2015年01月26日(月)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 045
イラストレーター:えいひ + デザイナー:有馬トモユキ

取材日:2014年12月10日
取材場所:ワコム西新宿オフィス
インタビュー・構成:高瀬司

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イラストレーター、マンガ家、アニメーター、デジタルアーティスト、3Dモデラー、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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イラストレーター

えいひ

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『ジハード』シリーズ(定金伸治/星海社)、『僕らは魔法少女の中―in a magic garden―』シリーズ(御影瑛路/電撃文庫)、『2WEEKS』シリーズ(野中美里/星海社)など書籍のイラストでの活躍が多数。最近の仕事に、有馬トモユキがデザインを担当した2015年1月刊行の『今日、となりには君がいない。』(清水苺/講談社ラノベ文庫)のイラストなど。

 

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デザイナー

有馬トモユキ

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日本デザインセンター所属。TATSDESIGN名義でのグラフィックデザインを中心に、商業コンテンツのプロモーションに多数関わる。主な仕事にゲームアプリ『PLUG-IN Championship』やTVアニメ『アルドノア・ゼロ』のアートワークなど。また『KEI画廊』(KEI/ビー・エヌ・エヌ新社)、『竹画廊絵にっき』(竹/星海社)など書籍のデザインも多数。

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えいひ インタビュー

dww045_Eihi+TomoyukiARIMA_pic1―― えいひさんが絵を描き始めたきっかけを教えてください。
幼稚園のときから、うさぎなど簡単に描けるモチーフを使った絵本を描いていました。色鉛筆など家にある画材で描いた絵に簡単な物語をつけたものです。小学生になりマンガを読むようになってからは、キャラクターイラスト風の絵を描くことが多くなりました。また、小学校5・6年生のときからネット上のイラストサイトを見るようになり、中学1年生のときに自分のイラストサイトを立ち上げました。中学3年生のときに仙台から東京に引っ越してきてからは、オリジナルのマンガを描いてコミティアに参加するようになりました。

―― プロのイラストレーターになった経緯を教えてください。
高校・大学と美術系の学校へ通いながら同人活動やサイトでのイラストの発表を続けていたところ、18歳のときに飛鳥新社さんからお声がけいただき『季刊エス』にイラストを掲載していただきました。当時はまだプロのイラストレーターを目指していたわけではなかったのですが、ありがたいことにその後も商業媒体からお仕事をいただくことができ、仕事をしていくなかで決心を固めていきました。

―― 初期のお仕事で印象に残っているエピソードを教えてください。
初めて小説の挿絵を担当した縞田理理先生の『フーバニア国異聞 水の国の賢者と鉄の国の探索者』では、作品の世界観をイラストで表現するということのむずかしさを思い知らされました。作中に登場する架空の生物を絵にする必要があったため、編集者の方が送ってくださった資料を参考にしながら描いたのですが、なかなか思い通りのデザインができずとても苦労したことを覚えています。

―― 絵を描くうえで転機はありましたか?
Twitterを始めたことです。2007年4月に登録したのですが、Twitterの登場で絵描き同士のコミュニケーションが活発になったと思います。私もTwitterで誘われ合同誌に参加する機会が増えました。またTwitter発の合同誌は締め切りまであまり余裕のないことが多く、そこで短い期間内でイラストを仕上げる経験を積んだことで、以前より絵を描くスピードが速くなったように感じます。

―― 印象に残っている合同誌はありますか?
どの本も思い入れがありますが、2010年の夏に同時頒布された『mirror twins』はとくに印象に残っています。ネット上で有名だったうーさーさんを、イラストレーターの方々が擬人化するイラストメインの企画だったのですが、うーさーさんご本人からお声がけいただき、表紙イラストとうーさーさんが執筆した小説の挿絵を描かせていただきました。この本で生まれたキャラクターの何人かは、後に単行本化されたWebコミック『うーさーその日暮らし』に登場するキャラのモデルになっています。またそのご縁で、短編アニメ化された際にはキャラクター原案を担当させていただくことができました。

