2014年10月27日(月)

Drawing with Wacom CREATORS INTERVIEW 042
イラストレーター:TOKIYA SAKBA
+ グラフィックデザイナー:杉山峻輔

取材日:2014年9月24日
取材場所:ワコム西新宿オフィス
インタビュー・構成:高瀬司

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イラストレーター、マンガ家、アニメーター、デジタルアーティスト、3Dモデラー、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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イラストレーター

TOKIYA SAKBA

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2007年にフルカラーコミック誌『robot9』(ワニマガジン社)に掲載されたマンガ『マホマ法』で商業デビュー。2012年にデジタルイラストレーベル「sKILLupper.NET」を立ち上げ、フリーのイラストレーターとして本格的な活動を開始する。主な仕事に『ポケモンカードゲーム』『LORD of VERMILION』といったトレーディングカードゲームへのイラスト提供や、『138°E』(ワニマガジン)で連載中のイラストノベル『アストラルメールズ』のキャラクターデザイン・挿絵などがある。

 

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グラフィックデザイナー・VJ・映像ディレクター

杉山峻輔

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スケブリ名義でも活動。2010年頃からネットレーベル「Maltine Records」のジャケットデザインに携わり、近年はアイドルグループ「でんぱ組.inc」のCDジャケットデザインなどで注目を集める。tofubeatsの楽曲ではMVディレクターも手がけており、監督作品として「No.1 feat.G.RINA」(細金卓矢との共作)や、「Come on Honey!feat.新井ひとみ」(古屋蔵人・森翔太との共作)、「poolside feat.PES」(古屋蔵人・大橋裕之との共作)がある。

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TOKIYA SAKBA インタビュー

―― イラストを描き始めたきっかけを教えてください。
dww042_TOKIYASAKBA+SyunsukeSUGIYAMA_pic1中学生の頃からマンガ家になりたいと思うようになり、よく自由帳にオリジナルのマンガを描いていました。高校生になり両親にパソコンを買ってもらってからはデジタルでの作画に切り替え、マンガよりもイラストをメインに描くようになりました。その頃オンライン上に自作イラストを掲載したサイトがたくさんあることを知り、自分でもサイトを立ち上げ作品を公開するようになりました。

―― 反応はいかがでしたか?
自分のサイトに設置したお絵描きBBSを通じて絵を描く友人ができました。当時まわりにいた方はほとんどが初心者でしたが、互いに競い磨き合っている雰囲気がありとてもよい刺激になりました。その頃の友人の中には今ではプロのイラストレーターになった方もいて、いまだに交流があります。

―― プロになった経緯を教えてください。
20歳のときにSQUARE ENIXの採用試験を受けデザイナーとして入社しました。オンラインゲーム『ファイナルファンタジーXI』に登場する小物のデザインや、モンスターのテクスチャを描く仕事をしていました。2年半で退社したあとは、子供のときに好きだったアクションゲームの制作に携わりたいと思い、クリスピーズというゲーム会社に入りました。そこで『TOKYO JUNGLE』のメインデザイナーのひとりとして、UIのデザインから動物のキャラクターデザイン、背景のコンセプトアートなどを任せていただき、その後、フリーランスのイラストレーターとして独立しました。

―― 影響を受けたクリエイターを教えてください。
高校生のときに最も憧れていたのは寺田克也さんです。その後ネットに触れるようになってから川洋さんの作品に出会い衝撃を受けました。僕が厚塗りを好んでいるのは、このお2人からの影響が大きいです。絵の具で描いたような厚塗りがデジタルでも描けることに驚き、自分もそうした作風を目指すようになりました。造形に関しては子供の頃に憧れていた鳥山明さんからの影響が大きいです。たとえば『ドラゴンボール』の悟空の髪の房は、ちょうど髪と髪のあいだに立体感が生まれるような絶妙なバランスで描かれています。そうした平面的なレイヤーを積み重ねることで絵に立体感を持たせる手法は好んで取り入れています。

―― 最近のお仕事をいくつか紹介していただけますか?
dww042_TOKIYASAKBA+SyunsukeSUGIYAMA_pic2昨年やったファッションブランドchlomaさんと、でんぱ組.incの藤咲彩音さんとのコラボレーション企画は印象に残っています。chlomaさんのSFチックな衣装をまとった藤咲彩音さんを中心に、人物写真とイラストを融合させたポスターデザインと、ポスターの人物部分をイラストとして描きおこしたものをプリントしたトートバックを制作しました。また『ポケモンカードゲーム』のカードイラストは、5年ほど前から現在まで続けている僕の代表作のひとつです。どちらの作品もイラストレーションの中にグラフィックや実写の表現を取り込んでいます。そのことで、自分ひとりで制作した作品にもかかわらず、まるで別の作家によるリミックスがほどこされたようなテイストを出せるよう意識しています。

