2013年08月01日(木)

海外大規模マンガ展「ミラノマンガフェスティバル」レポート

福田瑠千代

海外大規模マンガ展「ミラノマンガフェスティバル」レポート

 
 2013年5月3日から7月21日にかけて、イタリアのミラノ市でマンガ展「ミラノマンガフェスティバル」(以下MMF)が開催された。MMFは葛飾北斎の時代から今日のマンガに至るまで、約200年に渡る日本のマンガ史を回顧する大規模イベントだ。

MMFのメインポスター。よく見るとミラノ市の地図を模したデザインとなっている。中心付近にある赤い台形の箇所がMMFの会場。

 
 イタリアでのマンガ系イベントでは「ルッカ・マンガ&ゲームフェステイバル」が、ヨーロッパを見渡すと「ジャパンエキスポ」が有名だが、コミケ的な賑わいを見せるこれらのイベントに対し、MMFでは400人を超えるマンガ家の600を超える作品を集めた大規模な展示を行うなど、マンガの持つ文化的側面を大きく取り上げている点が特徴となっている。
 
 展示の他にも、日本を代表するマンガ家をゲストに招いたトークイベントやサインイベントも催されており、こちらも大変な好評を博している。5月には『デビルマン』などで知られる永井豪氏や、『キャプテン翼』が根強い人気を誇る高橋陽一氏、6月には『テルマエ・ロマエ』でイタリアとも縁の深いヤマザキマリ氏や、ギャグマンガを中心に幅広いジャンルの作品を手がけるとり・みき氏が登場。
 またこの7月には、『新世紀エヴァンゲリオン』(以下『エヴァ』)で著名な貞本義行氏のトークイベントとサイン会が熱烈な歓迎のもと開催された。貞本氏のトークショーは、約18年に及んだマンガ版『エヴァ』の連載終了後初めてとなるもので、まだ日本では聞けない貴重なトーク内容となった。特に貞本氏がイタリアのイベントに参加するのは初めてということもあり、現地ファンの盛り上がりぶりは特筆すべきものがあった。
 本記事ではそんなMMFの展示内容と現地の模様をレポートしていく。
 
 

会場の様子

 
 大きな塀が周囲を取り囲む「Rotonda di Via Besana」。1700年代に建てられたこの歴史的建造物がMMFのメイン会場だ。
 

MMFが開催されている「Rotonda di Via Besana」。塀の中にはMMFの会場と、それに隣接する庭が広がっている。

会場に隣接する庭。普段はサッカーで遊ぶ近所の子どもたちで溢れているという。

会場の入り口には短冊の飾られた笹が。七夕が近いということで、「Tanabata Week」と銘打たれた、入場者に願いごとを書いてもらうイベントが開催されていたのだ。

 
 入り口をくぐると、まず会場の大きな見取り図が出迎えてくれる。会場内に張り巡らされたマンガの複製原画の配置を紹介するとともに、各時代ごとに起きたマンガ関連の重要事項が簡潔に解説されている。
 

会場見取り図。どの位置にどの年代のものが展示されているのかが一目で把握できる。中央に見えるのが、後述する「マンガの塔」だ。

 
 MMFのメインとなるのは6つのテーマ別展示。「葛飾北斎の作品」「戦前の風刺漫画」「手塚治虫をはじめとする近代マンガの祖に当たる作家達の紹介」「多種多様なマンガ雑誌の展示」「細分化されたマンガジャンルの説明」「近年のメディアミックスについて」と、時系列に沿う形で様々な角度から日本のマンガにスポットが当てられている。
 
 最初のメイン展示では葛飾北斎の作品が展示され、木版印刷の利用で、漫画の大衆化が推し進められたことなどが紹介されていた。
 

戦前の風刺漫画の展示。

戦後、手塚治虫など多くの才能を育てた「赤本マンガ」。

マンガ家の作業机が再現されたコーナー。

マンガ雑誌の歴史を紹介するコーナーでは、実際の雑誌が手に取れる状態で陳列。開場時間中は椅子に腰掛けて読みふける来場者も多かった。

マンガのメディアミックス展開を紹介するコーナー。『エヴァ』『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』といった有名メディアミックス作品のグッズなどが並ぶ。

