2015年03月25日(水)

Drawing with Wacom
CREATORS INTERVIEW 048
アーティスト:YKBX

取材日:2015年2月26日
取材場所:ワコム西新宿オフィス
インタビュー・構成:高瀬司

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イラストレーター、マンガ家、アニメーター、デジタルアーティスト、3Dモデラー、グラフィックデザイナー。様々なフィールドで活躍するクリエイターたちにとって、デジタルで創作を行う際に欠くことのできないアイテム「ペンタブレット」。デジタル作画の広がりとともに、ワコムのペンタブレットは世界中の数多くのクリエイターたちに選ばれてきました。
ワコムと梵天の共同企画であるDrawing with Wacom(DwW)では、ワコムのペンタブレットを手にした人気クリエイターたちの、ペンタブレットとの出会いから現在までを連続インタビューという形で紹介していきます。
インタビューの後には、ワコムの液晶ペンタブレットを使いサイン入りイラストを描いてもらう様子を動画で収録。メイキング動画はYouTubeワコムチャンネルで公開しています。

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ディレクター/アートディレクター/アーティスト

YKBX

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各種映像作品のディレクションや制作に加え、イラストレーションやグラフィックデザインなど活動は多岐にわたる。トータルアートディレクションを目指した作品を数々リリースし、国内外の映画祭やイベントでも高く評価されている。初音ミク・ボーカロイドオペラ『THE END』では、全てのビジュアルディレクション・ 演出・映像ディレクターを務める。2014年にはソチオリンピック公式放送オープニングを演出。また、現国立競技場クローズイベント映像演出や世界初OculusLiftを駆使したVRMusicVideoをリリースするなどさらに活躍の幅を広げている。

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dww048_YKBX_pic01―― YKBXさんが創作をはじめたのはいつごろからですか?
小さいころから何かを作ることが好きで、たとえば小学生のころは遊びでマンガを描いていたことがありました。最初の内はノートに描いたものが、いつの間にかクラスの中で回っていてちょっとした話題になっていたのですが、そこから面白がって楽しみにしてくれる人が増えていって、クラスや学年の違う人まで読んでくれるようになりました。読者が広がるにつれ、もっと変わった方法を試してみたいと思うようになり、理科の実験室の机や音楽室の後ろの黒板などノート以外の場所にゲリラ的に続編を描いて、見つけた人が読んで話題にできるような、子どもながらのギミックを考えたりしていました。

―― 影響を受けた作家や作品を教えてください。
父親が通信会社に勤めていたのもあり、小さいころから実家のインターネット環境が整っていたので、自然とWebサイトを見て回っていました。そこでリンクを辿っておもしろそうな絵や映像の情報を見ているうちに、海外のマンガや映画やアートなどに興味を持つようになりました。中でも、メビウスやエンキ・ビラル・ニコラ・ド・クレシーのようなバンド・デシネの作家やカルチャーと、スタンリー・キューブリックなどのストイックで美しい映像やデビッド・フィンチャーなどに代表されるVFXを駆使した映画などを、当時は刺激的に感じよく自分なりに研究していました。他にもファッションの歴史やアート作品・フォトグラファーの作品など分野に関係なく見ていた記憶があります。ただ、基本的には作家名にはこだわらず作品に触れることが多いので、偶然見て気に入ったものからも様々な影響を受けていると思います。
 
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―― 映像制作に興味を持つようになったきっかけはなんですか?
高校生のころは美大でアートやグラフィックデザインの勉強をしたいと思っていました。しかし受験に向けて勉強をしているうちに、僕は絵を描くときに物が動いている状態でイメージしていることがわかってきました。描かれた場面だけでなく、前後の時間まで感じられるような絵にしたいという気持ちが強いのだと思います。そうしたことをきっかけに関心がより映像の方にシフトし、大学では映像学科を選択しました。

―― 大学時代はどんな活動をしていましたか?
実写映画の美術を手伝ったり、アニメーションを制作したりしていました。卒業制作ではアニメーション作品を監督し、スタッフ集めから、脚本や絵コンテ、作画、編集まで制作工程の全般に関わりました。アニメーションを選んだのは、最も自由に幅広い表現方法を詰め込めるジャンルだと思ったからです。実写の場合は、空撮や爆発など制作費の関係で実現できない表現が多いですが、アニメーションの場合はどんな視覚効果も努力次第で表現可能な点に魅力を感じました。完成した作品は周囲の勧めで国内外のコンペティションに出展したのですが、それをテレビなどで取り上げていただく機会があり、プロとしての活動をはじめるきっかけとなりました。