―― どのようなツールを使われていますか?
高校2年生のときにパソコンで絵を描き始めて以来ずっとPhotoshopと「Intuos」シリーズのペンタブレットを使用しています。初めて使ったペンタブレットは初代「Intuos」でした。ゲーム会社で働いていた頃、家では「Intuos3」を、会社では「Intuos2」を使っていました。現在は「Intuos4」を使っています。

―― 本日は「Cintiq 24HD touch」で制作していただきましたが、液晶ペンタブレットの感想はいかがですか?
液晶ペンタブレットは「東京ゲームショウ2013」でライブペインティングを行ったときに、「Cintiq 24HD」をしばらくお借りして使っていたことがあり、筆圧感知の機能が優秀で、思ったとおりの線を引けることに魅力を感じました。また「Cintiq 24HD」を経験したあとでは、板型のペンタブレットを使うときの感覚も変わってきました。これまでは短いストロークで少しずつ線を引いていたのですが、24インチの大きな画面を経験したことでもっと腕全体を使い思い切って描いてもよいのだと思うようになり、一息で線を引くことが増えました。
 

杉山峻輔 インタビュー

dww042_TOKIYASAKBA+SyunsukeSUGIYAMA_pic3―― 創作を始めたきっかけは何ですか?
子供の頃はプラモデルが好きだったくらいで特に絵の勉強はしていなかったのですが、高校生のときにクラスの友人が芸術系の大学を志望しているという話を聞き、「創作が授業の大学があるなら自分も行ってみたい」と思うようになりました。それで高校3年生の8月から美術予備校に通い出し、デザイン系の大学に進学しました。

―― 学生時代のエピソードを教えてください。
大学では3DCGやプログラミングなどメディアアートの分野の勉強をしていました。キャンパスが浜松にあったこともあり、自動車関連の仕事に就くための職人養成所という性格が強く、ものづくりの技術として木工や金工の授業も受けていました。またデザイン系のサークルに入り、友人が主催するクラブイベントのフライヤー制作やVJとしての活動を始めました。

―― プロになった経緯を教えてください。
大学卒業後しばらくはプライベートでアートワークの制作を行っていたのですが、クリエイティブポータルサイトSHIFTが主催する「SHIFTカレンダーコンペティション2010」に入選したのをきっかけに、デザイナーとして活動するため上京しました。上京後は大学時代の先輩から誘っていただき、エディトリアルデザインの会社でInDesignを使ったDTPのアルバイトを始めました。その後、個人の仕事としてネットレーベルMaltine Recordsさんからジャケットデザインの依頼もいただくようになり、デザイナーとしての活動を始めました。

―― 影響を受けたクリエイターを教えてください。
学生時代は、無印良品の広告で有名な原研哉さんのデザインをよく参考にしていました。当時制作していたグラフィックには、原さんを意識した余白を十分に取ったシンプルな作品がたくさんあります。Webデザインでは坂本政則さんに憧れています。坂本さんがデザインされたアニメ『サムライチャンプルー』のサイトを初めて見たときは、ページごとに文字の角度が大きく変化するカッコいいデザインは印象に残っています。

dww042_TOKIYASAKBA+SyunsukeSUGIYAMA_pic4―― 最近のお仕事をいくつか紹介していただけますか?
2012年にやった『CLIP STUDIO PAINT PRO イラストレーションテクニック』の装丁・デザインの仕事です。普段はイラストありきでデザインすることが多いのですが、この本の表紙では初めてイラストレーターの方と構図やポージングイラストから一緒に考えることができたのでとてもやりがいがありました。またでんぱ組.incのCD『WORLD WIDE DEMPA』のジャケットデザインは、背景から小物まですべてセットを組んで撮影しています。衣装はスタイリストさんの推薦でファッションデザイナーの村上亮太さんの作品をお借りしました。装飾をふんだんに盛り込んだきらびやかでカラフルな村上さんの服は、でんぱ組.incのイメージにぴったりだと思ったので実現できてうれしかったです。

