2014年05月15日(木)

「アニメを読む 制作編 制作進行とは」 レポート
プロデューサー・舛本和也氏×アニメ評論家・藤津亮太氏

通り一辺倒の知識だけでなく、より深くアニメ作品を読み解きたい――。そんなコアなアニメファンの欲求を満たしてくれる講座が、朝日カルチャーセンター新宿教室で開講されている。
『bonet』では連載コラム「四代目アニメの門」でお馴染み、アニメ評論家・藤津亮太氏による講座「アニメを読む」である。
 
三カ月に渡って、毎月一つのアニメ作品を取り上げ、藤津氏ならではの切り口で作品に鋭くメスを入れていく。セリフによって語られるストーリーの分析ではない、映像とそれをコントロールする演出が描くストーリーを読むことへの「アニメ作品の見方」の更新が講座のウリだ。取り上げる作品も『機動戦士ガンダム』などの歴史的名作から、『けいおん!』を代表とした近年のヒット作まで、幅広い年代へと開かれている。
 
さらに不定期開催の「制作編」では、アニメ業界の最前線で活躍するプロをゲストに招聘。制作サイドならではの意見をうかがうことで、知っているようで知らないアニメ制作現場の理解を深める特別講座が行われている。
その最新回が去る2014年4月19日に行われた、『リトルウィッチアカデミア』や『キルラキル』でアニメファンの注目をさらったアニメ制作会社トリガーのプロデューサー・舛本和也氏を招いた「アニメを読む 制作編 制作進行とは」 だ。
 
制作進行といえば、一般の方にはその存在を知られず、アニメファンの間では黒い噂が独り歩き……そんなとらえどころのない制作進行という仕事について、自らも六年以上制作進行を務め上げた舛本氏が詳細に解説した。
参考作品とされたのはトリガーの代表作の一つ『リトルウィッチアカデミア』。複製原画や背景美術の回覧をはじめ、トリガーで実際に使用されている制作進行向けのチェックリスト表など充実した資料が配られた。
 
絵コンテから動画まで、リストに記載された、制作進行が管理する仕事の総数は150以上。ここから先にはさらに、彩色や撮影などの工程が待ち構えている。
「一年目からいきなり全ての工程を完璧にこなせる制作進行はいません」
舛本氏がそう断言するほど多岐に渡る制作進行の全貌が、自身の体験や各セクション毎の詳細な解説の中から、徐々に明かされていく。
 
「作品素材・スケジュール・作業環境とスタッフの管理」が中心になるという制作進行。
だが講座も後半に差しかかったとき、「制作進行の仕事は言語化できない暗黙の部分が大半を占める」と舛本氏は語りはじめる。
 
「たとえば、朝に出社したところ、徹夜で頑張ってくれていた原画マンさんから『おはようございます……』と暗い顔で言われてしまったとき。『カット上がっていますか?』と単刀直入に聞くべきか、『今日は一度帰ってゆっくり休んでください』と体調を気遣う言葉をかけるべきか。その言葉の選択によって、上がってくる絵のクオリティが変わってきます。それを臨機応変に見極めるのが僕らの仕事なんです」
 
人や場合によってベストな解答が異なる。正解がないからマニュアル化できない。
しかしそれでもなお、舛本氏が新人へ向けた講習や、制作進行に関する同人誌の発行など、積極的に「言語化」する活動を続けている理由は何か。
 
「僕はアニメ業界を志す人達に『地図』だけでも渡してあげたいんです」
 
具体的なマニュアルが示せなくても、ゴールがどこにあるのか指し示すことはできるのではないだろうか。現場で鍛えあげるだけではなく、アニメをめぐる地図を配ることで、新人にとって少しでも働きやすい環境が整えられるかもしれない。そんな願いがあるのだという。
 
「ただ、僕にできるのは地図を配るところまで。実際に山を登るのはその人自身です。なので、制作進行にはそのやる気と覚悟がある人に入って来てほしいですね」
 
質疑応答を混じえ、一時間半以上にも渡る講座は舛本氏のこの言葉によって締めくくられた。
 
なお、来たる2014年5月23日には、舛本氏が制作進行について解説した同人誌をもとにした著作『アニメを仕事に!――トリガー流アニメ制作進行読本』(星海社新書)が刊行される。制作進行における「暗黙の実務(目には見えない重要な仕事)」を切り口とした、講座の内容とも関連する一冊となっているため、興味を持たれた方は是非チェックしてみてほしい。
 
また 「アニメを読む」では今後、5月17日(土)に『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』、6月21日(土)に『MIND GAME』を取り扱う。
 
さらに7月からの新シリーズでは、8月に脚本家・じんのひろあき氏が登壇することが決定している。講座ごと個別での申し込みも可能だが、お得な三回セットも用意されている。詳細な内容は、朝日カルチャーセンターの公式HP藤津亮太氏Ttwitterアカウントで確認してほしい。