2014年07月22日(火)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 039
アニメーター・キャラクターデザイナー:足立慎吾

取材日:2014年6月9日
取材場所:ワコム西新宿オフィス
取材・構成:高瀬司

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イラストレーター、マンガ家、アニメーター、CGクリエイター、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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アニメーター・キャラクターデザイナー

足立慎吾

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大阪芸術大学卒業後、XEBECからフリーを経て現在はA-1 picturesに所属。『ロックマンエグゼBEAST+』で初めてキャラクターデザインを担当し、『WORKING!!』シリーズ、『ソードアート・オンライン』シリーズ、『ガリレイドンナ』といった人気作でキャラクターデザイン・総作画監督を務め大きな話題を呼ぶ。また『ロックマンエグゼBEAST+』、『今日の5の2』OP、『フラクタル』では絵コンテも担当した。

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―― 子どもの頃はどのように絵に接していたんでしょうか?
dww039_ShingoAdachi_pic1小さい頃はトレーシングペーパーを使って『ドラえもん』の絵を描いていました。自分で描くとキャラクターの見た目がどこか違ってきてしまうのですが、単行本にトレーシングペーパーをあててなぞると本物とまったく同じドラえもんになるのがうれしくてよく模写をして遊んでいました。小学校に入ってからはマンガクラブに所属し、壁新聞でパピプペンギンズの出てくる4コママンガを描いていました。中学校では野球部に入りしばらく絵から離れていたのですが、野球部を引退したあとに入った生徒会で僕が会報の絵を担当することになり、当時人気だったPCゲーム『イース』の公式イラストレーターを務めていた都築和彦さんの絵をまねして描いていました。そこからキャラクターイラストにおもしろさを感じるようになり高校ではマンガ研究会に入りました。

―― 高校生の頃はどんな絵を描いていたんですか?
『ロードス島戦記』が大流行していた時期だったのでファンタジーやアクションものがメインでした。また部活内でもみんなでテーブルトークRPGをプレイすることが多く、その登場人物となるオリジナルキャラクターのイラストをよく描いていました。テーブルトークRPGはサイコロを振って知力や筋力などキャラクターのパラメーターを決めるのですが、「こんなパラメーターのキャラクターはどんな見た目だろう」と想像して描くことが楽しかったです。当時はきちんとペン入れまですることはあまりなく、鉛筆で描くことがほとんどでした。

dww039_ShingoAdachi_pic7―― アニメはいかがでしたか。
アニメを見る習慣はありましたが自分からアンテナを張って探すほどではなく、友だちからおもしろいと勧められたアニメを見るくらいでした。『ふしぎの海のナディア』などのTVアニメをはじめ、当時全盛期だったOVAでは『メガゾーン23』が特に印象に残っています。SF仕立ての物語がおもしろく好きだったのですが、加えて全3パートでそれぞれキャラクターデザインが大きく異なっているのも印象的でした。特に梅津泰臣さんがキャラクターデザインを手がけられた『メガゾーン23 PART II 秘密く・だ・さ・い』は、他のパートとはキャラクターの髪の色まで異なりタッチも劇画調になっていてとてもインパクトがありました。

―― 高校卒業後は大阪芸術大学に進学されていますが、当時から絵のお仕事を目指していたんですか?
マンガ研究会に入ったときからプロのマンガ家になりたいという思いがあり、大学でも絵を学ぼうと大阪芸術大学を志望しました。ただ高校3年生の夏に美術予備校に通うまで絵の専門的な勉強をしていなかったため、受験したのはデッサンのテストがない映像学科でした。無事に入学できたあとは、美大のマンガ系サークルなら絵のうまい人も多くマンガに関する専門的なことも学べるだろうと思い、「CAS」というマンガ・アニメ研究サークルに入りました。

―― どんな活動をしていたんですか?
普段はイラストやマンガを自由に描くことが多かったのですが、学園祭の展示会ではカラーパネルの制作に加えて一年生は定例行事である「しりとりアニメ」に絶対に参加することになっていました。dww039_ShingoAdachi_pic4「しりとりアニメ」というのはリレー形式でアニメーションを制作する企画です。まず通常アニメで使う用紙より小さいB6サイズの紙にタップ用の穴を空けて固定し、そこに自分で好きな絵を描きます。そして前の順番の方が描いた絵と自分が描いた絵の間を埋めるアニメーションを各自制作し、最後に全員のパートをつなげてひと続きのアニメを作る、という工程です。たとえば僕がバレーボールの絵を描き、前の人からネズミの絵を渡されたら、僕はネズミから始まってバレーボールで終わるアニメを作り、次の人はバレーボールから始まるアニメを作ります。この企画で初めてアニメーション制作に触れました。

―― 学園祭での経験がアニメーターを目指す転機のひとつになったんでしょうか。
dww039_ShingoAdachi_pic3そうですね。同時に僕のカラーパネルの展示をサークルOBで当時「葦プロダクション」にいらっしゃったアニメーターの石原満さんから褒めていただいたことも大きかったです。そのときに石原さんからまだ在校中のアニメに詳しい先輩方をご紹介いただき、その方々から映像を見ながら有名なアニメーターの特徴やテクニックを解説していただくことができました。その結果、アニメーターごとの個性を意識してアニメを見るようになりました。
卒業後にアニメーターの道に進んだのも石原さんからのお誘いがきっかけでした。初めは普通に就職するつもりでテレビ局やゲーム会社の入社試験を受けていたのですが、思うように進まない中で石原さんから「XEBECという新しいアニメ会社に移ったから一緒に来ないか」と誘っていただき、動画マンとしてXEBECに入社しました。