―― イラストのお仕事で印象に残っている作品をいくつか教えてください。
ひとつは野中美里先生の『2WEEKS』シリーズです。それまで黒い色を使うことはほとんどなかったのですが、『2WEEKS』はダークな雰囲気の小説なので黒を取り入れることになりました。また一般的なライトノベルのお仕事とは違い、どの場面に挿絵を描くかの判断を任せていただけたので、「物語をどうやって絵で表現するか」ということを考えるよい訓練になりました。ほかには森田季節先生の『ウタカイ』も印象に残っています。この作品では、ライトノベルで定番になっているような白地にキャラクターを置くだけの表紙ではなく、背景まで描きこんだイラストを描いてほしいというオーダーをいただきました。そこで、短歌を詠んでバトルするという内容にあわせ、日本画のテイストを取り入れました。もともと東山魁夷などの日本画が大好きだったこともありますし、デザイナーさんによる金箔がついた豪華な装丁もすごくよく、お話をいただけてありがたかったです。

―― 長期シリーズだった『ジハード』(著:定金伸治)はいかがですか。
dww045_Eihi+TomoyukiARIMA_pic2編集者さんから「何百年も歴史に残った書物のように、書籍という素材の質感を持った本を出したい」というお話をうかがったため、イラストも伝統的な宗教画の手法を取り入れて描きました。また、ブラシのあとを残したり時代が経過して油彩絵の具が黄変した状態を再現したりすることで、作品がモチーフとしている十字軍遠征という歴史的な事件の重みを絵の質感のなかに取りこんでいます。

―― えいひさんがペンタブレットを使い始めたのはいつごろからですか?
中学1年生のときに、Webサイトでイラストを発表するにはデジタルで描いたほうがいいだろうと初代「Intuos」を購入しました。それから長らく使い続けていたのですが、2、3年前に「Intuos5」へ買い替えました。それまでは線画はアナログで描きスキャンしていましたが、「Intuos5」に買い替えたことで細かい線画までスムーズに描けるようになりました。ソフトは中学・高校のときはPainterを使っていましたが、大学入学以降はPhotoshopを使っています。

―― 本日、新製品である「Cintiq 27QHD touch」を使われてみていかがですか?
普段は塗り分けのためのパスを引くことが多いのですが、板型のペンタブレットとは異なり、液晶ペンタブレットでは絵の中でパスを引きたい位置に直接ペンを持っていけるためとてもやりやすかったです。筆圧のかけ方に対する反応がとてもよく、「Intuos5」よりも紙に描いているのに近い感覚で描けました。これを機会に「Cintiq 27QHD touch」への買い替えを検討してみたいと思います。
 

有馬トモユキ インタビュー

―― 有馬さんがデザインを始めたきっかけはなんですか?
dww045_Eihi+TomoyukiARIMA_pic3中学3年生のときに、ネット上で知り合った友だちと一緒に、大好きだった音楽ゲーム『beatmania』に出てくるような曲をDTMで制作しネットで発表する計画を立てたことがきっかけです。配布するためのWebサイトを作っているうちに、どうすれば見栄えのいいサイトを作れるのかを考えることに興味が移っていきました。そのため学生価格で安く買えたMacromedia Flashを購入し、当時流行っていた動きのあるWebサイトを作っていました。

―― そのころ影響を受けたクリエイターはいますか?
デザイナーズ・リパブリックさんやNendo Graphicsさんが好きで、『design plex』などのデザイン雑誌をよく読んでいました。Webデザインでは当時Flashを使い先進的な表現をされていた中村勇吾さんに憧れていました。また音楽が好きだったため、Underworldというバンドが母体のデザイン会社・TOMATOを目標にしていました。チームでデザインをやりながら音楽で世界的なヒットも飛ばしているという作家像に憧れ、「あんな大人になるにはどうしたらいいのだろう」と思っていました。

