2014年06月11日(水)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 003
イラストレーター・アニメーター:toi8

初出日:2009年11月10日
インタビュー・構成:平岩真輔

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イラストレーター、漫画家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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イラストレーター・アニメーター

toi8

toi8

2002年『カラフルピュアガール』誌に掲載された『空想東京百景』(ゆずはらとしゆき共著/講談社BOX)でイラストレーターとしてデビュー。『嘘つきは妹にしておく』(清水マリコ/MF文庫J)をはじめ、ライトノベルのイラストも数多く手がけている。2009年には自身初の画集となる『幻想少女 toi8アートワークス 』(メディアファクトリー)を発表したほか、『季刊 GELATIN』(ワニマガジン社)で本格的なマンガ形式の作品にも挑戦している。独特の筆致で描き出されるイラストの世界観が多くのファンに支持され、『地球のまん中 わたしの島』(杉本りえ/ポプラ社)では児童向け文学の装画を担当、荒川弘原作の人気アニメ『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』では「路地デザイン」としてクレジットされるなど、活躍の幅を広げている。

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―― toi8さんが絵を仕事にしようと思われたのは、どのような経緯からですか?
押井守監督の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の設定資料集に、レイアウト(背景原図)が大量に載っていて、その頃はアニメーションが作られる仕組みは漠然としか知らなかったんですけれど、「こういうのをやりたいな」と思ったんです。
dww003_toi8_pic2レイアウトのようなものにはもともとすごく興味があって、たとえば宮崎駿さんがレイアウトを描くと、同じ食事のシーンでもすごく美味しそうに見えたり、部屋を描くにもちゃんと空間として切り取られていたりして、画面がすごく安定してしっかりしている。下手な人が描くと広すぎる部屋になったり、どこまで天井が高いんだろうという位置にカメラがあったりするんですね。そういうものを見て、これなら面白くできるんじゃないかとアニメーションの道に進みました。

―― アニメのレイアウトや、絵作りという部分のこだわりに触発されたんですね。
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の後に、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』とか『もののけ姫』とか、すごい作品が続いてそのブームに乗って、専門学校にいきました。絵を描くのにキャラクターから入る人が多いと思うんですけど、僕の場合はそんなにキャラクターに執着がなかったんです。それで後々悩むことになるんですけれど(笑)。

―― イラストレーターとしてのデビューは『空想東京百景』ですね。
「一枚描いてみませんか」というメールをいただいて『カラフルピュアガール』という雑誌にピンナップを描いたのが商業では一番最初で、それから編集部の紹介でいきなり作者のゆずはらとしゆきさんと打合せをして、『空想東京百景』をやることになったんです。まったく実績のなかった自分に、なぜこんな企画をやらせようという気になったのか、いまでも分からないんですけど(笑)。

dww003_toi8_pic3―― それから『嘘つきは妹にしておく』(清水マリコ/MF文庫J)でライトノベルの表紙を手がけられますが、キャラクターが前面に出ることが多い一般的なライトノベルの表紙とは違う印象ですね。
キャラクターの服装とか細かいパーツのデザインに思い入れを感じる人が描けば、存在感のあるキャラクターデザインができると思うんですけど、僕の場合はそういう思い入れがなくて、ライトノベルの仕事をするまではほとんど考えたことがなかったんですね。たぶんアニメーションでは細かい装飾とかパーツは動かせないからという理由もあるんですが、やはり基本はシンプルなラインで、「世界=背景」の部分を描き込むという方向性が自分の中にあったからだと思います。

―― ライトノベルは色々なレーベルでお仕事をされていますが、特に印象に残っているものはありますか。
やはり初めて手がけた『嘘』シリーズですね。ライトノベルは、設定やキャラをみせないといけないという縛りがあるので意外と自分の好きなようには描けないものなんですけど、小説が面白くて、そのイメージを何とか絵にしたいと思ったのが一番うまくできた感じです。

dww003_toi8_pic4―― 最近ではマンガ的なものも描かれていますが、イラストと比べていかがですか。
初めからマンガ家ではないので、わりと気楽にやっています。
ネームの段階では4段ぶち抜きとかやってみたいと思っていたんですけれど、どうしてもそういうものにならなくて、1ページに3コマくらいならべて絵コンテのような感じになってきました。悩むことは多いですけど、普段のイラストの仕事とは違って1コマ1コマで完結せずに全体を考えて描くのは、けっこう楽しんでやれています。

