intuos2のA4サイズを5年ほど使っていました。

―― 現在ではプロのイラストレーターとしてお仕事をされていますが、どういった作業環境ですか。
EIZOのFlexScan 21というモニターの前に、液晶ペンタブレットのCintiq 12WXを置いています。最初に色を作る段階でモニターの方で色味をみながら調合して、Cintiqの画面上で作業をします。左手はBELKINのNostromoSpeedPadというボタンがいっぱいついたゲーム用のコントローラーがあって、それにショートカットを登録して使っています。Cintiqを使うまではキーボードでやっていたんですけど、手が疲れるので。

―― Cintiq 12WXを選ばれた理由は。
自分は描いているときに小さなスペースしか使わないんですよね。普段はPainterで描いているんですけれど、dww004_AkatsukiKATOH_pic3手の平ツールが使いやすくて……。描きたい部分を全部画面の中央にもってきて作業してしまうので、これだと12型のスペースでいいかなと思って。対角線の長さが最長のストロークになりますが、これだけストロークを使うことってめったにないですね。
液晶ペンタブレットのいいところは、画面のサイズが作業サイズと同期してるところですね。ペンタブレットやモニターの大きさが変わると慣れるのに時間がかかるんですよ。だから自宅と学校とで違う環境を使うと違和感がある。その点、Cintiqなら12インチから21インチになっても全く問題がないです。
要望をいえば、Cintiqに直接定規を当てて線を引くということをよくやるんですけど、その際に画面の端で線がよれてしまうのが少し残念なのと、定規を持ったまま小指でもショートカットボタンが押しやすい硬さになればいいんですけど。
あとは、コンバータとかアダプタとかが小さくなって、旅先にも持ち歩いてスケッチブックのように使えるようになればいいなと思います。

―― 作業工程についても少しお伺いしたいのですが、ラフや下描きの段階からデジタルを使われているんでしょうか。
ラフはノートと鉛筆で描くこともあれば、最初からデジタルでやることもあります。かなり大雑把に描いて、そこから下描きに入ります。レイアウトを構成したりするのは紙の上のほうが断然速いんです。dww004_AkatsukiKATOH_pic6でも下描きを始めると、性格上、かなり細かいところまで描かないと気が済まなくて、そうなるとアナログでトライ&エラーするのは大変なんですよね。だから下描きはもうPainterに持ってきて作業しています。

―― メインのツールはPainterですか。
半々ですね。絵柄によってPainterとPhothosopを使い分けています。アニメ塗りみたいなことをする時はPhotoshopで。『少女サイクル』という同人誌を出したんですけれど、それは全部アニメっぽく影を入れているのでPhotohshopで作業しています。『THE SWINGING BROMPTON』の方はPainterで塗った後に、Photoshopのフィルターでカメラで撮影したようなエフェクトを入れたりしています。

―― 必要に応じて使い分けているわけですね。今後の方向性として描きたい絵やお仕事というのはありますか。
最近の仕事では神永学さんの『心霊探偵八雲8 失われた魂』(文芸社)と、新城カズマさんの『物語工学論』(角川学芸出版)で表紙イラストを描かせていただいたのと、12月に宗田理さんのdww004_AkatsukiKATOH_pic7『東京キャッツタウン 白いプリンスとタイガー』(角川つばさ文庫)が出ます。あとは、母校での講師のほかに、ワニマガジンから出る予定の『少女自転車解放区(仮)』という書籍の制作に関わっています。
いまは書籍の企画を立ち上げるのが面白くて、同人誌もある意味で企画書代わりになるようなものを作っていて、色々な企画を持ち込んでいます。単に絵を描くだけでは、ある意味やり尽くされているというか、いまのキャラクター絵のイラストレーターの仕事は枠組みが決まっている気がして、そこに少し不満があるんです。何かの本の挿絵を描いてよ、ということがメインになっているので、もっと自分から発信したいです。
ある意味雇われ仕事で描いた絵だけを集めて画集を出すしかないのでは面白くないので、全体を通してモチーフやコンセプトのあるもの、あとはイラストで旅のガイドブックみたいなものとか。そういう感じで企画しています。

―― キャラクター文化の楽しみ方として、最近のアニメ・マンガを通じて舞台となる土地やガジェットに興味が向くみたいな傾向は面白いですよね。
dww004_AkatsukiKATOH_pic5絵の力で何かに関心を持ってもらうというのは、昔の宗教画なんかもそうですよね。上手いというだけではなく、そういうテーマ性で人々の関心を引く部分もあって、その部分で萌えとかエロとかは手っとり早いんですけど、僕が今やっている自転車の本とかは、自転車というものをフックに、「もっと絵を見てください!」という感じのものなので、それにはもっとアイデアが必要だなあと感じています。
意地もありますが、「俺はこういうものが作りたい」っていうクリエイターのエゴをもっと出してもいいんじゃないかと思うんです。安易な方向に逃げるんじゃなくて、そういう仕事の中で皆さんに絵を見る楽しみみたいなものを知っていただけるような環境を、クリエイターやメディア側から提案できるといいなと思います。

―― 最後に、加藤さんにとってワコムのペンタブレットとはどういう存在ですか。
無ければおまんま食い上げっていう、非常にシンプルなものです(笑)。ワコムが無くなったら、初めてそこでアナログで絵を描き始めるかな、という気がしますね。本当に替えがない存在です。
 
 
dww004_AkatsukiKATOH_complete
 

©Bonten/Wacom