―― どのようなツールを使われていますか?
ソフトはIllustratorをメインに、レタッチではPhotoshopを使っています。3年前に友人から「Intuos3」を譲り受けてから、レタッチの作業にペンタブレットを活用するようになりました。ペンタブレットを導入したことで、画像を切り抜く作業がスムーズになり仕事のスピードが大幅にアップしました。またペンタブレットを使っているときのほうが、マウスに比べて背筋がのび気持ちよく作業ができるのも気に入っています。

―― 本日は「Cintiq 24HD touch」で制作していただきましたがいかがでしたか?
液晶ペンタブレットで作品を制作したのは初めてだったのですが、思っていた以上に使いやすかったです。レタッチの作業がやりやすくなるのは当然として、各種パラメーターを調整する際にスライドバーの操作がストレスなくでき、作業全体がよりスムーズに行えました。タイムラインを繰り返し操作する映像制作・編集の仕事でも役に立つのではないかと思います。
 

TOKIYA SAKBA×杉山峻輔 対談

dww042_TOKIYASAKBA+SyunsukeSUGIYAMA_pic5―― お互いの作品にどんな印象を持たれていましたか?
TOKIYA 杉山さんは王道から外れたことをやっていながら、きちんとデザインとして成立させているバランス感覚がすごいと思います。たとえばでんぱ組.incのCD『でんでんぱっしょん』のジャケットのようなアイドルのお仕事の現場で、メンバーをステッカーにして何枚も重ね合わせたり、ホログラムがついたステッカーの上からさらにホログラム加工をほどこしたりするような遊び心は、王道とは違う杉山さんならでは発想だと思います。VJをされているときも、音楽に対して予想外の映像を組み合わせることが多く、そうした外しのテクニックが魅力のひとつだと感じます。
 
杉山 TOKIYAさんはひとつの作品の中に複数の異なった質感を同居させるのが非常にうまい方だと思います。たとえば先ほど話題に出たchlomaさんと藤咲彩音さんとのコラボ作品は、デフォルメされたイラストレーションと実写の質感がひとつの作品の中で交じり合っているところにおもしろさを感じました。厚塗りのイラストでも、あえて塗りの密度が薄くなっている部分を作ることで、見る方が「引っかかり」を覚えるテイストの作り方がとても印象的です。

―― 本日制作された作品のコンセプトを教えてください。
dww042_TOKIYASAKBA+SyunsukeSUGIYAMA_pic6TOKIYA オリジナルのCDジャケットを想定して作りました。女の子がつけているマスクは、戦闘時には自動で展開し装備品になるSF的なガジェットという設定です。この絵は戦闘の直前にマスクが展開した瞬間を描いたものなので、マスクの縁に赤く光るエフェクトを加えてあります。また女の子の表情も、これから戦闘に突入するということで少し憂いをおびた影の部分を意識しています。見ていただく方には、キャラクターが後ろに背負っている物語を想像していただけたらうれしいです。
 
杉山 TOKIYAさんが描かれたキャラクターを活かすことを第一にデザインをしました。黒いガジェットの持つ光沢の具合が印象的だったため、光沢に合わせて画面全体が硬質な印象になるようにしました。当初はカラフルな背景を予定して制作していましたが、作り込んでいくうちにイラストに対して背景の主張が強くなりすぎたと感じたため、最終的に全体をモノトーンがメインになるように変換しなおしました。結果的に作品全体としての統一感が出せたと思います。
 
―― 本日制作された作品の感想はいかがですか?
TOKIYA 杉山さんのデザインが入ることで、イラストを描いた時点では想像していなかった作品になり興味深かったです。視覚的に統一感のある画面になったことで、物語を想像するだけでなくおしゃれな雰囲気も持った間口の広い作品になったと思います。もともとモノトーンな色味で作っていましたが、イラストに緑色が乗りミリタリーの迷彩柄に近い色調になった点も僕の好みです。
 
杉山 今回一番のポイントになったのは、一度作り込んだ要素をそぎ落としていく過程です。バックのデザインをシンプルにしていき、カラーもモノクロに変えたことで、作品全体として洗練させることができたと思います。変更前のほうが派手で目を引く画面になっていたと思いますが、画面全体の秩序を考えると最終的な仕上がりが正解だったと思います。
 
TOKIYA 今回の制作工程を見ていても、杉山さんはソフトを操作する中で偶然生まれる効果をうまく取り入れながらデザインをしていると感じました。それは手でイラストを描いているときには生まれにくい効果なので、僕ひとりでは出せなかったテイストです。ライブペインティングということで、現場で生まれる発想に任せた部分が多かったのですが、最終的に素晴らしいコラボレーションができたと感じています。
 
 
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©Bonten/Wacom

関連リンク

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