館内の「七夕コーナー」では色とりどりの短冊が置かれており、通りがかる人が自由に願いごとを書けるようになっていた。

 
 また、入り口付近では期間限定で特別展の「SADAMOTO GREAT WORKS」が展開。ここでは複製原画や、マンガ版『エヴァ』の最終回が掲載された『ヤングエース』の他、貞本義行氏の略年表や、マンガ版『エヴァ』の全巻あらすじなど、ファンのみならず貞本作品への入門としても充実した展示となっていた。
 

右手には貞本氏のイラストやマンガ作品の複製原画が、左手には『エヴァ』の特大イラストと共に貞本氏のプロフィールが貼りだされており、その奥には参加作品の詳細な年表が続く。

『エヴァ』最終回が掲載され、品切れ続出で入手が非常に困難となった『ヤングエース』7月号。

ブース中央に配置されたボードには、マンガ版『エヴァ』全巻分のあらすじが。

壁一面に貞本氏の経歴と参加作品のイラストが並ぶ。

 
 貞本展を抜けて会場の中央へと向かうと、大きなマンガの塔が。この塔は場内に入った瞬間から遠目に見えるよう配置されており、中には北斎や貞本展の前にこちらに直行する人も見られた。また、塔の周りでは手塚作品などの古典的名作が電子書籍で読めるようになっていた。

会場中央に鎮座する巨大なマンガの塔。

周囲には電子書籍リーダーが配置されており、手塚治虫や赤塚不二夫の作品といった、マンガの古典的名作を読むことができる。

 
 MMFのもう一つの目玉となっているのが、会場中に展示されている数々のマンガの複製原画である。これらは年代順に並べられつつも、ジャンルを問わず網羅的に展示されているため、イタリアでの知名度が必ずしも高くない作品も少なくなかった。しかしそのことによって、好きな作品の原画を楽しむばかりではなく、知らないマンガとの出会いを生む貴重な場ともなっていた。

メイン展示を囲むように、会場全体に渡って張り巡らされているマンガの複製原画。

 
 これまで見てきたように、MMFでは作品展示の充実が大きな特徴だった。日本のマンガが世界中で愛されるようになって久しいが、市場の拡大については、国内外共に限界が指摘されてきている。そんな中、今回のように、マンガの歴史を体系的に紹介する催しが海外で行われることは貴重な機会のように思える。
 
 楽しむための場を提供するだけでなく、その裏にある歴史や文化的背景も併せて紹介していくことは、長期的に見て、必ずマンガ産業の発展に繋がっていくものだろう。MMFもイタリアのミラノ市が主催したものだが、企画製作にはADKが、総合監修には漫画・風刺画研究家の清水勲氏が深く関わっている。展示内容について、日本側からも協力を惜しまない姿勢には、そんな想いも垣間見えた。
 
 

貞本義行 in 「ミラノマンガフェスティバル」予告

 
 次回は3日連続で行われた貞本氏が登壇するイベントの模様を紹介する予定だ。
 なお、イベントの日程は下記の通り。
 
 ・7月5日:サイン会、ファンミーティング
 ・7月6日:サイン会(2回開催)
 ・7月7日:サイン会、ファンミーティング
 

イベント当日はサイン会の整理券を求め、早朝から多くのファンがつめかけた。

 

ミラノマンガフェスティバル 開催概要

 
主催:イタリア ミラノ市
企画製作:アサツー ディ・ケイ
後援:在ミラノ日本国総領事館
在日本イタリア大使館
伊日財団 ほか
助成:国際交流基金
総合監修:清水勲(漫画・風刺画研究家、日本漫画資料館主宰)
現代マンガ監修:竹内オサム(漫画研究家、同志社大学社会学部メディア学科教授)
協力:秋田書店、アスキー・メディアワークス、潮出版、エンターブレイン、角川書店、講談社、実業之日本社、集英社、小学館、祥伝社、少年画報社、スクウェア・エニックス、竹書房、日本文芸社、白泉社、早川書房、双葉社、マガジンハウス、メディアファクトリー、リイド社 ※五十音順 著作者・著作権者
大阪国際児童文学振興財団、京都国際マンガミュージアム、コミケット準備会、コミティア実行委員会、イーブックイニシアティブジャパン、パピレス、Edizioni STAR COMICS ほか
メイン会場:ロトンダ・ディ・ビア・ベザーナ(ROTONDA DI VIA BESANA)
会期:2013年5月3日(金)~7月21日(日)
前期:5月3日(金)~6月9日(日)
後期:6月13日(木)~7月21日(日)