―― toi8さんがデジタルでイラストを描き始めた時期はいつごろですか?
2000年ごろですね。アニメーターになって上京した時に、PCを購入しました。
友人のところで触っていたPainterがものすごく使いやすかったんです。Painter 6が出てレイヤーが使えるようになったタイミングでintuosにPhotoshop LEが付いてきて色調をいじったりはできたので、その二つをあわせて使い始めた感じですね。

―― それ以前にはカラーイラストを描かれたりはしていましたか?
バンドデシネ作家のエンキ・ビラルがコピーした線画に水貼りしてリキテックスか何かで塗った後にパステルとかでハイライトをいれたりしていて「これだ!」という感じで自分でもやってました。ある程度、修正も効くし荒い感じでガシガシと塗れるのがよかったです。

dww003_toi8_pic1―― バンドデシネのビジュアルは、toi8さんのマンガ作品にも通じるイメージですが、昔からお好きだったんですか?
その頃に『コミッカーズ』なんかで海外の作家を紹介する企画があって、そこでいろいろ知って、吉祥寺にあった「まんがの森」にアメコミやバンドデシネの洋書が置いてあったので、面白いなあと。『ヘルボーイ』のマイク・ミニョーラが当時は大好きで、後から聞いてみると他のアニメーターにも人気がありました。逆にメビウスにはあまり惹かれなかったというか、大友克洋さんは好きなので名前は知っていたり、娘がナウシカって名前なんだとか変な情報だけはたくさんありました(笑)。

―― Painterを選んだのも、そういう作家の塗り方などの影響からということでしょうか。
Painter使いとしては、寺田克也さんが塗りの指針としてあったので、「寺田さんのようにやれば、アナログとは違う表現ができるんだ」という感じでした。『西遊奇伝 大猿王』(集英社)や『寺田克也全部』(講談社)あたりを見て、こういう塗りはアナログで表現するのは無理じゃないか、こうやれば寺田さんみたいに描けるんだと感じていました。
Painterを使わせてくれた友人のペンタブレットはハガキサイズのものだったんですけど、ペンタブレットで線画も描いてみたかったこともあって、ストロークが大きくとれるA4サイズの初代intuosを購入しました。

―― いまはどういった作画環境で描かれているんですか?
Intuos3と、液晶ペンタブレットのCintiq 12WXですね。机があまり広くないのでキーボードは横に置いて、正面にメインのモニターと、Cintiq 12WX、左手はスマートスクロールです。メインツールのショートカットを全部登録してあります。

dww003_toi8_pic5―― ペンは何を使われていますか?
ペンは標準のものを使っています。減りはちょっと速いですけど、芯だけフェルト芯に変えています。すこし摩擦があるのが好きですね。人によっては標準の芯にコピー用紙を敷くとか工夫をされている人もいますけど、普通にフェルト芯がしっくりきたので。

―― デジタルでの作画の手順はどのようにされていますか。
紙に描いたラフをライトボックスでクリンナップして、それをスキャンしたものにPainterでレイヤーを一枚重ねて塗り始めるという感じですね。最近では、初めからPCでやっていくこともありますけど。

―― CintiqとIntuosの使い分けみたいなものはあるんですか。
最近の描き方では、ペンタブレット上で全部描く時は、Cintiq 12WXで線画を描いて、影やハイライトまで作業して、それから別のモニターを使ってIntuos3の方で塗っていくような感じですね。大きなストロークが必要だったり、メインのモニターで色を見ながら塗りたいときにはIntuos3の方で。

―― 液晶ペンタブレットを導入してみて、メリットを感じられた部分はありますか。
dww003_toi8_pic6実際に画面に描けるというのが面白いのと、Cintiq 12WXの場合はそれ自体が小さいので、テーブルの上で縦にしたり横にしたりできるのがいいです。あと、一番のメリットは定規を使えることですね。定規を置いて直線を引けるのが、液晶ペンタブレットを買った理由として大きいです。ラインツールで引くこともできるんですけど、定規の方が味のある線が出ます。

―― イラスト、マンガとお仕事の幅も広がっていますが、今後はどういったお仕事をされていきたいですか。
これという希望はないんですけど、いまワニマガジンで描いているマンガは、自分の世界観を短編形式で次々描ける、という意味では面白いかなと思っています。あとは、講談社でノベルスのイラストを描かせていただいたり、新しい画集も出す予定です。

―― 最後に、toi8さんにとってペンタブレットとはどういうものですか。
そうですね、仕事上、絶対なくてはならないものですね。本当にペンタブレットがなかったらイラストレーターもやっていないですし、PhotoshopやPainterみたいな基本デジタルツールと並んで、これがないとこの道に進んでいなかった道具ですね。
 
 
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©Bonten/Wacom

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