2014年12月19日(金)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 044
マンガ家:鳥海ペドロ

取材日:2014年11月17日
取材場所:ワコム西新宿オフィス
インタビュー・構成:高瀬司

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イラストレーター、マンガ家、アニメーター、デジタルアーティスト、3Dモデラー、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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マンガ家

鳥海ペドロ

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2010年に読み切り短編『甘い悪魔が笑う』で第50回『なかよし』新人漫画賞に入選しデビュー。お嬢様と執事が織りなす世界観や魅力的な男性キャラの描写を中心に高い評価を受け、デビュー作ながら全6巻の連載作品となる。現在は『なかよし』(講談社)にて鬼をモチーフとした和風ファンタジー『百鬼恋乱』を連載中。『なかよし』の表紙を何度も飾る看板作家のひとりとして注目を集めている。

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dww044_pedoroTORIUMI_pic06―― 鳥海さんが絵を描き始めたきっかけを教えてください。
子どものころからよくイラストを描いていました。マンガを描き始めたのは小学生のころです。いとこや友だちが描いているのを見て、自分でもマネをして描くようになりました。また練習のために、桂正和先生のマンガや、玉越博幸先生作画の『BOYS BE…』などのかわいらしい女の子が出てくる作品の模写をよくしていました。ただ当時は思うように描けず、「どうしたらこんなにかわいい女の子が描けるんだろう」と不思議に思っていました。

―― 子どものころはどんなマンガを読まれていましたか?
いとこの影響で少年向けマンガをよく読んでいました。当時は高橋留美子先生の『らんま1/2』や、テレビアニメとして放送されていた『まじかる☆タルるートくん』にはまっていました。少女マンガを読むようになったのはそのあとのことで、あさぎり夕先生の『コンなパニック』や『ミンミン!』などファンタジックな作品が好きでした。『なかよし』に連載されているような学園ものを読むようになったのは、大人になってからです。

dww044_pedoroTORIUMI_pic10―― プロのマンガ家を目指されたのはいつごろからですか。
『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の作者の秋本治さんが親戚なのですが、その影響もあり、子どものころから漠然と意識していました。当時若い年齢でデビューされる方が多かったので、「自分も頑張らなくては!」と思い、高校生のときにマンガの投稿を始めました。そのときに一度賞をいただいたのですが、まだ「マンガを好きなだけで描いてる」という状態と、「早くデビューしたい!」という気持ちがぶつかり空まわっていました。「面白いマンガを描く」にはどうすればいいのかわからなくなってしまい、大学を卒業するまで趣味でのイラストやマンガを描いていました。

―― その後デビューされるまでの経緯を教えてください。
大学を卒業する頃、就職かマンガ家を目指すか迷っていて、就職活動も行ったのですが、自分の将来について見つめ直した結果、マンガ家を目指そうと決心しました。卒業後はアルバイトをしながら出版社へ持ちこみをし、何度か賞もいただくことができました。ただなかなかデビューには至らず…、デビュー目前の賞を数回頂戴していた末の結果でしたので、自分の力不足に心が折れてしまいました。そんなとき、アシスタントとして当時お世話になっていた先生から「もう一回、今度は好きなもの描きなよ」とご指導いただき、『なかよし』に投稿することを決めました。そこで編集者の方に拾っていただけ、『甘い悪魔が笑う』という読み切りマンガでデビューさせていただきました。

dww044_pedoroTORIUMI_pic09―― デビュー作について教えてください。
「男の子を魅力的に描ける」と評価していただいたので、初めの読み切りはその部分を意識しようと考えました。そのため、最初にまず「意地悪な男の子が最後は超デレ顔を浮かべる」という展開を決めました。また、かわいい女の子が見せるカッコいい一面も描きたいと思い、思いついた話の中で最も印象に残りそうな「女の子が最後に男装をする」という展開にしました。掲載された結果、幸いにもアンケートの評判がよく、そのまま連載させていただくことになりました。

― 『甘い悪魔が笑う』を連載するうえでこだわられた点は何ですか?
―男の子に色っぽい雰囲気を持たせることは連載に移ってからも気をつけていました。たとえば色気を感じさせるには前髪をどこまで伸ばせばいいか、鎖骨をどこまで見せればいいか、手の甲に走る筋をどう描けばいいかといった試行錯誤を繰り返しました。また女の子に関しては、髪の長さや流れる方向に気を使いました。女の子のキャラクターは髪が長くてウェービーなほうが美人に見えやすいので、当時の『ポップティーン』に載っていたようなロングヘアで前髪が流れているようなデザインにしました。

dww044_pedoroTORIUMI_pic08―― 現在連載中の『百鬼恋乱』について教えてください。
作品の構想は編集者の方から「陰陽師の話を描いてみませんか」とご提案いただいたことから生まれました。もともとホラーものが好きだったので、陰陽師の話より敵にあたる鬼を主人公にしたダークヒーローもののほうが自分には向いているのではないかと思い、『百鬼恋乱』の設定ができあがっていきました。