―― デザインはどうやって勉強したのでしょうか。
高校生のときは図書館でデザイン関係の本をずっと読んでいました。プロダクトデザインからインテリア、グラフィックアートまでデザインに関わるものなら何でも独学で目を通していました。大学時代は、高校を卒業した次の日からデザイン会社にアルバイトとして入り、デザインの考案やWebサイトへの制作に携わっていました。またタイポグラフィを学ぶために、大学4年生のときに朗文堂・新宿私塾という専門学校に通い、書体や組版、印刷の歴史からデザインの実技まで体系的に教わりました。このことは非常に大きな経験になり、今後仕事をしていくにあたってタイポグラフィの研究はずっと続けていこうと思いました。

―― 現在のお仕事に就かれるまでの経緯を教えてください。
大学を卒業したあとは広告代理店系のWeb制作会社に入ったのですが、もっと幅広いデザインに関わりたいと思い1年と少しでフリーランスに転向しました。そのころ、初音ミクのイラストで有名なKEIさんの画集『KEI画廊』のデザインなどを担当させていただいたのですが、自分にはチームで仕事をするほうが合っていると思い、2009年1月に現在勤めている日本デザインセンターに入社しました。

―― 日本デザインセンターではどんな作品を担当しているのでしょうか。
いろいろありますが、たとえばTOYOTAさんが出しているゲームアプリ『PLUG-IN Championship』の開発はとてもやりがいのある仕事でした。スマートフォンの充電が楽しい行為だと思えるようになるためのゲームなのですが、企画からアプリ内の細かいモーションやグラフィックのデザイン、dww045_Eihi+TomoyukiARIMA_pic4Webサイトの制作まで「ひとつの作品をどうやって見せるか」という面を総合的に担当することができました。様々なメディアをまたいでデザインを行うことは、僕がデザイナーとして目指していることのひとつなのでとても達成感がありました。今手がけているTVアニメ『アルドノア・ゼロ』の企画も同様です。

―― 『アルドノア・ゼロ』のアートワークについて教えてください。
最初にいただいた依頼は作品タイトルのデザインだったのですが、こちらから様々な企画を提案し、パッケージや関連書籍から、作品内のタイポグラフィやWebサイトまでデザインに関わるものを総合的に担当させていただいています。僕と瀬島卓也くんと宮崎真一朗くん、堺達彦くんの4人チームで制作を進めているのですが、たとえば作中に登場する架空のオープンソースOS「ASIMOV」のインターフェイスは、僕たちが一からデザインしています。アニメの中でも主人公の機体が起動するときなどに映りますし、WebサイトやBlu-rayのメニュー画面もこのOSのデザインがコンセプトです。

dww045_Eihi+TomoyukiARIMA_pic5―― 本のデザインはいかがですか。
定期的なものでは「ハヤカワSFシリーズ Jコレクション」のデザインを、2012年の10周年リニューアル時から担当しています。自分の引き出しにあるアイデアだけでは似かよってしまうため、自然と作品の内容を深く読みこんだうえでデザインをするようになりました。また内容を反映させることや、書店に並んだときキャッチーに見えることだけでなく、作品内容を踏まえるこで、読後に表紙の印象が変わるようなデザインを心がけています。たとえばシリーズ最新作である柴田勝家さんの『ニルヤの島』では、帯で隠れる位置にある波紋に4色のパターンをデザインしていますが、これは作品のテーマと関わるDNAの構成要素・ATGC(塩基対)をモチーフにしています。