―― 石原満さんのほかに影響を受けたアニメーターはいますか?
大学生の頃からうつのみや理さんに憧れていました。うつのみや理さんが作画監督・キャラクターデザインを担当された『とべ!くじらのピーク』は大好きな作品です。限りなくエグゼシンプルな線でありながら、動きのタイミングで立体感や重量感を出すスタイルは今でも見習いたいと思っています。
XEBECに入社してからは、うのまことさんに影響を受けました。『ラブひな』のキャラクターデザインをはじめかわいらしく魅力的な女の子の絵を描く方で、2014年は『RAIL WARS!』のキャラクターデザインを担当されていますが、そのうまさには相変わらず圧倒されました。

dww039_ShingoAdachi_pic6―― 作画のテクニックと女の子キャラクターのかわいらしさ、両方のこだわりをお持ちなのですね。
どちらも大切にしたいと思っています。ただXEBECは作画の技術を追求する雰囲気が強い会社だったので、アニメーターになってしばらくの間は技術を磨くことを追求していました。キャラクターのかわいらしさを強く意識したのは、『ロックマンエグゼBEAST+』で初めてキャラクターデザインを担当するようになってからです。石原満さんが3年間に渡りキャラクターデザインを務めてきた『ロックマンエグゼ』シリーズの中の一作だったので石原さんのテイストを踏まえてデザインしたのですが、新シリーズの『流星のロックマン』からは自分の絵の方向性を意識してデザインしています。

―― その後『WORKING!!』『ソードアート・オンライン』『ガリレイドンナ』とキャラクターデザイン・総作画監督を務めていますが、心がけていることはありますか?
たとえば『WORKING!!』のときは4コママンガの原作をひと繋がりのドラマとして描くというコンセプトがあったので、じっくりと芝居のできるキャラクターデザインを心がけつつ、原作者の高津カリノさんのテイストも残したうえで、アニメファンの方々が原作に興味を持ってくださるように工夫する、dww039_ShingoAdachi_pic8といった様々な要素を意識してかなり綿密に取り組みました。
また、総作画監督は原画マンと違い自分の絵が最終的なアウトプットとして世に出るため自分のフィルムだという意識が強くなりますし、その分責任も重くなります。同時に総作画監督はあくまで作画監督の作業までが終わった後にプラスアルファの魅力を加える仕事なので、作画スタッフの存在が第一です。その意味で作品終了後に楽しい現場だったと振り返ってもらうことができれば成功なのだと思います。

―― アニメ制作の現場ではアナログがメインだと思いますが、足立さんがデジタル作画に触れたのはいつ頃からですか?
インターネット黎明期に、パソコンに詳しい演出の方から彼のWebサイトに僕の絵をスキャンして載せてもらったのが一番最初です。当時はまだ作画監督もやっていなかった頃だったので、原画を描いてもテレビに映るのは作画監督の修正が入ったものですから、画面上に自分の絵が出てくること自体に大きな感動がありました。それでデジタルイラストに本格的に取り組んでみようと「Intuos2」を購入しました。dww039_ShingoAdachi_pic2初めてデジタル上でイラストを描いたときは、絵を拡大していくことで自分と絵の大きさの比率がアナログではありえないようなものに変わり、まるで自分が巨大な絵の上を歩いているような感覚になりおもしろかったです。
ただ板型のペンタブレットの描き方はアナログとは異なるために難しく仕事では使っていなかったのですが、近い将来、デジタルへ移行しなければならないときが来るはずだからと、第2期の『WORKING’!!』がスタートする2011年の終わり頃に液晶ペンタブレットの「Cintiq 21UX」を購入しました。使い方は実際の仕事の中で覚えたほうがいいだろうとすぐに使い始め、『WORKING!!』のパッケージの2巻目以降はデジタルで描いています。とても使い勝手がよくその後「Cintiq 24HD」も購入しました。

―― 液晶ペンタブレットを初めて使ったときはいかがでしたか?
新たに一から絵を描き始めるような新鮮な気持ちを手に入れることができました。アニメーターの仕事を始めてからアナログでの仕事が中心でしたが、アナログは紙と鉛筆とタップだけで作業するのに対してデジタル作画ではブラシなど様々な機能を使いこなすことになるので、絵作りのための頭の使い方が大きく変わりました。今は設定画やジャケットイラスト、雑誌掲載用イラストのために使っていますが、今後はアニメの現場でもデジタル作画が広まっていくはずなのでアニメーターの友人にも液晶ペンタブレットを勧めてまわっています。特に「Cintiq 13HD」や「Cintiq Companion」は、制作スタジオの机の上でも使いやすいサイズなのでアニメーターの仕事に向いていると思います。

dww039_ShingoAdachi_pic5―― 最後に足立さんの今後の展望をお聞かせください。
自分で一から企画を立ててオリジナルアニメを監督してみたいですね。オリジナルアニメの『ガリレイドンナ』では、キャラクターの衣装や髪の色を全部自分で考えることができてとても楽しかったのですが、さらに物語の設定やイメージボードから自分で描いてみたいと思っています。また自分のイメージする絵を描けるのであればメディアは問わないので、アニメでもマンガでもイラストでも積極的に関わっていきたいです。これまでも身の丈よりも大きい仕事を引き受ける中でスキルを身につけてきたので、今後もひるまずに新しい分野へとチャレンジしていきたいですね。
 
 
 
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©Bonten/Wacom

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