―― ストーリーで気をつけていることは何ですか?
連載マンガである以上、一話一話をおもしろく読めることを大事にしています。ただ『百鬼恋乱』はストーリーとしての要素が強いので、一話完結が多かった前作以上に物語の流れを大事にしています。なので各話ごとにラストの部分でどうすれば読者の方に次も読みたいと思っていただけるか、常に気をつけています。これまでの物語の流れを考慮しながら、ラストに少し新しい展開を入れたり、重要な伏線や前振りを匂わせたりと、編集者の方のアドバイスもいただきながら様々な「引き」を作っています。

―― 作画の面ではいかがですか?
dww044_pedoroTORIUMI_pic02前作とくらべ登場キャラクターの数が増えているので、画面全体の人口密度が増えてもすっきり読めるよう気をつけています。そのため線や効果トーンの数を減らして、『甘い悪魔が笑う』と違うシンプルな絵作りを探りました。また作品の性質上、和装のキャラクターを描くことが多くなるため、様々な資料を参考にしているのですが、少女マンガの絵としてキャッチーになるように、和ものの中に現代風のおしゃれでカラフルなデザインを取り入れるようにしています。

―― キャラクターの描き方で気をつけていることはありますか?
ヒロインのココは普段は明るい元気キャラですが、恋愛要素のあるシーンでは表情が色っぽく見えるようにしています。たとえばココは髪を後ろで結んでいるためショートカット風に見えるのですが、そうしたシーンでは髪を下ろすことで美人に見えるようにしたり、唇にグラデーションを乗せてつややかな雰囲気を出すようしたりにしています。男性キャラに関しては、黒い髪の兄・零(れお)と白い髮の弟・十(とあ)のあいだで見た目の違いがわかりやすいよう、零の黒目を小さくして三白眼にするなどデザインに差をつけています。また何気ないシーンでも立ち方(振る舞い)に違いをつけるなど、シルエットだけでも誰なのかわかるように描いています。

dww044_pedoroTORIUMI_pic05―― マンガを描かれる際の作画の環境を教えてください。
『甘い悪魔が笑う』はほとんどアナログで描いていました。現在連載中の『百鬼恋乱』もメインはアナログです。ただキャラクターの位置関係を変えたり絵の一部分だけを大きくしたりといった修正作業は、ペンタブレットを使いデジタルで行っています。『百鬼恋乱』の第4巻からは、トーン作業も少しずつデジタルに移行しています。ただ、私の場合いきなり全部を慣れていないデジタルにしてしまうと、アナログだったときのマンガと見え方に差ができてしまうため、今のアナログの画面に近い仕上がりになるよう確認しながら徐々に移行している段階です。

―― カラーイラストはいかがですか?
カラーイラストはラフか下絵までアナログで描き、その後はデジタルで完成させています。たとえば打ち合わせをしながらイメージを固めていく段階はアナログで描き、キャラクターの表情や体のパーツを直す、というような細かい作業からはペンタブレットに移行しています。その後、彩色や仕上げももちろんペンタブレットを使っています。

―― ペンタブレットを使い始めたのはいつごろからですか?
dww044_pedoroTORIUMI_pic07お絵描きチャットで遊んでいた高校1年生のときに、iMacと同時に「Bamboo」を購入しました。そのときはまだアナログで描くことがメインでしたが、カラーイラストの彩色は「Bamboo」とPhotoshopを使っていました。大学生になってからはマンガを描くときもペンタブレットを使うようになり、大学2年生のときに購入した「Intuos3」は今でも活用しています。またマンガ家デビューして、「Comic Studio」を使えるというアシスタントさんが入ってきてくれたときに「Cintiq 22HD」を購入し、共用のツールとして使っています。

―― 本日は「Cintiq 24HD touch」で制作していただきましたがいかがですか?
描いていてとても楽しいですし、板型のペンタブレットとくらべてスムーズに作業ができました。画面が大きいところもいいですし、直接ディスプレイに描けるので直感的に操作ができて、アナログで描いているのと近い感覚で描けるところに魅力を感じました。ディスプレイの発色もとてもきれいで、彩色のスピードも格段に上がると思います。仕事場の作画環境も近いうちに線画以外はデジタルへ移行したいと思っているので、それにぴったりなツールだと思います。

―― 最後に、マンガ家を目指されている方にアドバイスやメッセージがあればお願いします。
dww044_pedoroTORIUMI_pic03私はデビューが遅かったので、もしなかなかプロになれないという方がいたら焦らないでほしい、ということを伝えたいです。必ずチャンスや転機は来ます。デビュー前の私にアドバイスするとしたら、「マンガの描き方を具体的に教えてくれる良いハウツー本やネットの記事、メイキング動画が今はいろいろあるので、そうしたものをフルに活用しながら練習するのが効果的だよ」ということ。また「アシスタント先で作業させてもらう時間は自分にとってもとても貴重なんだよ」ということも教えたいです。アシスタント先では、プロが締め切りのある限られた時間の中でどうやって原稿のクオリティを保っているのかという、現場ならではの工夫が肌で感じられたので、プロの人が仕事をしているのを目の前で見ることで、本だけではわからないことを多く学ぶことができました。
 
 
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©Bonten/Wacom

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