―― 音楽ユニット「amazarashi」のミュージックビデオを紹介してください。
dww048_YKBX_pic03アーティスト本人は表に姿を出さないグループなのですが、しっかりと人格を持った存在に感じてもらえるようにしたいと思っています。そのためミュージックビデオ同士で内容をリンクさせたり、映像とCDジャケットを関連付けたりすることで、「amazarashi」独自の世界観を伝えられるように気をつけています。結果的にいい反応をたくさんいただけ、3Dアニメーションで制作した2作目『夏を待っていました』のミュージックビデオは、2010年の第14回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門で優秀賞をいただくことができました。今回制作した作品も、「amazarashi」のミュージックビデオに登場するキャラクターのイラストです。

―― その他のお仕事はいかがですか。
初音ミクを使ったオペラ『THE END』はとてもやりがいがある作品でした。舞台の上に設置した六面スクリーンに3DCGを投影し、さらに生のオーケストラの演奏をかけ合わせるという大作です。音楽家の渋谷慶一郎さんが音楽を担当され、舞台上で展開される映像のディレクションを僕が担当しています。プロトタイプの制作中はYCAM(山口情報芸術センター)で、VOCALOIDクリエイターのピノキオPさん、脚本家の岡田利規さん、建築家の重松象平さん、音響アーティストのevalaさんらとともに何度も合宿を行い、具体的な構成を決めていきました。
 
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―― 『THE END』にまつわるエピソードを教えてください。
合宿ではただ話し合うのではなく、舞台の上に立ち、即興で制作を行いながらイメージを固めていきました。初音ミクの衣装をルイ・ヴィトンにデザインしてもらえたことも印象的でした。はじめは「1着だけでもヴィトンの衣装をミクに着せられないか」と思い依頼したのですが、キービジュアルやキャラクターデザインなどの設定資料集を送ったところ、当時ヴィトンのデザイナーだったマーク・ジェイコブスから8着のデザイン案をいただくことができました。また上演後の反響も大きく、広告業界やファッション業界、アート界など、幅広いジャンルの方々から好意的な反応をいただけうれしかったです。フランスのパリ公演では、シャトレ座というとても歴史ある劇場で上演することができ、リベラシオン紙では急遽6ページぶち抜きで特集を組んでいただき、フランスの国営放送で中継もされました。

―― イラストのお仕事で印象に残っている作品はなんですか?
dww048_YKBX_pic05最近のものでは、2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』の主人公「文」のキャラクター化が、僕にとって異色な仕事でおもしろかったです。僕の出身地である山口県を舞台にした作品なのですが、ドラマ放送を機に行われた県の観光キャンペーンのイメージキャラクターとして依頼を受けました。県知事から直々にお話をいただき、それをきっかけに山口県のふるさと大使もつとめることになりました。

―― YKBXさんの制作環境を教えてください。
動画編集にはAfter EffectsとFinal Cut ProとPremier Proを、3Dの制作作業にはZBrushとMayaを使っています。イラストを描くときは、線のニュアンスが一番しっくりきたSAIで線画を描き、そのあとの細かい加工や合成はPhotoshopで行っています。ペンタブレットは「Intuos Pro」を使っています。

―― はじめて使ったペンタブレットはなんですか?
大学生のときに「FAVO」を購入しました。卒業制作のアニメーションは、アナログで描いた原画をスキャンして、彩色と編集を「FAVO」で行いました。とても使いやすかったため、それ以降は「Intuos」シリーズの新製品が出るたびに買い替えています。とくに、僕は線のタッチを大切にしているので、筆圧感知の性能の高さはとても役立っています。また当時から現在まで、絵を描くときだけでなくPCのすべての操作をマウスでなくペンタブレットで行っています。創作にあたって、アイデアを文字だけでなく絵も交えてメモできるほうが便利なのですが、ペンタブレットならどちらにも素早く対応することができるからです。

dww048_YKBX_pic06―― 液晶ペンタブレットを試したことはありますか?
ワコムさんの企画「Cintiq Creators Mash-Up」で「Cintiq Companion」を使わせていただきました。コンパクトであるにもかかわらずマシンスペックが高く驚きました。MayaやAfter effectsといった3DCGや動画編集のソフトウェアが問題なく動き、簡単なモデリングやレンダリングを行うことができました。絵を描いて動かすところまで含めて、映像制作の工程をすべて「Cintiq Companion」で行うことができそうです。

―― 本日「Cintiq 27QHD touch」を使った感想を教えてください。
紙にペンで描いているときとほとんど変わらない描き心地で驚きました。描くのに集中していると、デジタルでの作業だということを忘れそうになります。本日はイラストを描きましたが、3DCGはもちろん、画面が大きいので細かな作業の多い映像編集の際にもとても便利だと思います。
 
 
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©Bonten/Wacom

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