2014年10月01日(水)

Sculpting with Wacom
CREATORS INTERVIEW
3Dモデラー/コンセプトアーティスト:山家遼

取材日:2014年8月19日
取材場所:ワコム西新宿オフィス
取材・構成:高瀬司

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イラストレーター、マンガ家、アニメーター、デジタルアーティスト、3Dモデラー、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるSculpting with Wacom(SwW)では、ワコムのペンタブレットを手にしたデジタルアーティストたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使ったデジタルスカルプトの様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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3Dモデラー/コンセプトアーティスト

山家遼

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1988年生。愛媛県出身。シドニー大学卒業後、2011年よりFuelVFXにてモデリングを担当。その後アジア、北アメリカ、ヨーロッパでの活動を経て、2013年8月より株式会社ModelingCafeに移籍。『るろうに剣心 京都大火編』など映画・ゲームのコンセプトデザインを手がける。ショートカットキーを独自にカスタマイズしたスピーディーな制作スタイルに定評があり、ワークショップの講師やライブスカルプティングでの活躍も目立つ新進気鋭のコンセプトアーティスト。

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―― 山家さんがデジタルスカルプティングを始めたのはいつごろからですか?
sww001_RyoYAMBE_pic1高校生までは美術が特別に好きだったわけでもなく、主にサッカーに打ち込んでいました。デジタルスカルプティングに初めて触れたのは、日本の大学からオーストラリアの大学に編入した後のことです。その頃は留学エージェントのアルバイトをしていたのですが、映画のビジュアルエフェクトを制作されている日本人のお客さんと知り合いになり、映画スタジオを見学させてもらう機会がありました。それまではCGやデザインに漠然とした憧れがあるだけで、具体的なイメージは持てていなかったのですが、そこで初めて身近に感じることができました。「君も練習すれば3DCGで絵を描けるようになるよ」というアドバイスもいただけ、すぐに「Intuos3」と3DCGソフトを購入し、独学で毎日12時間以上パソコンに向かって練習するようになりました。

―― ソフトは何を使われていますか?
ZBrushというデジタルスカルプティングソフトを使っています。これまで3DCG業界ではMayaやMAXが主流で、ZBrushはキャラクターの造形ができあがった後にしわや毛穴などのテクスチャを加えるといった補助的な使われ方がメインでした。しかし最近は用途が大きく広がっていて、クオリティの面でもスピードの面でも、キャラクターや小物、背景美術を問わず3Dで作品を作る際には欠かせないツールになっています。

―― ZBrushのどこに魅力を感じますか?
sww001_RyoYAMBE_pic2ポリゴンという単位を気にせずに作業ができるところです。オブジェクトを構成しているポリゴンの分割がとても細かく、少し引いた状態ではまったく見えなくなるため、粘土をこねているようなアナログに近い感覚で操作することができます。また一度造型したオブジェクトを複製するといったデジタルでなければできない操作も簡単にでき、ZBrushにはデジタルとアナログのメリットが融合されていると感じています。

―― 今お使いのペンタブレットは何ですか?
自宅では「Cintiq 13HD」、会社では「Cintiq 22HD」を使っています。現代美術家の村上隆さんが主催される美術イベント「GEISAI」でライブスカルプティングに参加することになり、使用機材として「Cintiq 22HD」をお借りしたことをきっかけに板型のペンタブレットから買い替えました。液晶ペンタブレットでは直接画面の上に線が引けることで、モデリングがこれまで以上に正確かつスムーズに行えるようになりました。特に僕は作品を作っているときのテンションを大事にしているので、より気持ちよく描けるようになったことで制作スピードも目に見えて上がりました。

sww001_RyoYAMBE_pic3―― 作品制作にあたって工夫していることはありますか?
自分が使いやすいようにアプリケーションごとにキーボードショートカットをカスタマイズすることです。たとえばPhotoshopのデフォルトの設定では、ブラシサイズを替えるにはキーボード上で離れた位置にある「[」「]」キーを押したり、もしくはマウスの右クリックやスライダーを調整するために右手を描いている位置から動かしたりする必要があります。そこでブラシサイズを変更するショートカットキーを「Q」と「W」にカスタマイズすることで、左手だけで簡単に操作できるようにして、リズム感を損ねずに制作を続けられるように工夫しています。

―― そこまでカスタマイズされる方は珍しいのではないでしょうか?
そうですね。デフォルトの設定に自分を合わせていく人が多いと思います。ただカスタマイズの利点は多いのでもっと普及してほしいですし、僕もそのためのノウハウは積極的に提供したいと思っています。最近では『CGWORLD』2014年9月号に自分なりのZBrushのショートカットを掲載していただいたので、チェックしてもらえるとうれしいです。

―― 他のアーティストの3DCG作品を見る際もノウハウが気になりますか?
非常に精巧に作られている作品を見たときは、どうやってここまできれいに作れたのか、作業を簡易化するノウハウはあるのだろうかといった技術的な側面に興味が湧きます。海外では有名な作家が自分の技術について語るインタビューがたくさんありますが、日本ではまだ少なく、今後は増えてくれたらいいなと思います。

sww001_RyoYAMBE_pic4―― その他、他の方の作品を見る上で、注目されるポイントはありますか?
アイデアやデザイン、また筋肉や骨などの基本的な造形のセンスです。3DCGでは整合的なフォルムを作り上げる能力が最も求められる部分だと思うので、他の方がどのように作品全体を造形しているのかは細かくチェックします。

―― 造形センスを磨くためのコツはありますか?
CG作家がアナログの造形作品から学べることは多いと思います。スーパースカルピーという粘土の造形や彫刻セミナーでアナログでの作品制作を体験したことがあるのですが、アナログでの造形を一度経験すると物のフォルムを観察する目が変わると思います。

―― 山家さんの今後の展望を教えてください。
sww001_RyoYAMBE_pic5最近は友人たちと一緒に自主制作の短編CG映画に取り組んでいます。キャラクターデザインやビジュアルイメージのアイデアはたくさんあるので、ゆくゆくは長編映画の監督もやってみたいです。また僕が尊敬しているデザイナーにシド・ミードとダニエル・サイモンがいます。2人ともカーデザイナーとして活躍しながら、後に映画のコンセプトデザインを手がけるようになり素晴らしい作品を発表しています。僕も彼らのように工業デザインとコンセプトデザインを両立した活動をしたいと思っています。そのため、今はエンターテイメントに関わることが多く楽しい仕事だと思っていますが、長期的な目標としてはプロダクトデザイン、特にカーデザインにもチャレンジしてみたいです。
 
 
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ダークファンタジーの世界をコンセプトに、ネクロマンサーを制作しました。全体のシルエット、シェイプから受ける印象、光のコントラストを意識しつつ複製と変形を繰り返し、羽や歯などの細部のバランス調整に最も時間をかけました。3Dの作品というとどの角度から見ても整合性の高いデザインにする必要があると思われがちですが、タロットカードからインスピレーションを受けて制作した今回の作品は、決まった角度からイラスト的な見せ方をすることにチャレンジしています。

©Bonten/Wacom

関連リンク

Drawing with Wacom 2013~

Drawing with Wacom 2009~2012