2014年10月03日(金)

藤津亮太のアニメ時評 四代目 アニメの門 第15回
『アルドノア・ゼロ』『機動戦士Zガンダム』
『ガールズ&パンツァー』

アニメの門

ロボットバトルにおける説得力

 『ガールズ&パンツァー これが本当のアンツィオ戦です!』に大洗女子でもっとも非力な八九式戦車とアンツィオ高校のCV44快速戦車が戦う場面が出てくる。この時、八九式を操る大洗女子バレー部のメンバーは、普通に弾を当ててもすっころぶだけで復活するCV44を行動不能にするため、弱点である後部に飛び出す冷却部カバー部分を狙うように戦法を変化させる。
 
 相手メカの弱点を狙うことで勝利する。
 『ガルパン』のこのシーンを見て思い出したのは、『機動戦士Zガンダム』第25話「コロニーが落ちる日」だ。
 このエピソードで、可変モビルアーマー・ギャプランの全天周モニタは真下方向に死角があるという指摘がいささか唐突に登場する。脱走する敵捕虜からもたらされたこの情報は主人公カミーユに伝えられ、カミーユは第25話の戦闘で勝利する。
 『ガルパン』は合理的な描写に見えるのに対し、『Zガンダム』のエピソードは、かなりご都合主義的に見える。この差にどういう意味があるのか。そこを考えてみたい。
 
 『Zガンダム』の場合、作中でモビルスーツのさまざまな機能に不具合があったり、一長一短があったりする描写はほとんどない。そこに「ギャプランの死角」を唐突に感じさせる理由がある。『ガルパン』では実際の戦車をもとにしているため、不具合や一長一短の情報は豊富にあり、それがシリーズの中で盛り込まれてきているから、弱点の指摘も決して唐突には見えない。
 そもそも架空のメカの不具合や長所短所というものにどこまでリアリティをもたせることができるのか。おそらく時間を割けば、架空のメカの長所短所や不具合についても一定のもっともらしさで描くことができるはずだ。だが、それはもとからメカの設定とドラマが一体なものとして用意されていないと、ドラマの進行とコンフリクトしかねない。特に「弱点」はバトルの勝敗の鍵を握る重要要素だけに、その情報の折り込み方は難しい。
 
 ’70年代のいわゆる“スーパーロボット”のころは、敵ロボットの弱点を見抜いて勝利に持ち込むパターンは普通にあった。これは敵ロボットが、怪獣の延長線上にあり、バトルバリューとでもいうべき得意技が単一に絞られていることが大きい。そこを封じるなり、裏をかけば逆転のチャンスはやってくる。この戦いのルーツをたどれば、おそらく剣豪と他種の武芸者(鎖がまや槍など)との勝負にたどり着くのではないか。
 この敵の弱点を見極める戦い方は他流試合でないと目で見てわかる形にしづらい。歩兵をベースにしている、敵味方ともに均質であることに価値を置いたいわゆる“リアルロボット”では、その均質さがネックになって、弱点を示しづらい。
 こうして考えると「ギャプランの死角」問題は、「リアルロボットものが孕んでいる、弱点の取り扱いの難しさ」と「Zガンダムのロボ戦が、そのデザインや設定された機能ほどに他流試合になっていない」ことが重なり合ったところに生まれているのがわかる。
 またここから、ウルトラマン対怪獣という他流試合のおもしろさを蘇らせた『新世紀エヴァンゲリオン』の新鮮さが改めて浮かび上がる。
 そして他流試合というコンセプトを延長していくとそれは『アルドノア・ゼロ』につながる。
 
 『アルドノア・ゼロ』の火星サイドと地球サイドで行われるロボットバトルは「スーパーロボット対リアルロボット」というふうに説明されている。だがこれまで見てきた通り、火星のロボット(作中ではカタクラフトと呼ばれる)はスーパーロボットというより、むしろスーパーロボットの敵=怪獣に近い。単一のバトルバリューで成立しているからだ。
 『アルドノア・ゼロ』の特徴は、火星カタクラフトの必殺技が弱点へときれいに反転するように組み立てられていることだ。必殺技を避けたり単に封じて反撃するといったものではなく、なぜ敵が強いのかを見抜くことがそのまま弱点の発見になっている。だからピンチがチャンスに鮮やかに転換し、カタルシスが生まれる。
 もちろんそういう単機能の超兵器がどうして成立したのか(火星カタクラフトは弱点を突かれると、なすすべがなくなるものが多い)、それは本当に強いのか(戦場で有効なのか)という疑問も浮かばないでもないが、「ギャプランの死角」問題の回答の一つとしては十分成立している。
 
 本欄では「弱点」の取り扱いを中心に、説得力あるロボットバトルの「勝ち方」を考えたが、バトルで勝つには別の要素もある。
 それはパイロットの技量だ。
 目のよさ、反射神経の鋭さ、操縦技量の高さ……。そういったものは実は既にアニメの中でビジュアライズされている。ただ、これを実現するために求められる表現(手描き、3DCGに限らず)などのレベルはかなり高い。そのためその領域に到達した表現は決して多くない。
 
 以上を踏まえると、「弱点」を自然に織り込むことが可能な設定の開発(他流試合でないパターンが発見されれば表現の幅が広がるのでなおよい)と、パイロットの技量を表現できるだけの技が重なり合ったところに、これからのロボットバトルの表現がありうるのではないか、と考えられる。
 

文:藤津亮太(アニメ評論家/@fujitsuryota

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