―― 有馬さんがペンタブレットを使うようになったのはいつごろからですか?
2013年に「Cintiq 13HD」を購入しました。デザイナーで使われている方はまだ多くありませんが、僕は液晶ペンタブレットを導入したことでマウスを使っていたときと比べデザインするときの試行錯誤のサイクルを早くすることができ、質とスピードの両方を上げることができました。また絵やデザインのためだけでなく、他人とイメージを共有するためのツールとしても魅力的だと思います。「Cintiq 13HD」を持ち歩くことで、打ち合わせの際にその場でサンプルを作成しやすくなりましたし、タイポグラフィの講師をするときも画面を見せながら授業することでよりスムーズに進行できるようになりました。タブレット端末はまだ過渡期だと思うのですが、「Cintiq」は今後を担う有力な選択肢のひとつだと思います。とても便利なツールなので、そうした用途でもより普及してくれるとうれしいです。

―― 本日、新製品「Cintiq 27QHD touch」を使われてみての感想はいかがですか?
画面がとても大きく鮮明で驚きました。また「Cintiq 13HD」同様、絵を描くだけでなく様々な使い方ができると思いました。たとえば「Cintiq 13HD」は仕事を補助してくれるツールとして役立っていますが、「Cintiq 27QHD touch」はタッチ機能や描画機能のついた優秀なディスプレイとして使えそうですし、実際に液晶ペンタブレットはこれからそうした使われ方がどんどん広まっていくと思っています。
 

えいひ×有馬トモユキ 対談

―― おふたりが知り合ったきっかけを教えてください。
dww045_Eihi+TomoyukiARIMA_pic6有馬 僕がWebデザインを始めた中学3年生のときに、イラストレーターさんのサイトをめぐっていて、えいひさんのことを知りました。「自分より年下なのにもう立派に表現活動をしている人がいる!」ということに衝撃と感銘を受けて、僕の方からメールを送ったのがきっかけです。
 
えいひ 当時は自分のサイトに掲示板を設置していたのでそこにコメントをくださる方がほとんどだったのですが、有馬さんはすごく長いメールを送ってくれたことをよく覚えています。とても褒めてくれて大きな励みになりました。

―― 今回の作品のコンセプトについて教えてください。
有馬 イラストとデザインが調和しやすい作品にしようと思い、オリジナルのライトノベルのジャケットを制作しようと決めました。
 
えいひ キャラクターの造形は有馬さんと相談しつつ、ペンタブレットを使う企画ということで「絵を描くのが好きそうな制服姿でメガネをかけた女の子」という風にイメージを膨らませていきました。
 
有馬 最終的には「イラストレーターを目指す女の子を主人公にしたライトノベルの表紙を作る」というコンセプトに決まり、タイトルはもちろんレーベルのロゴからデザインフォーマットまですべて一からデザインしています。

―― 今回、共同制作するうえで気をつけたことはなんですか?
dww045_Eihi+TomoyukiARIMA_pic7えいひ 有馬さんのディレクションが入ることを想定して、どんなデザインにも対応できるようあまり色数を増やさないようにしました。ただ差し色がほしいということだったので、メガネやリボン、ネクタイに赤を加えるようにしています。
 
有馬 ライトノベルはかならず帯がつくため、カバーの下50mmのスペースには装飾を加えられないという制約があるのですが、リアルさを出すためにその点も再現しています。またライトノベルのカバーは、レーベルごとに色で差別化を行っているので、既存のものにはない色を使ったデザインフォーマットにしています。

―― でき上がった作品を見ての感想はいかがですか?
えいひ もともとのイラストはあまり動きがないものだったのですが、有馬さんのデザインによって動きを感じる構図になっていて、よりライトノベルらしいポップさが出ていると思いました。
 
有馬 「本当にこういうライトノベルがありそうだ」という仕上がりになって満足しています。えいひさんのイラストも、最終的にキャラクターのバストアップまでしか使わないと伝えてあったのに腰回りやスカートまで描いてくれて、デザイナーとしてできることの幅が広がりすごく助かりました。
 
えいひ 普段のライトノベルのお仕事では編集さんと打ち合わせをして制作することが多いので、デザイナーさんとここまで綿密に打ち合わせてイラストを描いたのはよい経験になりました。またこんなかたちで作ってみたいです。
 
 
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©Bonten/Wacom

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